顎関節症はどんな病気?顎関節症の診断方法や治療法もご紹介します

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顎が痛い・顎から音がする・口が開けにくいという方は、もしかすると顎の疾患である顎関節症かもしれません。

しかし顎関節症は病気ということがあまり知られておらず、悩みを抱えたまま生活をしているという人も少なくないです。

今回は顎関節症はどんな病気なのかという疑問について、特徴や原因などを詳しくお答えしていきます。顎関節症かどうかの診断方法や治療法も一緒にみていきましょう。

監修歯科医師:
柴原 孝彦(東京歯科大学名誉教授)

1979年東京歯科大学卒業、2004年東京歯科大学主任教授、2012年東京歯科大学市川総合病院口腔がんセンター長、2020年東京歯科大学名誉教授。
著書は「口腔顎顔面外科学(医歯薬出版)」「標準口腔外科学(医学書院)」「カラーアトラス コンサイス口腔外科学(学建書院)」「口腔がん検診 どうするの、どう診るの(クインテッセンス出版)」「衛生士のための看護学大意(医歯薬出版)」「かかりつけ歯科医からはじめる口腔がん検診step1/2/3(医歯薬出版)」「エナメル上皮腫の診療ガイドライン(学術社)」「薬剤・ビスフォスフォネート関連顎骨壊死MRONJ・BRONJ(クインテッセンス出版)」「知っておきたい舌がん(扶桑社)」「口腔がんについて患者さんに説明するときに使える本(医歯薬出版)」など

顎関節症の特徴は?

顎関節症はどのような病気ですか?

顎関節症とは顎の筋肉・関節・骨に何らかの原因で炎症やズレなどが起こり、痛みや音が出る病気です。

病気というと大げさかもしれません。

なぜなら顎関節症は2人に1人が1度は経験する疾患であり、痛みがひどくないからと病院を受診せず治るケースも珍しくないからです。

顎関節症の主な原因は何でしょうか?

顎関節症にはさまざまな原因があります。

噛み合わせの悪さ

姿勢の悪さ

ストレス・疲労などによる筋緊張

顎関節・咬筋への過度な負担

先天性の関節構造

外傷性によるもの

などが挙げられ、どれか1つではなく複数の要因が重なり顎関節症の原因になっていることも稀ではありません。

姿勢の悪さは猫背・頬杖をつくなどだけでなく、下を向いてスマホを長時間見る姿勢もあてはまります。顎関節や咬筋への過度な負担は歯ぎしり・食いしばり・唇を噛む癖などが挙げられます。

先天性の顎関節症は避けられませんが、原因を知れば予防ができる後天的要因で顎関節症になる人は意外と多いです。

顎関節症が原因と考えられる副症状はどのようなものがありますか?

顎関節症の主な症状は3つほどです。

顎に痛みがある

顎開閉時の音が気になる

口が開閉しづらい

などが挙げられます。音や痛みはないが口を大きく開くと顎がガクッとなる場合も軽度の顎関節症かもしれません。

また、顎関節症には顎の痛みなどが原因で併発する副症状が多くあります。

頭痛・腰痛・歯痛

噛み合わせの違和感

歯肉炎・歯周病

肩や首のこり

めまい・目の疲れ

耳鳴り・耳詰まり

鼻詰まり

喉の違和感・嚥下障害

顔面神経麻痺

顎に痛みを感じたうえで上記の症状が現れた場合は、顎関節症の副症状かもしれません。

副症状の有無や度合いは人によって異なるため、気になる症状がある方は専門医を受診しましょう。

顎関節症は女性に多くみられると聞きます。

女性・男性ともに顎関節症は多くみられる疾患で、女性特有の病気というわけではありません。

しかし女性は顎の付け根の関節あたりが男性よりも細長く尖っている場合が多く、付け根の顎骨の幅も細いため負担がかかりやすいです。そのため女性の方が顎に痛みを感じやすく病院を受診することが多いことから、顎関節症は女性に多くみられるといわれています。

また、世代を問わずみられる疾患で、若い人から年配の方までさまざまな人に発症する可能性があります。

顎関節症の診断方法や治療法

顎関節症の診断方法を教えてください。

ご自身が顎関節症かどうか診断できる方法は複数あります。

口を大きく開けたとき顎に痛みがある

口の開閉時に顎から音がする

かたいものを食べると顎が痛い

前歯の中心を上下で揃えて噛み合わせたとき左右どちらかの上の歯と下の歯の間に隙間ができている

口を開いたとき人差し指・中指・薬指を揃えて縦に咥えられない

上記の項目に多くあてはまると顎関節症の可能性があります。病院で行う診断方法ですがセルフチェックとして行えるものばかりのため、まずは自分で確かめてみてください。

複数あてはまる場合は顎関節症の可能性が高いため、早めに病院を受診しましょう。

病院では顎のレントゲン写真やMRIを撮りズレなどの診断も行います。

何科で診察してもらえるのでしょうか?

セルフチェックで顎関節症の疑いがあるとわかれば早めに受診をおすすめしますが、何科へ行けばよいのかわからないという患者さんも多くみられます。顎関節症の症状がみられたら、歯科や口腔外科を受診しましょう。

歯科によっては顎関節症の改善に力を入れているクリニックもあるため、あらかじめホームページで確認するのもおすすめです。

治療はどのように行われますか?

