学生は自分の”キャラクターにあった企業”を探せ！「ニコ生×BLOGOS特別編～就活の真実～」 - BLOGOS編集部
※この記事は2012年08月14日にBLOGOSで公開されたものです
7月5日に放送された「ニコ生×BLOGOS特別編」は、 エコノミストの飯田泰之氏を司会に迎え、ゲストとして 雇用問題のスペシャリストである常見陽平氏、海老原嗣生氏が登場。三者がメディアで語られることのない、 「就活の"真実"」を語りつくしました。出演
飯田泰之（エコノミスト）海老原嗣生（「HRmics 」（リクルートエージェント）編集長）
常見陽平（作家）
倫理憲章なんて「あってなきが如し」
飯田泰之（以下、飯田）：本日は、「ニコ生×BLOGOS特別編～就活の真実～」というタイトルでお届けしていきたいと思います。お一人目のゲストは、株式会社ニッチモ代表取締役で、経営誌「HRmics 」編集長、海老原嗣生さんです。
海老原嗣生（以下、海老原）：よろしくお願いします。
飯田：続きまして、株式会社クオリティ・オブ・ライフ、フェロー、雇用問題のスペシャリストである常見陽平さんです。
常見陽平（以下、常見）：よろしくお願いします。
飯田：就職活動については、様々な噂や都市伝説が語られているのですが、今日はこの3人で「本当の就活」というものを考えていきたいと思います。
まず、月並みな話題ですが、そろそろ大卒の新卒就職採用市場も前半戦終わりまして、内定が出ている人がいる一方で、まだ頑張っている学生もいるという状況だと思います。昨年は特殊な事情があったと思うのですが、今年は昨年に比べていかがでしょうか。
常見： 2013年度新卒で最大のトピックスは、倫理憲章の改訂。今まで10月にスタートだったのが、12月になった。ただ、結局大手を中心に選考の正式な開始は４月だったと。今のところデータを見る限り、結果として顕著だったのは、上位校の学生と大手とのマッチングが、どんどんと決まっていったという現実です。就活が始まる前のデータでは、「中堅・中小企業への志望者が増えた」となっていたんですけどね。
飯田：そのように報道されていますし、自身もそう思っていたんですが……
常見：でも実際のデータを見ると12月以降の学生の応募は大手中心になってしまった。倫理憲章を破っている会社も僕はいくつか知っていて、４月以降に内定を出していたりしたのですが。
ＨＲ総合調査研究所のデータでいうと、早慶クラス及び旧帝大クラスの学生というのは、４月末時点で７割内定が出ているという状況。逆に、中堅以下の大学の学生の内定率は低いということになっている。結局、普通の学生と準大手以下の企業が可哀想な状況になっている。
求人そのものに関しては回復傾向。今年は大手とサービス業中心にそれが顕著に出ているなと。大学側も「今年はいいね」と言っているという現場感がありますね。
海老原：固いなぁ。せっかくネットでやるんだから、もっと柔らかい話しようよ（笑）。そもそも倫理憲章なんて「あってなきが如し」なんですよ。就職活動の広告は確かに12月から始まりましたけど、説明会が始まる時期なんて毎年変わらないんですよ。１月末から説明会をやって、グループインタビューもやっているけど、4月1日まで面接はしちゃいけない。それだけのことなんですよ。だから、4月1日までに、グループインタビューをやって、OBと話して、さらに説明会もやって、SPIを受けて、かなり絞った状態にして、４月１日になったら面接をさあやりましょうと。
常見：非常に空気を読みつつ破ってたなってところで。2013年度で変わったことは就活、採用活動でのfacebook利用が本格化してきたのですね。日本生命、大和証券なんかは、かなり前からfacebookページを設置していた。あと、リアルな手段で言うと、水面下でリクルーターなどとどんどん接触していた。結局倫理憲章って、高校野球の選手宣誓と同じなんですよ。「宣誓！」とかいっても、第１試合でデッドボールとかあったりする。高校球児でも、タバコ吸ったりとか、マネージャーと付き合ったりとか、ひどいヤツもいるじゃないですか。それと一緒です。
飯田：自分の大学の学生を見ていても、４月よりも前に事実上の面接は行われていたりするようですね。OBが学生に、「ちゃんと受ければ、悪いようにはしない」と伝えられている。ようするに、採用する気だよっていう意志を前もって伝えていたりするんですよね。
常見：新宿と八王子を結んでいる私鉄があるんですが（笑）、そこの「OB懇親会」という企画が大炎上したんですね。OBとの懇親会かと思いきや、片方に学生が並んで、もう片方に人事が並んでいるという。「採用には関係ない」といいつつ、ほぼ内容が選考ということで2chとかで荒れに荒れたんですよね（笑）
飯田：大卒の新卒採用の話をするときに、テレビのニュースなどで、「100社受けたのに、内定0」みたいな学生が登場するじゃないですか。現実問題として、100社受けるって不可能ですよね。
常見：まず前提として言いたいのは、海老原さんと私はいままで就活番組に死ぬほど呼ばれましたが、こういう番組って、テンプレートが決まってるんですよ。東京ビックサイトで学生がリクルートスーツを着て、いかにも「日本の就活は気持ち悪いぞ」という空気を醸しだして、「100社受けても落ちました」みたいなコメントをとる。でも「100社受けた」って、プレエントリーなんですね。
例えばマイナビのデータでは、プレエントリーの数を「エントリー数」と表現して3月時点の数字を出しているんだけど、2012年卒が78社だったかな。今年はそれより減って、62社なんですよ。でも、そのうちの約40社が就活が始まってすぐの12月にエントリーしたもので、企業のことをよくわからないままポチポチ押しただけ。実際、本当に会社説明会の累計参加社数って、３月時点で20社くらいなんですよ。エントリーシートを書いたのも5社くらい。むしろ、行動量が少ないんじゃないかという話もある。
