【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】

◆知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【サドラーズウェルズ】

 現役時代にアイルランドとイギリスで3つのG1を制覇しました。ヌレイエフの4分の3同血(父が同じで母同士が親子)、フェアリーキングの全兄にあたり、種牡馬としても大成功。英愛チャンピオンサイアーの座に13年連続、計14回就いています。この記録は歴代最高です。後継種牡馬のガリレオも11年連続、計12回その座に就いています。

 力のいる芝に強い中距離型で、速い脚や軽いスピードに欠けるところがあるため、日本で走った産駒は期待ほどの成績を残せませんでした。

 わが国でデビューした約50頭のうち、重賞を勝ったのはサージュウェルズ(ステイヤーズS)のみです。しかしその一方で、この血が母方に入ると大レース向きの底力、成長力を強化する効果があります。シーザリオやバレークイーンをはじめ、この血が入った繁殖牝馬は、子孫から多くのGI馬を誕生させています。

◆血統に関する疑問にズバリ回答!

「アメリカ血統とヨーロッパ血統の特徴はどう違う?」

 その地で育まれる血統は、競馬のスタイルによって異なる発展を遂げます。

 アメリカはダート競馬が主流で、速い時計が計時される傾向があります。小回りコースで行われるため、先に行った馬が有利。先行してバテずに粘った馬が勝つというサバイバル戦です。一方、ヨーロッパは、広い芝コースで行われます。日本と違い、時計がかかる重い芝で、勝ちタイムは遅め。スタート直後はゆっくり進み、徐々にペースを上げていくことが一般的です。

 もちろん、これらはざっくりとした分類であり、例外はいくらでもあります。

 アメリカ血統は、スピードはあるもののダートテイストが強く、ヨーロッパ血統は、芝向きではあるもののスピード面に難があります。海外の一流血統であっても、そのまま日本に持ってきて成功する例は稀で、配合というチューニングにより、うまく日本向きに落とし込むことが生産者の腕の見せどころです。