蕨vs大宮開成
米山恭平（蕨）
蕨が圧巻の試合を見せた。蕨は機動力がお家芸という印象を埼玉の高校野球ファンに与えているが、今年は打撃が良いチームという印象を受ける。その理由を黒須監督が明かしてくれた。
「私たちの場合、攻撃力をどう表しているのかというと、打撃力×機動力=攻撃力と考えています。機動力で相手投手にプレッシャーを与え、打者に集中させないように。そして打者に集中しきれていない投手の甘い球を打ち返す。その相互の関係で、うちは強化をしてきたのですが、どうも打撃力がひ弱なところがあり、打撃強化を乗り出さないといけないと思いました」
そこで取り組んでいるのがソフトボール打ちだ。至近距離から緩いボールで、重量のある金属バット、重いマスコットバット、軽い木製バットを使い分けながら打ち返す。ここで振り負けないパワーを身に付けていったようだ。選手たちのスイングを見るとレベルスイングというよりボールの下を捉えるややアッパー気味のスイング。ボールの軌道に対して平行にボールを捉えることができるため、どの選手の打撃も鋭い。
1回裏、いきなり一死二塁から3番米山 恭平の適時三塁打で1点を先制すると、4番宮野 広大の犠飛で2対0に、さらに二死二、三塁となって、7番梅内の適時二塁打で2点を追加し、4対0とすると、3回裏にも5番小長の適時打や相手の失策などで3点を追加し7対0とすると、4回裏には一死二塁から3番米山の適時三塁打、4番宮野の左前適時打、6番瀬戸の中前適時打で10対0と点差を広げ、そして先発の小長がしっかりと抑えて5回コールド勝ちとした。
強力打線の蕨の中で目を惹いたのが3番米山、4番宮野。彼らは夏もクリーンナップを打っている選手だが、特に3番の米山の走攻守のバランスが素晴らしい。脚力もあり、守備を見ていても肩の強さがあり、そして打撃は独特の足上げから、弧を描くようなスイング軌道で広角に鋭い打球を飛ばすことができる。「しっかりと振り切る中でも逆方向へ打ち返すのではなく、しっかりと回転をかけて打球を飛ばすことを意識して、練習しています」と高いレベルを求めて練習に取り組むことができる選手で、チームメイトに話を聞いても、打撃では米山が一番ですという声が多い。
また宮野も逆方向へ強い打球を打ち返せる巧打者。キャッチングの良さが光る好捕手。蕨は関西遠征の中で甲子園観戦する機会があり、そこで履正社の井町 大生のキャッチングに惚れ惚れして、すぐに井町のキャッチングを参考に練習に取り組んだそうだ。蕨は黒須監督を始め、選手も探究心が高い。そういう探究心の高さが、選手の力量の標準を高めたといえる。
県大会を目指して戦う相手は浦和学院。新人戦でも戦って接戦を演じてきたが、どんな試合になるか楽しみにしていきたい。 勝っても、敗れても今年の蕨は来夏まで一泡吹かせる公立校であることはお伝えしておきたい。