海老原：ポジショントーク抜きで、話しておきたいんだけど、説明会に出席できるかどうかを大学のランクでスクリーニングしてるとかいう話があるじゃん？あれ、どういう裏側になっているかをしっかり話すよ。ネット上にスクリーニング機能があったらそれこそ学歴差別になる。だからリクルートとかマイコミはやってない。
じゃあ、どういうやり方をしているのか。例えば仮に説明会の枠が1000人だったとする。その告知、「学生にきてください」というメールに仕掛けがあるんですよ。最初に、東大とか早稲田・慶応の学生に、ガっと送って600くらい出席者が確保できた。じゃあ次はMARCHに送ろうってことでMARCHの学生に送って900人くらいまで確保できた。で、残り100人になったらオープンで応募をかけようといった仕組みでやってるんですよ。
飯田：つまりは、形式的にはオープンというわけですね．オープンになる前の段階に来る人をある程度集めておいて、オープンな部分に関しては本当にオープンだと。
海老原：本当にオープンになった時には、結局最後の１割とかしか残ってないんですよ。だから、iPhone買って、情報公開直後に急いで応募とかしても、間に合わないよね。スクリーニングがあるかないかじゃなくて、企業の大人がこういう話しちゃえばよかったんですよ。
常見：スクリーニングしている企業もあるんですよ。「抽選」と言う名のもと、集めておいて落とす。こんなもんは仕組まれた自由なんですよ。尾崎豊じゃないけど。
飯田：僕と常見さんは１歳差なんですけれども、僕らの頃は、リクルートから電話帳みたいな冊子が何冊も送られてきました．そして，その就活パックの中身は大学ごとに違うんですよね。
常見：当時はリクルートやマイナビから冊子が送られてきたんだけれど、東大・京大・一橋・東工大の学生に送られてくるリクルートブックを見ると、そもそも載ってる企業が違う。
海老原：今は説明会の呼びこみメールが、その形になっているんですよ。今も昔も同じなんですよ。
新卒採用は、本当に「悪」なのか
飯田：新卒一括採用を行う日本のシステムが古くて、これが日本の労働市場をダメにしているという意見を聞きます。これに対しては、海老原さんは「ちょっと違う」という指摘をされることが多いですよね。
海老原：確かに悪い部分もあるけれど、じゃあ欧米型にしたらいいのか、と言ったら、そんなことはないんだ。そこをちゃんと言って欲しいんだよね。欧米だって、非常に優秀な人は新卒で採用されている。ハーバードやスタンフォード卒の人を採用するなら、出口で待ち構えてないと、他の企業に行ってしまってなかなか採用できないから。そういう優秀な層は、出口で待ち構えて、「キャンパスリクルーティング」といって企業が大学まで行って採用してるんですよ。これを、リーダーシッププログラム（LP）枠なんて呼んで。
でも、それ以外のノンエリートの人はほっときっぱなし。どうなるかというと、「あなた達は中途採用と同じ枠で入りなさい」と。正確に言うと、中途とはちょっと違って「エントリーレベル採用」という名前なんですけどね。25，6歳の人までは若手の中途採用と同じ枠で入りなさいという形なんですよ。
社会人経験者と比較されるわけだから、そこそこの実務能力がないと採ってもらえない。で、どうなるかというと、2，3年インターンとかアソシエイトっていう名前でそれこそ非正規も極まる安い給料でこき使われて、必死に仕事を覚えるんですよ。その結果非正規を３年やってようやく採用されるかというと大企業はなかなか採ってはくれない。つまり、むこうは卒業する時にどこも就職先がなくて、ズタボロになるまで仕事するような形でどこかに弟子入りしなさいという社会。それよりは、まだ日本のほうがマシでしょうと。
飯田：新卒採用の問題点を語るには、若年の失業率を見るのが一番いいと思ってるんです。日本の20代の失業率ってだいたい8%くらい。韓国も同程度。他の年代に比べると高いという印象ですけれども、欧米だと基本20～30%が当たり前の世界。一括採用をやっている日韓では若年失業率が低めに抑えられている。その意味で言うと、一括採用って、それによって非常に苦しんでいる面があるにせよ、実はいいところもあるんじゃないかと思うんですよ。
常見：「新卒一括採用が悪い」というのと、「就活が苦しい・大変だ・茶番だ」というのが一体になっていると思うんですよね。新卒一括採用や就活が便利な悪者になっている。それを原因にして、大学の悪いところは隠蔽されていた。「就活のせいで勉強しない」とかね。慶応、早稲田の学生100人ずつにインタビューしたところ、就活が後ろ倒しになっても勉強しないというのが１つの答えだったんですよ。これは気をつけて論じないと、「俺は勉強しているぞ！」、「文系と理系では違う」とかあるんだろうけど。
飯田：そこで不思議なのが、「就活があるから勉強しない」っていう話です。じゃあバブル全盛期の学生はそんなに勉強していたのかって。
常見：「昔は良かった論」の嘘に気づけという話。まず東大の入試問題、1970年代と2000年前半で全然難しくなってます。今の方が難しい。日経新聞の「私の履歴書」という超プロパガンダコラムがあるのですが、ノーベル賞とった学者だって「学生時代は遊んでた」みたいな話しか書いてない。
そもそも論で言うと、勉強させる仕組みになってないということが問題。僕、実は今大学院生なんですよ。授業に出てると、後ろの方の学生は寝てて、前の方だけ雰囲気が違う。私みたいな社会人風の人、院生などのちょい高齢者と、留学生が集まっている。日本の学生って結局単位がほしいのであってＡがほしいんじゃありませんってこと。
ちょっと話摩り替わっちゃいますけど、就活のせいにして大学の悪いところを棚上げする。大学なんて結局、教授どもが自分の教科書を売る装置じゃないですか。
飯田：確かに俺も当然のように自分の新刊を参考文献にあげるんですけれども（笑）。実際、大学の先生の方にも情けないところがある。例えば今ニコ生をやってて、それで視聴者が少ない時に、「こんな役に立つ番組をやっているのにけしからん」とは言わないですよ。普通はしゃべってる方が反省する。でも大学はそれが許される。非常に不思議な世界です。
