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 突然ですが、『馬羊』(※本来は一つの漢字)という漢字、読めますか? これ、東京・赤坂に2020年8月にできた、羊肉や馬肉メニューをメインにした居酒屋の店名で、「ばち」と読みます。筆者も読めなかったのですが、調べてみると、どうやら地名を表す文字のようです。いずれにしても、馬肉と羊肉がメインの同店にはピッタリの漢字ですね。

東京メトロ丸ノ内線「赤坂見附駅」から徒歩3分。ビルの地下1階にあります

 さて、こちらのお店、実はカレーの有名店『カリガリ』が運営する新業態。なぜカレー屋が羊肉のお店を? と、最初は不思議に思いましたが、実際に行ってみて、その常識にとらわれない斬新で美味しいメニューに圧倒されました。しかも、このコロナ禍の最中に、どんどんお客さんが増えています。一体どんな魅力があるのかご紹介していきましょう。

専門外だからこそできる新スタイルの羊肉料理

気軽にサクッと美味しく食べて飲めます

 何事も、専門性が高まるにつれ、「こうあるべき」という固定観念にとらわれがちになるものですが、日々、羊肉の美味しさについて啓蒙活動を行っている筆者も、このお店で料理を食べるうちに、羊料理について、自分がずいぶん凝り固まった考え方をしていることに気づき、ちょっと反省しました。思いこみって本当に怖いです。

ラムパッチョ390円

 例えば、ラム肉のたたき「ラムパッチョ」。たたきというと「脂は冷えると味が落ちるから、腿の部分の赤身が最高」と考えていましたが、こちらのたたきは脂が多い。しかも、冷めても脂が美味しいんです。

 その理由は、低温調理。部位はラムの肩部分で、脂がちゃんとあるのでしっかり羊味。玉ねぎとソースとからめて一緒に食べると、それがビシッと決まっているのがわかります。この発想はなかった。非常に面白い一品でした。

羊串(1本180円)

 また、同じく発想の転換で驚いたのが「羊串」です。これまで、羊串といえば「肉が小さめで表面のカリカリを楽しむクリスピータイプ」、もしくは「肉が大ぶりで肉汁あふれるジューシータイプ」が至高と考えていましたが、全然違うタイプなんです。そう、こちらも低温調理した羊肉を串に刺して炙る方式で、味わいは、両者のいいとこ取り。非常に美味しいです。

 しかも焼き終わった後にかけるスパイスがまた最高に美味。さすがスパイスのプロであるカレー屋さんが運営しているだけあり、この新しいタイプの羊串にピタリと合う味わいです。

ラムステーキ。このボリュームで490円

 このほか、490円のラムステーキも、トマトベースのソースが最高で、この味でこの価格は驚異的。気軽に羊と馬を食べてほしい、というコンセプトがビシビシ伝わってきます。

もう一つの看板メニュー「馬肉」も最高

馬刺し290円

 こちらを訪れたら、羊肉と一緒に馬肉も味わってほしいと思います。この写真の馬刺しは290円。この品質でこの量なら、普通は倍以上するはず。しかも、注文が入ってから一枚一枚、手切りにしてくれます。

 冒頭でも書きましたが、こちらのお店がオープンしたのは今年8月。コロナ禍の真っただ中。なのに、訪れるたびに着実にお客さんの入りは増えているのがスゴいです。それにしても、このコロナ禍を経験して、普通に飲食店で食事ができるありがたみが身に染みます。Go To Eatのweb予約も受け付けているそうなので、ぜひみなさんも行ってみてくださいね。

●SHOP INFO

店名:馬羊(ばち)赤坂

住:東京都港区赤坂3丁目6-18 ニューロイヤルビルB1F
TEL:03-6277-8115
営:11:30~15:00(14:30LO)
  17:00~23:00(フード22:30、ドリンク22:45LO)
休:日曜

●著者プロフィール

菊池一弘
羊齧協会主席。羊肉を常食する岩手県遠野市出身の父の影響で、羊肉料理に親しんで育つ。北京留学中に現地の味に触れ、その魅力に開眼し羊好きの消費 者団体「羊齧協会」を結成。本業は、イベントの開催・運営、場作りのプロとしてのアドバイザー業務などに携わっている。最近は四川フェスの運営団体麻辣連盟の幹事長も兼務。監修書籍に「東京ラムストーリー」(実業之日本社)、「家庭で作るおいしい羊肉料理」(講談社)など。
http://hitujikajiri.com/