日本のネットサービスが世界で成功するためには--ミクシィ、グリー、サイバーA社長が講演 - BLOGOS編集部
※この記事は2011年10月28日にBLOGOSで公開されたものです
10月27日から28日まで、インターネットマーケティングに関するイベント「ad:tech Tokyo」が開催されている。初日にはミクシィ代表取締役社長の笠原健治氏、サイバーエージェント代表取締役社長CEOの藤田晋氏、グリー代表取締役社長の田中良和氏がそろって登壇するという注目の基調講演があった。これら3社はともに国内で人気のネットサービスを運営し、その勢いをもって海外展開を進めている。サイバーエージェントは2008年、米国にサイバーエージェント・アメリカを設立した。年商は約10億円。グループの売上に占める割合は1％程度だが、専務の西條晋一氏を送り込み、本気の取り組みを続けている。米国では仮想世界サービス「アメーバピグ」をFacebookアプリとして展開している。中国市場では同じくアメーバピグを「開心網」というSNSに提供している。
ミクシィも2008年、中国・上海に子会社「上海明迅網絡科技」（mixi上海）を設立し、現地向けのSNSを運営した。だが想定通りの結果は出なかったそうだ。現在は上海をアジアの開発拠点とし、米国シリコンバレーに投資とアライアンスの加速を目的とした拠点を開いた。ゆくゆくは自社サービスも展開したいと笠原社長は語る。
グリーは2011年に入ってから海外展開を加速させている。米国OpenFeintを子会社化し、ソーシャルゲームプラットフォームを強化したほか、TencentやProject Gothと業務提携を行った。9月には韓国、シンガポール、イギリス、オランダ、ブラジルの5カ国に子会社を設立することを発表した。田中社長は世界で10億人のユーザーを獲得することが目標だと宣言した。
こんな3社のトップが、「日本のネットサービスはどうすれば世界で成功するのか」というテーマについてそれぞれ意見を述べた。
「カスタマイズをする必要がない」という強さ
グリーの田中社長は、ローカライズするよりも、圧倒的なプロダクトを作るべきだと主張した。「シリコンバレーのど田舎にいる人たちが、世界各国に向けたローカライズやチューニングをしながらサービスを運営しているわけがない。TwitterやFacebookは何億人ものユーザーを集めているが、言語以外はカスタマイズはしていない。世界で成功するのはカスタマイズする必要のないサービスではないか」。
ミクシィの笠原社長は次のように語る。「サービスのコアを追及していくしかない。そうすれば日本人にうけたように、米国や中国でも受け入れられる可能性が出てくる。自分たちのやるべきことをやるのが一番の近道だと思う」。日本人がひたすら自分たちのサービスを磨けば、グローバルで通用するはずと述べた。
サイバーエージェントの藤田社長は、FacebookのようなグローバルプラットフォームやAmazonのようなクラウド基盤が整ったことで、海外展開を加速できるようになったことは大きなメリットだと語った。
「スマートフォン向けアプリをマーケットに出すと、ユーザーの2～3割は海外から来るようになった。誰でもあっという間に海外向けサービスを出せる。世界中の人がすぐに使えるようなレベルのサービスを作ることが求められる」（藤田社長）
海外進出の方法については、現地法人を買収したり、パートナーシップを組んだり、自ら拠点を設立したりといろいろあるが、ミクシィ、サイバーエージェント、グリーの3社とも、基本的には自社で拠点を立ち上げ、自社開発のサービスを投入するというスタンスだ。
ミクシィは海外に似たような方向性を目指す企業があれば買収することも検討するという。サイバーエージェントは以前から「大型買収はしない」と藤田社長が明言してきた。自社の技術力を高め、内製でサービスを作りこんだ結果がアメーバの成功である。グリーの田中社長は高品質な製品を出すことで、グローバル化を実現すべきだと語った。カスタマイズをする必要のない、即戦力となるようなサービスを作ることが大事だと繰り返し主張した。
米Yahooを買収する意味はあるか
さらに「米Yahooを買収する気はないか？」という質問が寄せられた。3人の回答は以下のようなものだった。
サイバーエージェント藤田社長：「ウェブサービスは生き物。アメーバに着手したとき、日本でも世界でも、ブログサービスが伸びなくなってきたが、イベントや機能追加を重ねてユーザー数を伸ばしてきた。米Yahooも新機能や改良で会社が変わってくるのならば買収の価値はある。だがサイバーエージェントは大型買収はやらない。グリーがやればいいんじゃないかと思います（笑）」
グリー田中社長：「Yahoo! JAPANと米Yahooはまったくの別物で、米国Yahooは何が競争力なのかわからない状況です。Yahoo! JAPANはYahoo! オークションがあるが、米国ではeBayが強い。検索ではGoogleがいる。ニュース以外の部分では2位、3位のサービスを寄せ集めただけになっている。単なる寄せ集めではいくらあっても意味がない。すべての事業を切り捨てて、どこかにフォーカスすることが重要。でもソーシャル分野ではFacebook、ゲームではZynga、検索ではGoogleにかなわない。いま存在しない事業で勝つしかない。でもそれを考えるのは難しいこと」
ミクシィ笠原社長：「我々は買収するほど資本ないですが、米Yahooをポータルと定義してもポータルとSNSでは方向性が違う。だからそれほど連携する意味はないと思っている。リアルなソーシャルグラフ（人間関係）を持つSNSには可能性があるが、米国にはFacebookがいる」
