見えたらゴメン・アキラ100%優勝「R-1ぐらんぷり2017」をじっくり振り返る

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「僕でR-1を終わらせるわけにはいきません!」

全裸の男がお盆を股間に当てて叫ぶ。そのスリルにみんな息をのんだ。ひとり芸日本一を決める『R-1ぐらんぷり2017』。参加者3792名の頂点に立ったのはアキラ100%だった。波乱の今大会を全て振り返る。


Aブロック:レイザーラモンRG、横澤夏子、三浦マイルド、サンシャイン池崎(復活)


過去の優勝者とファイナリストが揃ったAブロック。そこに復活してきたのがサンシャイン池崎。フジテレビの入構証を食いちぎり、バリーン!と両手をクロスさせて飛び込んできた。その勢いのまま、1分(実際は1分42秒)でトトロをやりきるハイテンション芸でセオリーを全てなぎ倒し、視聴者投票では40%台の圧勝。初のファイナル進出を決める。

一方、0票に終わったRG。決勝進出決定の会見などでも、ずっとトランプの姿で場を盛り上げており、ネタバレを恐れないハートの強さが印象的だった。本番ではネクタイが青い、「Get out,here!」を言わないなど、いつもよりトランプ風味は薄味。しかしその物足りなさは、審査とは全く関係ないのにイヴァンカの扮装をして客席で応援するHGの姿でチャラ。勝敗とは別のところで戦っているレイザーラモンが眩しい。

Bブロック:ゆりやんレトリィバァ、石出奈々子、ルシファー吉岡、紺野ぶるま(復活)


紺野ぶるまが復活し、女性芸人3人をルシファー吉岡先生が引率する形になったBブロック。ゆりやんがステージ上を華麗に舞い、ルシファー吉岡と紺野ぶるまが下ネタを封印して臨むなか、ジブリのヒロインを大阪に連れ出した石出が浅井企画初のファイナル進出。サンシャイン池崎のトトロに続き、2人目のジブリいじり。「ふしぎ〜」を上から撮るカメラワークも功を奏したかもしれない。

そしてBブロック終了後、復活席でコメントを求められたアイデンティティ田島が野沢雅子の声で「ぶるまが行ったからよぉ!オラもぜってぇ行きてぇぞ!」と返したのが100点でした。

Cブロック:ブルゾンちえみ、マツモトクラブ、アキラ100%、おいでやす小田(復活)


マツモトクラブ、おいでやす小田の作り込んだネタに対し、爆発したのが裸芸のアキラ100%。定番の丸腰刑事ではなく「絶対見せない de SHOW」と称して円盤投げ、バランス、城本クリニックとお盆芸を次々と披露。生放送でポロリの危険があるなかで、審査員の板尾創路は「すごく葛藤があったんですけど、アキラ100%はありにします」「ナンセンスな笑いにスリルがプラスされると大爆笑になるんだな」とコメント。おそらく審査員全員が「葛藤」と戦った結果、アキラ100%が見事1位通過。昨年、ハリウッドザコシショウの直後の出番で苦戦した小田が「毎年ハダカの後やめろ!」と叫ぶのも無理はないのだった。

人気急上昇で注目株だったブルゾンちえみは、いつも従えているwith B不在でのピン芸。いつものふてぶてしいキャラを緊張が遙かに上回っているのがわかる。ネタを飛ばしてしまったと悔し涙を見せる一方で、視聴者投票が1位だったのは複雑な思いもあるだろう。

ちなみに今大会、掛川にのぞみが止まらないことを2回もいじっていたことも記録しておきたい(RGとマツモトクラブ)。

ファイナルステージ:サンシャイン池崎、石出奈々子、アキラ100%


年越しの「笑ってはいけない」で斎藤工がサンシャイン池崎と、原田龍二がアキラ100%と共演していたが、その二人ともファイナルに残るという展開。復活後の2本目のネタなのに、サンシャイン池崎が巨大ブレードをちゃんと用意していたことに驚く(他の準決勝敗退組もたくさん準備をしていたのだろうなぁ……)

賞レースの2本目のネタ選択には「1本目とバージョン違いのネタ」か「1本目と全く違うネタ」かの葛藤がつきまとう。前者は一度ウケている手応えがあるが、2回目は飽きられてしまうリスクがある。後者は新鮮味をもって受け取られるが、ウケる保証は無い。今回の三人で言えば、石出奈々子が前者、サンシャイン池崎が後者を選択したことになる。

アキラ100%の場合、やってることはずっと同じ「股間をお盆で隠す」なのだが、1本目とバリエーションが全く異なる。円盤投げや城本クリニックなど、動きで見せていた1本目に対し、2本目はお手玉や雀牌、赤と緑の板など、お盆以外の小道具の出番が増えている。コントのバージョン違いでは発想の飛躍が一定の距離で縛られるが(例えば石出奈々子は「ジブリ」という縛りがある)、アキラ100%は小道具を入れ替えることで違う発想のネタも挟みやすい。

会場の空気も一気にアキラ100%に傾き、21票中14票という大差で優勝。最後は『「優勝賞金500万円」の巨大パネルで股間を隠す』という、これ以上ない小道具で幕を下ろしたのだった。

「生放送出演」という英断


ふたを開けてみれば、2年連続の「SMA所属の裸芸人」が優勝である。昨年ハリウッドザコシショウが決勝に進んだときも「大丈夫か」という感想を持ったが、今年のアキラ100%はまた別の意味の「大丈夫か」だった。だって、生放送で裸の男がお盆で股間を隠すのだ。TVショーやぞ。

アキラ100%は、準決勝での会場ウケはトップクラスだった。ウケで決めるなら決勝進出は順当。その結果を踏まえ、ポロリのリスクを犯しても「生放送に出演させる」という英断を下した番組に拍手を送りたい。最悪の事態に備えて前バリをしていたかもしれないけど、「お盆の横から前バリが見えた」となるのも興ざめだろうからリハーサルも入念に行ったはずだ。面白さのためなら手間を惜しまない心意気が一人の芸人を晴れ舞台に押し上げてくれた。

アキラ100%、優勝おめでとう!でも、ザコシ→アキラと優勝者が続くと来年は一体どんなメンバーになるのか、ちょっと心配です……!

(井上マサキ)