顎関節症によってひどく痛みが出ている場合は、鎮痛剤を使って痛みを取り除きます。

医師の診断により顎の骨や咬筋への過度な負担がみられる場合は、マウスピースを使用した治療を行うことが多いです。

噛み合わせや歯並びが悪く顎関節症を引き起こしている場合は、歯列矯正を行わなければ改善がみられないこともあります。

咬筋や咀嚼筋など顎まわりの筋肉にひどく緊張がみられるときは、筋肉をほぐす治療もあわせて行われます。

診療中だけでなく自宅で行うセルフケアを指導される場合もあるため、医師の指導をもとに正しいセルフケアを行いましょう。

治療中の過ごし方の注意点を教えてください。

顎関節症は治療を行えばすぐに改善されるわけではありません。改善がみられるまでの治療期間は人によって異なりますが、数週間~数か月かかり治療中の過ごし方には注意点があります。

悪い姿勢で過ごさない

顎への過度な負担をなくす

片側ばかりで噛まない

マウスピースを医師の指示通り使用する

自分流のセルフマッサージはしない

これらの注意点を忘れてしまい猫背・頬杖をつくなどの悪い姿勢で過ごすと、顎関節症の治療を行っていても改善があまりみられません。

また、片側ばかりで噛まない・かたいものを食べないなどをして、顎への過度な負担を減らすことも大切です。

歯ぎしりや食いしばりによって顎へ負担がかかっている場合は、とくに過度な負担がかかりやすい就寝前やスポーツ前などにマウスピースの装着を忘れてはいけません。マウスピースは、医師の指示通り決まった時間装着するようにしましょう。

自分流のセルフマッサージは、かえって顎関節症を悪化させるケースもみられます。セルフマッサージを行う場合は、医師の指導のもと正しいマッサージを行いましょう。

顎関節症の予防法は?

顎関節症はどのように予防するのでしょうか?

顎関節症は普段の生活を見直すことで予防ができます。

顎への負担をできるだけ減らす

顎に負担がかかる癖はやめる

悪い姿勢を正す

ストレス・疲労を溜めない

顎の筋肉をほぐす

普段の生活で上記のようなことを意識すると、顎関節症を予防できます

無意識のうちに歯ぎしりや食いしばりがみられる場合は、顎関節症による痛みが出る前にマウスピースを装着するのも予防法の1つです。顎の骨や関節への負担を減らせるため、歯ぎしりなどがみられる場合は歯科医院で相談してみましょう。

ストレスや疲労が溜まると筋緊張がみられるため、リラックスできる時間をしっかりと取ることも大切です。顎の筋肉は定期的にストレッチやマッサージをするとほぐすことができます。

効果的なストレッチ方法を教えてください。

顎の付け根にある咬筋を2~3本の指でくるくるとマッサージするように動かすと、顎の筋肉である咬筋をほぐせます。優しく圧をかけながら指を動かすことで筋肉の緊張がほぐれ、顎関節症の予防ができます。

また、上を向いて口をゆっくり大きく開く・閉じるなどのストレッチも効果的です。10回ほど繰り返すストレッチを1日4~5回ほど行いましょう。

セルフケアのポイントはありますか?

マッサージやストレッチなどのセルフケアはやり過ぎるとかえって顎関節症を引き起こすこともあるため、どちらも無理のない範囲で行いましょう。

大きく口を開閉する際は、顎の関節にあまり負担がかからないようにゆっくりと行ってください。力加減も大切で、あまり力を入れずに優しく顎のまわりをマッサージすることがポイントです。

マッサージの力加減やストレッチについて詳しく知りたい方は、歯科医などの専門医を受診して指導を受けましょう。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

顎関節症は男女共に誰しもが起こりうる疾患です。病気だと思わずに長年放置すると顔や体の歪みにもつながり、多数の副症状も引き起こします。

顎に違和感を覚えたら顎関節症を疑い、ご紹介したセルフチェック方法でご自身が顎関節症かどうかを確かめてみましょう。

痛みがひどい場合は早めに歯科や口腔外科を受診してください。

編集部まとめ


今回は顎関節症について特徴や治療方法などを詳しくご紹介しました。多くの方が感じている顎関節症についての疑問にお答えしましたが、症状を感じられたら病院を受診し早めに治療を受けることが大切です。顎関節症かもしれないとお悩みの方はご紹介した診断方法を試し、項目に当てはまるようなら専門医へご相談ください。顎関節症の予防・治療を行い、痛みのない食事を楽しみましょう。

参考文献

顎関節症(がくかんせつしょう)とは|日本顎関節学会

顎関節症の原因は何ですか?|たけち歯科

顎関節症|テーマパーク8020

顎関節症の副症状|青柳歯科クリニック

顎関節症|KOMPAS

顎関節症|テーマパーク8020

顎関節症でお悩みの方へ|間瀬デンタルクリニック

新時代の日本人に警告! 謎の“あごこり”SP|NHK ガッテン!

現代日本人顎関節の形態学的研究|J-STAGE

顎のずれの治し方と6つの必要な検査|ゆうデンタルオフィス矯正歯科