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世界/国内で好調のボルボ。新型SUV/ワゴンの相次ぐ導入で勢いは留まることを知らない。実は中でも「Cross Country」というモデルにも熱視線が注がれているのをご存知だろうか? 女性ファンも多いという。そんな「Cross Country」、どのような系譜を汲み、今に至るのか? 立ち位置を明らかにするとともに、モータージャーナリストの西村直人が走りを確かめる。

AUTOCAR JAPAN sponsored by ボルボ・カー・ジャパン
text:Naoto Nishimura(西村直人)
photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)、ボルボ・カー・ジャパン

もくじ

ー ボルボCross Countryの立ち位置
ー V90とV90 Cross Country 具体的にどう違う?
ー ひとの命を守るインテリセーフとは
ー ボルボが考える「ひとの守りかた」

ボルボCross Countryの立ち位置

V90 Cross Country(クロスカントリー)のベースとなるモデルはステーションワゴンボディのV90だ。

V90 Cross Countryでは長めのホイールトラベルをもつ専用のサスペンションが与えられ、最低地上高はV90から55mm高い210mmを確保する。

この値はXC90の220mm(エアサスペンション仕様車は190mm)とほぼ同等だ。全高はV90が1475mmであるのに対して、V90 Cross Countryは1545mmと背高ボディでありながら立体駐車場での利便性も考慮された。

ボルボはこうしたステーションワゴンをベースに車高を高めた、いわば新種のSUVカテゴリーでは先駆者的存在。ルーツは1998年にデビューしたV70XCだ。

現ボルボラインナップの流儀では「XC」を名乗る場合、専用のボディ形状が与えられているが、当時のXCはステーションワゴンボディの派生モデルという位置づけであり、「V」と「XC」のダブルネームが与えられていた。

そうした背景をもとに、最新のV90 Cross Countryでは3つのパワートレインが用意された。

ガソリンエンジンではT5として2.0ℓ直列4気筒ターボ(254ps/35.7kg-m)、T6として2.0ℓ直列4気筒ターボ&スーパーチャージャー(320ps/40.8kg-m)の2種類。

3種類目となるディーゼルエンジンはD4を名乗り2.0ℓ直列4気筒ターボにより190ps/40.8kg-mを発揮する。

駆動方式はエンジン形式によらずAWDとし、トランスミッションは全車8速ATを組み合わせている。

V90にラインナップされるプラグインハイブリッドモデルであるT8はV90 Cross Countryにはない。T8もAWD方式だが、T5やT6のようにエンジンの力を後輪へと伝えるプロペラシャフトは持たない。後輪への駆動力は車体後部に設けられた電動モーターが受け持っている。

V90とV90 Cross Country 具体的にどう違う?

V90とV90 Cross Countryの外観上の違いは車高に大きく現れている。高くなったとはいえ全高は55mm高に留まる。しかし、ホイールアーチに専用モールを配するなどの相乗効果により力強さはずいぶんと誇張された。

四隅に張り出した大径タイヤのサイズはV90 D4の245/45R18(タイヤ直径678mm)からV90 Cross Country D4では235/55R18(716mm)へとホイールサイズは同じながら直径そのものは38mm拡大。

また、悪路走行時を考慮して、フロントバンパー下部にはスキッドプレート(車体へのダメージ軽減効果をもたらす専用パーツ)があしらわれV90との差別化が図られるとともに、結果としてSUVモデルらしいタフな印象をもたらす。

V90 Cross Countryに乗ってみた

D4はとてもおおらかな乗り味が特徴だ。全グレードにオプション装備となる電子制御リア・エアサスペンション/ドライビングモード選択式FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシー(以下、エアサス)を選択すると、さらに滑らかさが加わる。

このエアサスは税込み20万円と安価ではないが、ダイナミックからコンフォートまで幅広い減衰特性へと調整可能であることに加え、その調整幅は長めのホイールトラベルとなるV90 Cross Country向けに専用設定が施されている。オーナーとなるなら是非とも装着を検討してほしい。

