2022年8月13日、消防隊員1人が死亡した静岡市のビル火災で、静岡市消防局は関係者から火元の情報を聞いていたにもかかわらず、別の部屋を検索していたことがわかりました。その提言をしたのは、2020年、3人の隊員が殉職した工場火災を受けてつくられた安全管理に特化した部隊でした。

8月13日、静岡市葵区呉服町の雑居ビル3階の飲食店から出火し、消火活動に参加していた静岡市消防局駿河消防署の男性隊員(37)が死亡しました。火元は3階にある飲食店の一番奥、倉庫兼休憩室で、たばこの吸い殻が発見されたということです。

<火災現場を見た人>

「従業員の消し忘れかなんかで燃えちゃった。(現場では)『更衣室でタバコの消し忘れがあって』と言っていた」

静岡市消防局によりますと、当時、飲食店の関係者から火元は倉庫兼休憩室と聞き取り、現場部隊に伝えていたと言います。ところが、亡くなった男性隊員の部隊より先に到着し、2度の火元確認を試みた先行の救助隊は、いずれも出火元とは逆の位置=入り口付近にある給湯室やトイレ付近の確認作業をしていたことがわかりました。

結果、火元が確定しないまま、火災発生から1時間が経過。男性隊員の部隊が3度目の進入で火元を特定するも、何らかの理由で男性隊員1人が火災に巻き込まれました。

火元の情報がありながら、別の部屋の確認に時間を費やした消火活動。関係者によると、その活動指針を現場本部に提言したのは、災害機動指揮支援隊でした。

2020年7月、静岡県吉田町で起きた大規模な工場火災では、静岡市消防局の隊員3人が殉職。この火災を教訓につくられたのが現場の安全を俯瞰的に見て、消火活動の助言をする災害機動指揮支援隊でした。

静岡市消防局は、屋内進入の判断の経緯などは事故調査委員会で検証するとコメントしています。