オーディオ再成長のカギは「良い音で聞く」体験?機器各社、新ビジネスモデル模索
木が音を拡散
椿山荘はスイートルーム「アクアガーデンルーム」に、米高級オーディオブランド「マッキントッシュ」のアンプなどを使ったリスニングルームを設置した。最大の特徴は、ヒビノの子会社、日本音響エンジニアリング(NOE、同墨田区)が開発した音響特性調整機材「アコースティック・グローブ・システム(AGS)」を置いた点だ。
AGSは最も理想的な音響空間とされる森の音響拡散効果を再現するための装置で、太さの異なる数本の木製の円柱で構成される。この木が音を拡散し「楽器一つひとつの鳴り方がくっきりし、音場が広がる」(NOEの根木健太主任)という。
椿山荘はホテルの付加価値向上と差別化を狙う。オーディオプランは28日までの限定企画だが「予約状況は上々」(椿山荘広報)。ヒビノは今回の取り組みを機器やAGSの販売につなげるだけでなく、オーディオ環境を提供して売り上げを稼ぐサービス型ビジネスの可能性も模索する。展開するホテルの拡大も視野に入れる。
非日常味わう
ヤマハが始めたのは、子会社のヤマハリゾート(静岡県袋井市)が所有する高級宿泊施設「葛城北の丸」を活用したオーディオルームだ。敷地内の離れ「梅殿」にヤマハの高級オーディオ機器を設置。宿泊者は希望の時間帯にオーディオルームを利用できる。グループの強みを生かして施設の付加価値向上と宿泊者の増加、機器販売につなげる考えだ。
非日常感などが受け、1月は1日当たり3件ほど利用が立て込むこともあった。今後はイベントの実施などで周知を図り、将来は宿泊者以外の利用など、さらなるビジネスの可能性を模索する。
携帯型音楽プレーヤーやスマートフォンの普及と、配信型音楽ビジネスの浸透で、ヘッドホンやイヤホンを介して音楽を聴くことが一般的になりつつある。また住宅事情なども重なり、音楽をオーディオ機器で聞く場面は減っている。そのため「機器メーカーは良い音を確かめてもらう場を求めている」(ヤマハ)。ヒビノやヤマハは、消費者のオーディオ離れも食い止める意向だ。
臨場感を再現
一方、オーディオルームで聞いているかのような臨場感をヘッドホンで実現しようとするのが、JVCケンウッドだ。同社は2017年に耳の音響特性を測定することで、ヘッドホンからではなく、目の前のスピーカーから音楽が流れているように聞こえ方を制御する技術「エクソフィールド」を開発。この技術を活用した個人向けのカスタマイズサービス「ウィズミュージック」の展開を始めた。
測定は自社スタジオや特設リスニングルームで行う。ヘッドホンやヘッドホンアンプ、測定サービスなどを含め、価格は30万円(消費税込み)から。測定データはユーザーにフィードバックされ、専用アプリケーション(応用ソフト)にインストールすることで「エクソフィールド」に対応した楽曲を再生できる。
各社は「良い音を聴く機会」を提供することで、新たなビジネスモデルと事業成長の機会をうかがっている。
(文=政年佐貴恵)