常見：新卒の話に戻ると、僕も海老原さんと同意見で、新卒一括採用がなくなったとしても、採用される人は、もともとのエリートか、よっぽど頑張った人という構造は変わらないと思うんですよね。卒業した後、第２新卒と競合するとか。
あと、僕は既卒者の就職支援を大学や官庁、自治体から頼まれてやったことがあるんです。就職できなくて、既卒で就活を続けている人向けのセミナーなんです。でも、会場はガラガラなんですよ。200人くると言われていた会場に30人ぐらいしか来ない。もう就活やめてるんですよ。この話をすると「新卒一括採用が悪い」って話と、「彼らの意欲が低いからだ」という感情論になりがちなんですけど。会場に来た30人の中で、就活を続けている人って10人程度。それが現実。みんな意欲もお金もなくなって続けられなくなっている。
飯田：議論が二極化してしまってますね。意欲のない学生の話をしたかと思ったら、急に「これからはグローバル人材が必要です」とかいう話が出てくる。グローバル人材ってなんすか。
常見：僕、韓国人も中国人も友達いるんだけど、グローバル人ってちょっと会ったことないんですよ。グローバル人材ってなんなんですか。
海老原：あのね、錦糸町の夜19時くらいに行くとたくさんいますよ。よく行くんだけど…って嘘だよ（笑）。
考えて欲しいんだけど、「日本は世界にひらかれて、外国人が入ってきて、全員がグローバル化していかないと生きていけないんだよ」とか訳の分かんない経済学者が言うんですよ。
でも考えて欲しいよ、そこにある銀行とか、信用金庫とか、あれはグローバル化されるんですかと。国内に残っているのは日本人がやっている仕事なんですよ。トヨタとかに入っても、グローバルな仕事をやっている人の割合は非常に少ないんですよ。どこの会社に入ってもそんなに必要ない。逆に欧米もそう。95％くらいの人はグローバルなんて関係ない生活してる。昼間から太鼓腹抱えて、コーラやビール飲んでね。残りの数％がグローバル人材。
例えば、「日本の１％のトップエリートのレベルが低すぎるから鍛えなきゃダメだ」と言っているのなら理解できる。「その１％を２％にしなければいけない」というのもわかる。でも全員がそうなる必要はないんじゃないってこと。
常見：これからはグローバルだと言っていても、それは昔から言われていることで昔の雑誌にも書いてある。「学問のすゝめ」を読み返しても同じ。結局そういうことなんですよ。ちなみに、暴露すると、グローバル化とか言っていることで有名なある会社の人事部長のTOEICのスコアは290点ですよ（笑）。290点ってどうやったら取れるんですか？
海老原：今でも「中途採用で全然20代後半でも雇うよ」という中堅・中小企業はたくさんあるんですよ。でも、この中堅・中小企業が良い企業かどうかわからないじゃないですか。だから、いわゆるブラック企業をはじくとか、「ブラックだからやばいよ」という警告を出すとか、国はこういうことをやらなきゃいけないはずなんだよ。
常見：ブラック企業を粛清せよっていうことですよね。ブラック企業もそうだけど、大手だってサービス残業してるじゃないですか。今、電子タイムカードシステムというのがサービス残業の温床になっていて、残業時間を申請してもその場で差し戻されたりとかしている。
「残業やめろ」と言っても家帰って仕事したりとか、残業やめて「ワーク・ライフ・バランスだ」とか言ったところで、それこそ帰った後、会社の仲間と宴会するんですよ。「どんだけ社畜なんだよ」って話じゃないですか。
ブラック企業でもすぐに「なくせ」とは言えないから、３年から４年かけて段階的にやって、５年後に残業時間を全部透明化するぞ、とかやるべきですよね。
飯田：コメントの中にもあったんですけど、例えばある程度サビ残があったとしても、待遇がいいとか、やりがいがあるとか、働きがいがあるとか、それならいいかもしれない。だったら、会社に義務付けるべきは、３年以内の離職率を厳密に公開しろってことじゃないでしょうか。
海老原：企業は、労働局に人員名簿というものを出しているんですよ。こんな公的データを使えば、人の出入りが激しいかどうかもわかるんですよね。人件費がどれくらいかというのも法人企業統計や税務データを見ればわかる。こんな感じで公的データで、かなりの部分を示せる。労働監督基準局への駆け込み件数だって、サービス残業の件数だって結局は全部出る。だから企業精査は国がやればいいと思うんですよ。本気で中堅・中小企業を、ちゃんとした綺麗な企業だけにしたいのならば、国がやればいいんですよ。
常見：ハローワークやリクナビの求人もブラック度を５段階評価で出すとかね。中堅・中小企業にいけというのは、総論は賛成なんだけど、若干気をつけないといけない乱暴な議論になってしまう。
飯田：中堅・中小企業でも、ものすごく働きにくいところもありますから。
常見：いつも就活生が議論しているのが、「大企業はこれから潰れる時代だ」と。「うるせえ、JALも東電も潰れねえんだよ」って思うけどね。
飯田：最近エコノミストが、「企業の寿命が何年」とか言う話をよくするじゃないですか。でもこれは典型的な平均の罠でしょう。少し細かく企業のエイジングを見ると、１年以内とか、せいぜい３年以内に潰れる会社が大量にあるので、平均値を下に引っ張っている。30年続いた企業が今後20年以内に潰れる可能性は極めて低いですよ。
海老原：潰れている会社の99%が雇用人数０なんですよね。ペーパーカンパニーとか、幽霊会社とか。
常見：ただね、「ベンチャーはスピード感があるからベンチャーにいけ」というのも嘘だと僕は言いたい。ベンチャーって気をつけないと、非常に古い会社になるんですよ。ベンチャーのジレンマって下手に上場とかしちゃうと、その後に入ってくる奴は安定志向になる。結局、26歳で上場したぞと言いつつ、その１０年後の26歳と同じ仕事しているかといえば、そうとは限らない。
飯田：なりそこねた人がそれっぽくなるというか。ある意味、ベンチャーで上場した人が上場企業より上場企業的というのは、ありがちかもしれないですね。
