小泉文明メルカリ社長「個人売買の権限と能力を開放」
ユニコーンがつくった「メルカリで売れるから買おう」という世界
-メルカリは世の中の何を変えたのでしょうか。
「ライフスタイルだ。何かモノを買うときにメルカリで対象物を検索して『メルカリで売れる(モノだ)から買おう』という声を町なかで聞く。こんな世界を作ることができたのは感慨深い。最近は40-50代にも広がっている。子どものお小遣い制をやめて、メルカリ(でもうけたお金をお小遣い)にしたなんて人もいる。『家のいらないものを売ってお小遣いにしていいよ』と。売ることを前提にモノを買って利用し、市場を“クローゼット”と捉える方もいる」
「モノの所有から一時的な利用に変わり、個人売買の可能性を広げたと感じている。シェアリングエコノミーやCツーCとはつまるところ、個人への権限付与・能力開化だ。会員制交流サイト(SNS)は個人に対して一方的な情報供給から多角的な情報の場を提供した。同じように、我々は個人に対してモノの売買における権限と能力を開放した」
-上場という節目を迎えました。
「新規株式公開(IPO)はただの資金調達でしかない。やりたいことは上場してもぶれない。可能性やチャンスが目の前にあったときに挑戦できる会社であり続ける。社会的責任という点でも変わらずに果たしていきたい。すでに個人間で売買ができるフリマアプリ『メルカリ』のダウンロード数は1億件を突破。多数の人々に利用されているため、非上場時から社会的な立場を考えてきた。今後も安心・安全を求めつつ、ライフスタイルを変えるような取り組みを進める」
胆力の勝負
-上場で得た資金は何に使いますか。
「米国のメルカリ事業や、メルカリで得たお金や信用を決済などに利用する金融事業『メルペイ』などに投資していく。米国事業は18年の流通月額が17年比で2倍に成長したが、まだ赤字が続いている。黒字化の時期はわからないが、引き続き広告宣伝費などに充てていきたい」
「また、メルペイ事業は単独では完成させることはできないだろう。実際に、決済が利用される飲食店や小売店などと協業する必要がある。今、そうした企業にとってのメリットは何かなど、サービスの構造を設計している。チャンスがあれば、他社への出資やM&A(合併・買収)も実施していくつもりだ」
-上場すると、赤字事業への投資やシナジーが見えにくいM&Aはやりづらくなるのでは。
「(米国事業などを含む)我々のビジネスはインターネット上で売り手と買い手の間で行われる取引が自律的に拡大し始める『ティッピングポイント』というものがある。これは事業が拡大し、過ぎ去ってみた後で『あそこがティッピングポイントだった』と結果的に分かるものだ。逆にそこまで投資が耐えられるかが肝心だ。日本のメルカリ事業も同様で、黒字化までに総投資額は数十億円を費やした。固定資産を抱えるビジネスではないので、ティッピングポイントを超えれば収益性が急伸する。要は胆力の勝負」