車両重量は1870kg(エアサス仕様車は1900kg)と同じディーゼルエンジンを搭載するXC60 D4(1880kg)とほぼ同等。ちなみに同じくディーゼルエンジンを搭載するV90 D4は1770kg(同1800kg)だからCross Country化によって100kg車両重量が上乗せされた計算になる。これはFF→AWD化のほかに、外観上の専用装備の追加や大径タイヤへの変更、さらには専用のジオメトリーが与えられた前後サスペンションによるものだ。

ディーゼルエンジンに対して一際トルクフルで力強い印象を抱かれる読者も多いことだろう。たしかにV90 Cross Countryのカタログスペック上は最大トルク値の40.8kg-mを1750-2500rpmの間で発揮する。

しかし、市街地ではアクセルワークに対して気を遣うことは一切なく、ガソリンエンジンモデルと同じようにスムースに発進し車速を伸ばしていく。見た目はタフで力強い印象だが、走りはいたってスムースで上質。これがV90 Cross Country D4最大の特徴だ。

ひとの命を守るインテリセーフとは

インテリセーフに代表される先進安全技術はV90 Cross Countryにも全グレード標準装備。2019年モデルのトピックは、いわゆる自律自動ブレーキ機能であるシティセーフティに「対向車対応機能」が追加されたことだ。

この対向車対応機能は、自車の車線を正しくセンサーが認識しているときに、対向車が自車線内に侵入し衝突が避けられないと判断された場合に、最大で10km/h分の減速が見込めるブレーキが働く。

これまでのシティセーフティのように速度域によっては衝突回避が望めるといったブレーキ制御を行うのではなく、衝突避けられない、つまり衝突事故となってしまう直前に被害を軽減する目的でブレーキ制御が働く点がこれまでの考え方と大きく違う。

繰り返しになるが、この機能で低減できる速度は最大で10km/hと限定的。しかし、正面衝突の際、双方の車両にかかる運動エネルギーの低減という意味では非常に大きな意味がある。

また、ブレーキ制御による最大10km/h分の速度が低減されることで、ドライバーや同乗者、さらには対向車のドライバーや同乗者の加害性もそれだけ低くなることが期待できる。

このように、衝突が避けられない場合であってもインテリセーフは先進安全技術によって、ひとの命を守る。これはボルボが掲げている「VISION 2020」(2020年までに新しいボルボ車による死傷者をゼロにする)というスローガンに一歩近づくものだ。

事故ゼロの交通環境を目指したい。しかし、日本においてだけでも8000万台以上のクルマが日々道路を走っていることから、事故の可能性を完全に排除するのは非常に困難だ。

その上で、先進安全技術の役割も変化する。

ボルボが考える「ひとの守りかた」

事故を未然に防ぐ自律自動ブレーキ機能に代表される「アクティブセーフティ」技術と、事故発生時に衝撃を吸収してドライバーや同乗者を守るなどの「パッシブセーフティ」技術。

そして今回の対向車対応機能のように、事故の直前に衝突時の運動エネルギーを低減する、いわば電子バリアのような新しい先進安全技術によって、避けられない事故の被害を軽減することが期待されている。

ボルボはこれまで、先進安全技術の集合体であるインテリセーフの機能を強化することで危険な状態に近づかない運転環境をドライバーに提供してきた。

そしてこの先も、このインテリセーフを構成する要素技術がそれぞれ高度化することで、防げる事故シーンも増えていくことだろう。

最新のボルボには、次々に新しい先進技術が搭載されていくのだろうという期待は間違いないが、過去の例にもあるようにインテリセーフは正規ディーラーでソフトウェアのバージョンアップが可能なものもある(有償)。購入後も新たな機能追加が期待できる。

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もちろん、それには物理的な限界はあるものの、クルマ選びの基準としてなくてはならない先進安全技術だけに、この先は考慮されるべき要素のひとつではないだろうか。

今後とも、ボルボの枠にとらわれない動向に注目したい。