海老原：それに「社畜」と言われているところはベンチャーが多い。
常見：そういうやつらのfacebookって超気持ち悪くて、「今日も残業で仕事頑張っちゃったぞ」とか、「表彰されちゃったぞ」とか。しかも、週末は全員でＢＢＱとかするじゃないですか。どんだけリア充なんだよ。いや、実際は社畜ですけど。
飯田：すごいなと思うのは、ブラック企業で体壊すまで働く人の中には，目をキラキラ輝かせている人がいる。周りがドクターストップまでかけても、「やりがいがあるんです」って言って。悪い宗教にハマってるのと同じです。
常見：憧れ搾取というか。ネットで話題になったAppleの入社１年目に配られる冊子も気持ち悪かったですよ。アップルへようこそ、ここにはエキサイティングな仕事がある、みたいな。
リクルートが全ての元凶なんですよ。リクルートを中途半端に真似して、やれ「キックオフだ、表彰だ」とか言ってベンチャーが真似しているんですよ。だから世の中はリクルートが全て悪いのかもしれない。
海老原：人材ビジネスでもさ、リクルートを真似してでてきたところで、「ベンチャーのカリスマ性ある社長だ」って言われている某企業なんだけど、そこは新人の飛び込み営業ノルマ100件で、嘘つくといけないと言って飛び込んだビルの写メを一軒一軒送ることになっている。
常見：僕も最近までベンチャーに勤めてたんですけど、僕の小さい事務所に、昔のリクルートを真似した飛び込み営業をやってくるんですよ。「名刺を獲得させてください」と言われて、何に使うんですかって言ったら、「人事にそう言われているんです」って。
飯田：そういう軍隊みたいなめちゃくちゃなことをやらせて、それでもついてこれるか見ている。ベンチャーとかブラックとかには、３日でやめていく社員とかいますからね。それでついてくる子だけを相手にしたい。だから、ベンチャーは大量採用をする。
常見：解雇規制が厳しいといいつつ、事実上雇いやすく切りやすいみたいなことですよね。
飯田：城繁之さんの名言だと思っているのは、「退職勧奨は日本社会のコンプライアンス」っていう。要するに、解雇規制がきついと言いながら、いじめぬいてやめさせるとか、達成できないノルマを課してやめさせるっていうのがある。
常見：スパルタ退職勧奨と、優しい退職勧奨っていうのがあるんですよ。優しいのは「飯田くん、やっぱり君は営業よりも活躍できるステージがあるよ、大学院とかね」とか言ってやめていただく。
面接で語れる”特別な体験”なんて必要ない
飯田：これから就活生は何を求められていくのでしょう。雑誌やメディアでは、「これからは新しい自分の売りを」とか、「人に誇れる能力を」とか、「人がしていない経験を」とか言われている。でも俺、大学時代に他の人が体験していないようなことは何もしていないですよ。普通にバイトして、サークル行ったり、旅行したり、合コンしたり。普通の人生でした。特別な体験を語らなきゃいけないプレッシャーって結構多いと思うんですよ。
常見：僕はよくないなと思ってて、人事は「何をやったか、よりもどうやったか」を見ているんですよ。今は結構、誤解されている部分だと思う。凄い体験が必要だといって、被災地に行って、ボランティアしている様子をガッツポーズして写真をとったりとか。不純な動機から始まる善意とかもあるとは思うんだけどね。
あともう一つが、ベーシックな力というのがとても大事で、自分の意見を考えるとか。
飯田：ちなみに、「今学生しか楽しめないじゃないか」というコメントがあったんですけど、実は来月またこのメンバーで、アラサー向けのやつをやりますので、それの導入編だと思ってアラサーの人も見てください。
海老原：でもね、命題のおき方が、ちょっとずれたかなと思うんですよ。なぜならね、何度も言うんだけど、人気企業に入れる人って、すべての大学生の3%くらいなんですよ。つまり誰かが「こういうやり方がいいですよ」といって、誰かが頑張ったら、ほかの誰かが落ちるだけで、97%はどっちにしても入れないんですよ。だからそこの話にフォーカスしても入れない人は出てきてしまう。
飯田：もともと、いわゆる人気企業というか大手で、一部上場の企業の求人って、そんなに増えてもないし、減ってもない。
海老原：いや、逆に言えば増えてます、歴史的経過を見れば。人気企業ではなくて、従業員1000人以上の大企業という概念でしか出せませんけど、1970年代って大卒で大企業に入れる人は５万人もいなかったんですよ。今は13万人ほど。
バブルの頃にピークがありましたけど、あの５年間で平均11万人くらいだったので、今のほうが大きいんですよね。まあ学生の数は増えていますよ。でも人口全体を見ると、４割くらい減っている。でもバブルの頃より２，３万人増えているということは、今は大企業に入りやすい環境なんです。とはいえ、大企業というのは雇用吸収力が小さいから、それだって本当に少ししか入れていない。
常見：実際に大企業に行っている人って、有名大学出身が割合としては多くなるわけで。そういう人ってリクナビは使わないし、合同説明会にも行かないし、黙っていてもリクルーターが飛んでくる人たちで、ものすごく早く決まる。で、それが自分にもできると思って、踊らされている中堅以下の大学の方々が可哀想。そうなると長期化していくしね。
飯田：ここで、質問を受けましょう。20代男性から「東大・早慶・MARCHですらない僕は、中堅・中小企業を目指したほうが得ですか」という質問なんですけれども。「お前だったら大手と中堅どっちにいきたいの」と言われたらもちろん大手ですよ。
ただ就活に使える時間は有限なんですよね。長引いてしまっている学生の特徴として、「大手を受け疲れして、中堅を受ける機会を逸している子」が多いんじゃないかなと思う。あとは大手を受けすぎてバサバサ切られちゃって、ちょっと疲れて休んじゃった時が、中堅・中小企業の求人のピークだったりする。僕自身が教えているのも中堅大学なのですが、彼らがとるべき戦略ってなんでしょう。
