浦和レッズの新監督が、オズワルド・オリヴェイラに決定した。

　Ｊリーグはもちろん欧州も南米もシーズン中のこの時期は、希望どおりの監督を招聘するのは難しい。一方で、ロシアＷ杯開催に伴う中断があるとはいえ、素早い立て直しが必要でもある。そういった意味で、今回の浦和の判断は評価を集めるものと言っていい。

　鹿島アントラーズを指揮した07年から11年までのオリヴェイラの足跡は、Ｊリーグ25年の歴史のなかでも眩しく輝く。07年から09年かけてのリーグ戦３連覇は、オリヴェイラの鹿島しか成し遂げていない。カップ戦でも強さを発揮し、リーグカップと天皇杯も制している。

　Ｊリーグを離れたあとは、ボタフォゴ、サントス、パルメイラスといった国内の名門クラブを渡り歩いてきた。17年にはカタールのアル・アラビを指揮した。ただ、国内リーグ優勝に相当するタイトルはつかめていない。

　それでも、監督としてのキャリアに空白期間はない。ブラジルの各クラブがドライな判断で監督を代えるとしても、オリベイラが評価されているのは間違いない、と考えていいのだろう。

　オリヴェイラの招聘について、浦和レッズの中村修三ＧＭは「タイトル獲得経験があること、日本を良く知っていること、これまで目ざしてきた強くて魅力あるチーム作りを行なえる人材であること」を理由にあげた。最初のふたつはすっと胸に落ちるのだが、三つ目はちょっと喉に引っかかってしまう。

　12年から17年途中まで監督と務めたミハイロ・ペトロヴィッチは、サンフレッチェ広島で成功を収めた。オリヴェイラ新監督は、前述したように鹿島で結果を残した。堀孝史前監督、大槻毅監督代行を挟んだものの、「他クラブの元監督」に再びチームを託した。

　浦和ＯＢの長谷部誠がプレーするフランクフルトのニコ・コヴァチ監督は、来シーズンからバイエルン・ミュンヘンの監督となる。同一リーグの他クラブで結果を残した監督を引っ張ってくるのは、バイエルンの古くからのスタイルである。１９９０年代のオットー・レーハーゲルしかり、２０００年代前半のオットマー・ヒッツフェルトしかりだ。現監督のユップ・ハインケスも、87年に初めてバイエルンを率いることになったきっかけは、ボルシアＭＧでの仕事を評価されたからだった。

　ただ、バイエルンにはバイエルンのサッカーがある。監督が変わっても、選手が入れ替わっても、サッカーの方向性が極端に変わることはない。ペップ・グァルディオラの指揮下では特徴的なサッカーになったものの、組織のなかで傑出した個人が生きるスタイルは貫かれていた。

　オリヴェイラ監督のもとで、浦和はどのようなチームを目ざすのだろう。「強くて魅力あるチーム作り」を具体化させるだけでなく、誰もが思い浮かべられる〈浦和レッズのサッカー〉を確立することが、真のビッグクラブとなることにつながっていくと思うのだ。