海老原：本当の就活は8月以降なんですよ。一般的な学生たちは、ほとんどが中堅・中小企業に行く。確かにまだ、５月とかは冠系大手とか一部上場とかが残ってる。そういったところは人気企業よりは受かりやすいんだけど、それだってやっぱり落ちてしまう。そのあとに中堅を受けることになるんですけど、おっしゃるとおり不合格の連発で疲れてしまうから辛いんですよ。
そこからが本気でやるべきで、受かる可能性は高いにも関わらず、です。「中堅・中小企業を受けろ」というと、地元の信用金庫とか地元の銀行とか中堅・中小企業とはいえ、エクセレントな企業を考える人が多い。そんな所行ったってやっぱり難易度は高いですよ。大手のカーボンコピーだから。確かに大手とか、そういう地方のミニ大手は、コンプラ的にパワハラ・セクハラはない可能性は高いですけど、競争は激しいし、残業だってけっこう多い。逆に、名も知れない中堅・中小企業だと、18時に帰っている企業はどれだけ多いか。田舎なんて行ったらほとんど帰っていますよ。のんびりやってる企業も多いし。そういうとこ狙えばいいのに、大手というだけでブラックを受けてしまう。そんな、名ばかり大手なんか受けず、スペックの緩い中小を10社20社受ければいいんですよ。少なくとも書類アウトなんて少ないし、がんばれば何社か受かるから。無理して都心の大手に入ったって、残業があって、家賃もメシ代も高いようなところよりいいかもしれないですから。
飯田：そういう意味でいうと就活って、「途中でやめたり休んだもん負け」なところあると思うんですよね。
常見：僕よく言うんですけど、６月とか７月とかの段階で決まらなかったら、「リクルートスーツをクリーニングに出すくらいの期間休め」というんですよ。その時期に決まってない子って、スーツがよれよれになってて、会った瞬間自信無さそうだなって感じるんですよね。一回１週間くらいのブランクを作れば、何が良くて何がダメだったのかとか、今置かれている環境とか整理する時間ができる。８月以降も中堅・中小は大学に求人出し続けるし、大企業でも、「ちょっと足りないからここの大学を追加」とかあるんですよ。
長期化してしまう理由は、申し訳ないけど、ちゃんとやっていないからというのもある。なんとなくみんなに流されてビックサイト行くんだけど、実際疲れて帰ってくるだけで応募しないとか、スケジュールの関係で一番いきたい企業のエントリーシートを徹夜で書いてるとかね。
あとやっぱり適切な振り返りができていないのかなと。ある会社の人事が言っていたんですけど、「早くみんな総合商社落ちてくれないかな」って。総合商社を落ちたことで、目が覚めて専門商社とか、中堅の優良企業を探すようになったり、自分にあったところを探すようになる。あとよく言うのが、就活は１人でやるなということ。チームでやった方がいい。情報交換しあうのと、たまに褒めてもらう。友達に褒めてもらったりとか、叱ってもらうことが大事。
儲かっている中堅・中小企業はたくさんある
飯田：今度は愛知県の20代の男性から。「一度正社員になれないとずっと不安定ですか」つまり、新卒時点で正社員になれないとそのあとはずっとフリーター・非正規ですか、という意味の質問だと思うんですけど。
海老原：これはね、都市伝説なんですよ。良い企業に巡り合わないと正社員になりたくないっていうのもあると思うでしょ。「就業構造基本調査」という調査があるんですけど、これで見ると、大卒男性の20代前半の非正規率が18％くらいあるんですよ。それが20代後半になると13％くらいまで減るんですよ。で、30代前半になると8%、後半が5％なんですよ。
30代前半の彼らは卒業時点では、元祖就職氷河期、ロスジェネだったんですよ。その世代の人達も非正規は8％まで減っているんですよ。どういうことかというと、最初は非正規だったけど途中から正規採用になっているということなんですよね。8％の中には正社員だったのにドロップアウトした人もいるわけですから、その分を合わせれば、途中から正社員になっている人はもっと多いんですよね。
飯田：そうですね。ここ20年間非常に景気が悪いと。でもその中でも正社員労働に戻ってきているんだと。戻るというか、なんらかの形で30代で正社員になっていますよということだと思います。
海老原：正社員になれなかった人たちは、「俺が悪いんだ」とか「ダメなんだ」とか思う必要はないんですよ。本当は良い企業はたくさんあるんですよ。僕は京都にあるＥランク大学で教えています。そこを卒業していく人たちがどういうところに就職していくかというと、「俺は給料は諦めた、それから見栄も諦めた」といって、京都の和菓子屋さんであんこをこねる仕事とかをやっているんですよ。そうすると年収は300万円いかないくらいなんだけど、ワーク・ライフ・バランスは完璧。
彼らは何かを捨てたけど、何かはとるという選択をした。ストレスも全くない。鬱になる人も１人もいないし。いつも女の子と話しながらあんここねている仕事は楽だし。「俺、楽がいい」と言ったらそういう仕事はあるんですよ。何かを捨てて、それ以外の嗜好がぴったりな会社を選べばいいんだけど。
常見：「携帯を選ぶみたいに会社を選ぶな」と言いたいんですよね。携帯なら、性能がいい、ディスプレイがいい、おサイフ携帯がいいとか、いろいろ言うんだけど、要はバランスですよね。地方にはスローな準大手企業がありますよね。
飯田：何を求めるかと言ったら、収入と暇な時間と名前の見栄といった要素があるでしょう。でも、全部を満たすものってたぶんそんな職業自体がないんですよね。
海老原：どうしても中国語を活かしたいとか言うのであれば、中堅・中小企業で販路伸ばしたいけど、中国語が分かる人なんて１人もいないという企業はたくさんあるんですよ。大企業入ったらまず中国語なんて使えないですから。
常見：海老原さんの『エンゼルバンク』のメッセージでもあると思うんだけど、商取引なんですよね。どうやったら自分が高く売れるか。
飯田：僕のゼミのOBなんですけど、2000年代前半の一番つらい時に、30人くらいしかいない建築会社に営業として入ったんですよ。その会社は、初めて名前がそこそこ知られている大学卒の採用だったらしくて、非常に大切にされた。数年後にもう少し大きな会社に転職したそうですが。
海老原：考えて欲しいんだけど、人気企業ランキング入っているようなところに入って、東京都内に一戸建ての家をもてる人って、そんなにいないはずですよ。
常見：みんな自分が人生の主役だと思っていて、それは自己啓発メッセージとしては正しいんですけど。就活の悪の側面で言うと、内定が出たらだんだん自分がヒーローだと思ってくるんですよ。だって、面接って裁判みたいに思われるけど、途中から口説きモードになっていくし、内定者はちやほやされるし。大学でも内定者はちやほやされるし。でも、我々はガンダムで言えば、ガンダムじゃなくてジムなんですよ。
海老原：中堅・中小企業が不安定だって話も、都市伝説だということを話しておきたいんですよ。さっき倒産率の話出てましたけど、営業利益率で言えば、たしかに利益が出ていない会社は大企業に比べると多いですよ。ただ、営業利益率が10％以上の会社はて、中堅・中小企業が13%、これに対して大企業は6%で中小企業が倍なんですよ。それから、営業利益率20％以上の会社、4%なんですよ、中堅・中小企業は。大企業は1.3％だから３倍ということになる。だから、儲かってない企業は多いですけど、儲かっている中堅・中小企業も多い。規模を大きくしたら税務査察とかいろいろとめんどくさいから中小のままでいる。その分給与で社員に還元しているという会社はけっこう多いんですよ。
飯田：青汁のキューサイさんなんかですね。一時期話題になっていましたけど、大きくしたくない、今の従業員プラスアルファがしっかりとした所得を獲得できるというのが非常に大きな目標であると。その一方で、どんどん全国展開して、社員を増やして、っていうのは目標にしていない。
常見：例えば、関西に豚まんの蓬莱という会社があるんですけど、あの会社も無意味な拡大はしないと決めていて、終身雇用なんですよね。地域密着型で利益率の高い会社ってあるはずなんですよね。
海老原：そういう企業が採用していないかと言ったらしているんですよ。定年や育児とかで自然退職していくんだから。その分を欠員補充しているんです。問題はそういう企業を紹介してくれるところがないこと。僕らもそう。リクルートもちゃんと教えていないから良くない。
キャリアセンターの人とかは、「いい子になりなさい」「大企業に入れるようになりなさい」という。でも、暇な方がいいならそれでいいですよ、その分給与を諦めなさいとは言わない。中国語使いたいなら中国語を使えるところがありますよ、ただし規模は小さいですよ、とも言わない。ネットオタクなら、eコマースとかやってないから販路が伸びない中堅・中小企業なんてたくさんあるんだから入ればいいんですよ。大企業で下積みやるより楽しいと思います。
常見：頑張っているところは頑張っているんだけど、適切な紹介ができているかと言われたらできていなくて、結局一般的な就活テクニックを教えるとか、そうなってしまっていることは間違いない。この前、弘前大学に行った時に面白かったのが、文系の女子学生が十勝の農家に就職したんですよ。で、「君何やるの」って聞いたら、広報担当というか宣伝担当。「eコマースで楽天市場とかを使って、乳製品を全国に売るんですよ」って言っていた。
飯田：農水官僚みたいな言い方になってしまいますけど、今どんどん伸びているのは農業の六次産業化なのは確か。やはり、直販が儲かるんですよ。儲かっている生産者組合とかは直販やツーリズムを上手に活用している。それを考えると別の方法がある。でも、大学の悪いところというのは、学校なので学校っぽいんですよね。
常見：そうですね。中途半端ないい加減な授業をやっているのに、聖域な感じがするわけじゃないですか。あとね、就職実績を詐称している大学とかあるじゃないですか。ほとんどフリーターとか。この前Ｆランク大学で面白いなと思ったのが、フリーターになるくらいなら契約社員になる方がいいってことで、契約社員の求人を一生懸命リストアップして学生に提示していた。
あと、もう一つが、こういったらあれですけど、派遣社員やフリーターになるのだったら、いい派遣会社の見分け方とか、フリーターから正社員になりやすい仕事とかがあるんですよね。大学は「非正規雇用になるな」というわけですよ。僕はそれも違うなと。むしろ僕は非正規雇用リテラシーを身につけさせるほうが大事だと思いますね。
海老原：そこで仕事を覚えればいいって言うのは確かですよね。でも僕はどうしてもね、「自分の個性で仕事選べばいいじゃん」と思ってしまうんですよね。そういう会社は、あると思う。400万社、会社はあるんですよ。さっきいったような利益率が高い会社もある。その中にはあなたにピッタリの会社があるはずなんですよ。
常見：あなたにぴったりな会社に行けっていうのは正論だと思う。でも、ぴったりな会社と出会えないことが問題なんじゃないかなと思うんですが。僕今リクナビ登録してて、1,200通来たんですよ、メールが。ほとんど内容がひどくて、要は全部同じような、グローバルに活躍とか、成長できるとか。
海老原：教えてくれって言って教えてくれないところが一番問題。そこは反省しないといけない。２つ目の話としては、新卒はハローワーク行ってください。数万件あるはずだから。そこから50社とか受けたら、大企業みたいに門前払いしないから30から40くらいは面接まで行けますから。その中から、精査して、「企業を落としていく」作業をやってみる。1社受かったから、バンザイと就活を終えてしまうのは、もったいない。
常見：マッチングするために、人を介した仕組みって大事じゃないですか。だから、人材紹介会社に公共事業としてお金を出して、丁寧なマッチングやるべき。ハローワークの対面時間とかマッチングの仕方とかどう思いますか。
海老原：人間の覚えられる求人なんて20社が限界だから、何万もあっても知らないだけなんだよ。結局、「これは」と思ったものを受けてみるしかないじゃん。新卒だけじゃないよ、既卒も求人あるから。中堅・中小企業なら、「一日営業同行させてください」といえばさせてくれるから。「納会に出させてください」といえば出させてくれるから。
常見：肌を合わせるって大事なんですよね。あと、僕が言いたいのは、厚労省は３～５年かけて、ちゃんとブラック企業の浄化をやってほしい。中堅・中小企業にいけというのも分かるんだけど。あと、ハローワークも健全化して欲しい。ちゃんと面談員の質だとかを保って欲しい。
学生はキャリアセンターを有効に使え
飯田：就職課、またはキャリアセンターに良い人がいる可能性も０じゃない。というのも、駒沢大学には結構有名な人が一人いたんです。彼は駒大体育会出身で、OB会や体育会繋がりで、大量の駒大出身者が経営している中堅・中小企業とその雰囲気を肌で知っている。だから、「誰々に電話かけてみるから、行ってみて」とか言える。
歴史が長い大学だと、必ず名物職員さんっているんですよ。どの大学にも有為な人材はいますから、まずは自分の大学のキャリアセンターに行ってみるのがいいかもしれない。あとは、就活期間中に毎日のようにキャリアセンターにいると、そこの人がかわいそうになってきちゃって紹介してくれたりする。こういう人情の部分は否定しようがない。
常見：キャリアセンターの人もマッチングに、相当力を入れているんですよ。求人開拓も相当やっているし、大学4年の秋になっても学内の説明会を開催したりしているんですよ。問題は学生がそこに来てくれないということなので、学生はまずそこに行ってみる。これは是非言いたい。
飯田：続いての質問です。東京都20代男性。「今の面接のシステムはどこに問題があると思いますか。先ほどいいところもあるとおっしゃっていましたが、悪いところもあると思う。今の面接って、何を見ているんでしょうか。」
海老原：面接というのは、うちの会社に合うのかどうかを見ているんですよ。でも今の面接は良くないね。面接って、相手も緊張するし、こっちも緊張するから、人柄が分からないじゃん。社名は言えないけど、僕の知っている会社だと、最終面接やめて、ハイキングにしましたっていう会社があったよ。ハイキングのほうが人柄分かるじゃん。疲れた奴がいたら、おぶってやるとか。荷物持ってやるとか。道が分かんなくなったときに、俺が行くとか言ってリーダーシップとか。それで分かるじゃない。
常見：面接が裁判と化している部分がありますよね。学生も裁判だと思っているし、企業も裁判だと思っているんですよ。それは良くないと思うんだけど。企業の面接の何が問題かというと、とりあえず聞けていない。企業側の面接力がすごく落ちてる。
飯田：面接官も緊張しているし、受ける方も緊張しているから。受ける方もマニュアル通り、面接官もマニュアル通りだったら何も情報がない。そうなると結局は学歴スクリーニングしかないですよね。
海老原：12月くらいにパフっていう会社がやるイベントで、学生と面接官に模擬面接をさせる様子を、20社くらいが見ていて、採用するか決めるというのがある。これの結果は見事に分かれますから。それぐらい見ているポイントは違う。つまり、黄金のパターンで、こう答えれば受かるなんてことは一切ない。
飯田：変な話、学校のテストを受けるみたいに、全部70点取るというのは無理だと思うんですよ。意味ないし。例えば、100社全部で70点とりました、と。でも今年は合格ラインが80点でした、だったらまるで意味が無い70点100社なんですよね。だったら、100点、0点、60点となってもいいんじゃないかと思うんですよ。それがその会社と合うってことだと思うんですよ。
常見：就活を受験勉強とか大学の単位取得とかロールプレイングゲームみたいに思っているところがある。
海老原：最近はコンプガチャ化してんじゃないの（笑）？
飯田：面接とか、ハイキングとか、コミュ力って話になってくると思うんですけど、東京都の20代男性から、「コミュニケーションの能力による評価をどう思いますか。結局非リア充は就活では負け組ですか。」という質問が来ています。
海老原：そんなことない。例えばさ、トヨタなんてけっこう暗い奴ばかり採ってるよ。
常見：この前の、東大院卒のデンソーの人に会ったけど、名刺の渡し方も逆だったしね（笑）。
海老原：企業はね、コミュニケーション能力をそのもの見ているわけじゃないんだよ。コミュニケーションによって、その人がどんな性格なのかを見ているんですよ。その性格によって合うか合わないかで見ている。コミュニケーション能力がない人は、そこまで至らないから、棄権という形で落としているんですよ。
常見：コミュニケーション能力の罠に僕は気づいてほしいんですよ。経団連が「新卒に求める能力」という調査を10年くらいやっているんですけど、コミュニケーション能力がずっと上位にある。あれは統計マジックだと思っていて、なぜならば「25項目ある中から５つ選んでください」となってるから。コミュニケーション能力をナンバーワンにしているかどうかは分からないんですよ。
飯田：さらに言うと、アンケートの罠なんですけど、コミュニケーション能力ってなんでも当てはめることができる。社外コミュニケーションは営業力といえるわけですし。
常見：コミュニケーション能力って、色んな変換の仕方があって、発信力とか、傾聴力とか、会話力とか色いろあるんですけど、学生は「話がうまい奴がコミュニケーション能力がある」と勘違いしている。学生団体の代表の意識高い奴とか。でも、人の話を聞けるかどうかが大事だなと思うんですよ。
飯田：例えば、営業を受ける側にしても常見さんみたいなマシンガントークが大好きな人と、大嫌いという人もいると思うんですよ。話がうまい奴が嫌いという人は結構多いはずでしょう。
常見：数々のトップ営業マンの方にインタビューしたことあるんですけど、彼らの共通のスキルって、プレゼンではなくて、聞く力なんですよね。深く聞く力。日本のドラマの悪いところで、営業マンって、ペコペコしている人か、話うまい人じゃないですか。あれは大嘘なんで。
海老原：何度も言うけど、コミュニケーション能力ではなく、それで「何を伝えるか」ですよ。銀行だったら継続学習能力がある学生を採るんですよ。入って10個くらい資格とらされるんだから。それに地道についていける人じゃなければ無理だよ。コミュニケーションしながら、継続学習能力があるかどうかを見ているんですよ。
メーカーだったら、PDCAサイクルに回せる人がやっぱり強いんですよ。それがあるかないかを伝えて欲しいから、コミュニケーション能力が必要なんです。みんなコミュニケーションの裏にある「うちの会社に合うかどうか」を見ているんですよ。受かる学生のタイプはメーカーと銀行と商社じゃ全然違うから。
常見：学生にぜひ言いたいのは、コミュニケーション能力と自分から言うのはやめろと。自分から「コミュニケーション能力があります」という奴のそれが高かったことはない。日本の学生がダメだなと思うのが、みんな飲食のアルバイトをしている。特に女子。飲食のアルバイトでコミュニケーション能力をあげました、お客さんと目をあわせて話を聞くようにとか言ってるけど、「てめえ早く生中持って来いや」って話ですよ。
ノマドになれる奴は結局有名大卒の有名企業出身者
飯田：20代東京都男性からの質問。「就職前、学生時代にスキルを身につけるべきという考えについてはいかがですか。または、どんなスキルを身につけるべきですか」。資格を並べる子は、その努力を他に向けた方がいいなと思うんですよね。
常見：資格はダメですね。学生が取れる資格で一生食いっぱぐれることがない資格なんてほとんどないじゃないですか。面接の経験で言うならば、資格欄びっしり埋めてくる奴って、だいたいアウトで自信がない。そりゃそうですよね。資格で自信持ちたいと思っているから。あと、秘書検定とかもそうで、僕の知っている社長は秘書検定持っている奴は絶対、秘書として採用しないですよ。秘書検で証明される力と本当に必要とされる力は違うから。
海老原：俺は、資格をたくさんとったからって受かるということは全くないとは思うけど、まだいいのは、一つの方向性を持ってとっている人。簿記の資格を４級からとって、税理士を、というのであれば、この人はこういうことをしたいんだなとわかる。バラバラな人は、全く意味が無い。
飯田：最後に大きな質問かもしれないですけど、神奈川県の20代女性からの質問。「これからも正社員として働くことのほうがメリットはありますか」。同じく、千葉県の20代女性から。「就職ではなくて、ノマドを目指すのはありですか」。いわゆる正社員という生き方のモデルが古いんじゃないか、という疑問を持っているわけですね。両方女性というのが特徴的だとは思うのですが、どうでしょうか。
海老原：なぜそうことを思っているのでしょうね。
飯田：例えば、正社員として勤めていたとしても、出産を機に辞めるわけですし、それだったら…ということでしょうかね。
海老原：女性は本当に難しいですよ。日本の会社は女性の扱い方が下手くそですから。その意味で、その気持ちは分かります。だけど、男性に関しては正社員やったほうがいいと思います。
だってさ、ある種、ホワイトカラーって、職人以上に職人なんですよ。要するに研修とかマニュアルでどうなるものではない。先輩にこき使われて、どつかれて、見よう見まねでやるしかないから。クレーム処理とか、営業の仕方とか、研修で教えられますか？。辛いけど頑張るしかないじゃないですか。その時に、やっぱり正社員じゃないとすぐ辞められるから、踏ん張りが効かないと思うんですよ。
常見：ノマドについて、一言。僕自身がノマドなんですね。日本のどこかでいろんな人と会ってるし、仕事もしている。ノマドって、肯定の仕方、僕も含めて批判の仕方もおかしいと思っているんですよね。
ノマド肯定というところでは、安易な欧米な礼賛があると思う。でも、実はアメリカってサラリーマン社会だし、ノマドとは言いつつ、結局個人事業主じゃんっていうところがある。
あと、「ノマドになったけど年収が変わらないとか、あがった」とかという言説があるんですよね。あれ、僕はもっと正確に論じるべきだと思うんですよ。だって、会社員って自分の給料の３倍稼がないと回らないんですよ。じゃあノマドは３倍以上になったのとか。国民保険も高いし。あと、1,000万円から1,500万円になった人も、260万円から300万円になった人も同じで「ノマドになって年収があがった」とか、ふざけんなと。 あと、Appleを礼賛するのに、安易にサラリーマンや会社を批判する。
飯田：そういう人にとっては、いい会社と良くない会社があるんでしょうね。
常見：で、いい会社って思い込みなんですよ。いい会社って、株主と消費者にとっていい会社であって、従業員にとっていい会社ではない。あと、ノマドで売れている奴は全員、有名大学から大企業。、「てめえ慶応出て集英社入ってるじゃねぇか」みたいな。
飯田：じゃあ最後の最後。「３人にとって、いい会社とはどういう会社ですか」という質問です。常見さんから。一言でいきましょう。
常見：いい会社とは、「愛される会社」ですね。
海老原：自分のキャラクターと合ってる会社だよ。私が新日鉄入ってたらたぶん、潰れてました。私自身、某メーカにー入ってすぐやめてます。リクルートだから、なんとかもちました。だからキャラがあってる会社に入ればいいと思うんだけど。
飯田：肌とか、空気の合う会社ですよね。僕自身は、いわゆる正社員として働いたことがないのですけど、” ぬるい環境”が好きなんですよね。あまり” キリッ”としすぎていると疲れてしまう。会社の人も全部が全部だらけていたら嫌ですけど、ある程度、すきがある組織ってどっか愛せるんですよね。
常見：みんなグローバル人材にならないといけないとか、すごい人にならないといけないとか、将来ノマドにならないといけないとか、言われているんだけど、みんなが過労死礼賛型というか。そこのヒーローにならないといけないという幻想がある。
飯田：就活生の皆さん、まだまだ就職活動続ける人が多いと思いますけど、これから中堅・中小企業などの採用される可能性が高い募集が増える時期です。ぜひ、ここから頑張っていってもらいたいなと思います。本日は、どうもありがとうございました。
一同：ありがとうございました。
