"世界最強のオタク""青い瞳のケンシロウ"のニックネームを持つ総合格闘家、ジョシュ・バーネット。かつてPRIDEでアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラやミルコ・クロコップと激闘を繰り広げた彼は今、UFCヘビー級のトップ戦線で活躍している。

 昨年9月のUFC日本大会ではメインを務め、『北斗の拳』の主題歌で入場、強豪ロイ・ネルソンに146発もの打撃を叩き込んで完勝し、ファンを感涙させた。そんなジョシュがUFCのプロモーションのため来日。自身の今後、新日本プロレス、RIZINなど日本の格闘技についてたっぷり語った!

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―― お久しぶりです! お元気ですか?

「ヒサシブリ! 調子いいよ。練習もうまくいってるし。今、人生で最高に忙しいけどね。自分の練習と弟子の指導もあるし、去年撮った総合格闘技映画『ネバー・バックダウン ノー・サレンダー』のDVDがアメリカで発売されたからその宣伝もあるし、アメリカのテレビで新日本プロレスの解説もしてるし、超多忙なんだ」

―― ジョシュさんの次の試合は?

「9月3日にアンドレイ・アルロフスキーとやるよ。ドイツのハンブルグでの『UFCファイトナイト』だ!」

―― オオ〜、元UFCヘビー級王者同士の対決ですね!

「ああ。でも彼が王座を獲ったのは僕がPRIDEに行ってるときだ。だからこれはPRIDE vs UFCの対決さ。ずっとやりたかった試合だし、もし今やらなかったら、もう戦うチャンスはないかもしれない。僕たちも以前より年を取ったし、これから何年試合を続けるかわからない。だから今のうちにやっておきたい」

―― 今38歳ですが、何歳で引退というのは決めてるんですか?

「いや、それはない。前進し続けるだけさ。そして、時が来たら辞めるよ」

―― 確かに、ジョシュさんは激しい試合をしてるのに、衰えが見られないですね。

「僕は20年近くプロで試合してる。普通ならとっくに引退してるよ。最近は以前より負けも増えたけど、それは今も僕がトップレベルの相手と試合をしているからでもある。今も元気で試合できているのは、師匠たちのおかげさ。最初のコーチ、ジム・ハリソン、そしてマット・ヒューム、ビル・ロビンソン、カール・ゴッチ、エリック・ポールソン(元修斗王者)、ハル・シマニシ......。彼らから教わった技術と知識のおかげで今の僕がある」

―― 師匠たちの顔ぶれが凄すぎます!

「だろ? それに、僕は戦いのスタイルを変えることができる。ここ数戦ではサウスポーとオーソドックスを混ぜて戦ってる。最近特訓して、誰が相手でもサウスポーでも戦えるようになった。さまざまな技術を身につけてるから、ほかの選手にできない戦い方ができるんだ」

―― 年末にUFC Japanがあるという噂です。

「ホント? 聞いてないなァ。でも日本で大会があるなら、ぜひ出たいよ!」

―― 9月のアルロフスキー戦のあとですが、間に合う?

「打たれず、あっさりKOか関節技で勝てば何の問題もないよ! 年末まで練習を続ければいいだけさ」

―― RIZINもまた大晦日にやるでしょうし、UFCとハシゴできますね(笑)。

「そうなったらパーフェクトだ! それならRIZINに僕の弟子を連れてきて試合させる。UFCで自分の試合を終えて、そのあと彼のセコンドに付けばいい。今年4月の『RIZIN.1』でヒョードルの後輩のワジム・ネムコフと戦ったカーロ・アルブレックソンは、一昨年に僕のいるカリフォルニアのCSWジムで1ヵ月練習していたんだ。僕たちは彼をメタモリスなどの組み技大会に出させたし、僕がRIZINのブッカーに紹介したのさ。それから、僕のところにいる女子選手をギャビ・ガルシア(RIZNで総合格闘技デビューしたブラジルの女子世界柔術王者)と試合させたい。今その準備をしてるところさ」

―― 昨年末のRIZINはどう思いました? あなたの長年の友人、"世界のTK"こと高阪剛選手も9年ぶりに復帰しましたが......。

「いやあ、TKはあのデカいジェームズ・トンプソンと、凄い殴り合いをしたね! あんなタフな戦い方をすべきじゃないと思ってたんだけど......。すぐタックルで倒して、あっさり関節技でキメると思ったんだ(笑)。あの試合前にパンクラスの会場でTKに会って、『ブチのめしてやれ! 絶対負けないでくれ!』って言ったら、TKは『絶対ブチのめすし負けない! 心配するな、勝つよ!』って答えた。

だけど試合を見たら予想と違った。もっと技術を見せつけて戦うと思ったんだ。でも勝ったしね(2R1分58秒、スタンドでのパンチでTKO)。真っ向から殴り合って、叩きのめしてKO勝ち。最高だよ!」

―― 実は試合当日、TKはトンプソンに凄く腹を立ててたんですよ。

「えっ、どうして?」

―― 契約体重の120kgを13kg以上オーバーしてきたんです。その上、そこから少しも落とそうとしなかった。試合前のTKにバックステージで会ったとき、いつになく厳しい表情をしてたんで「9年ぶりの復帰戦でナーバスになってるのかな?」と思ったんですが、試合後に聞いてみたらそういう話で......。試合時の相手との体重差は33kgもあったんですよ。

「そうだったのか! ......なるほど、それでアイツを思い切り殴り倒してやりたいと思ったんだね! でも、とにかく勝ってくれてホントに嬉しいよ」

―― 同じく年末のRIZINでの、エメリヤーエンコ・ヒョードルの復帰戦はどうでした?

「ヒョードルvsシング心ジャディブはいい試合じゃなかったね(3分3秒でヒョードルがTKO勝利)。シングは経験不足だ。総合はヒョードル戦が3戦目だし。ヒョードルにはもっといい相手を用意すべきだった。少なくとも、もっと経験のある相手をね」

―― ヒョードルの復帰第2戦、6月にロシアで行なわれたファビオ・マルドナド戦は?

「ヒョードルがあんなに殴られたことはないんじゃないかな? マルドナドは、賢い戦法をとったね。金網際でしっかり両腕でガードを固め、ヒョードルの左右のフックをブロックし続けた。デンジャラスな作戦だ。わざとヒョードルに連打させて調子に乗らせ、大振りになったところにカウンターのフックを叩き込んだ。もう少しで1R TKO勝利するところだった」

―― ロシア人の実況アナも、「ヒョードルが、やられた、やられた!」と叫んでましたね。

「レフェリーが止めなくてよかったよ。ヒョードルやマルドナドは若い選手とは違う。経験を積んだプロだ。とことんやらせるべきさ。総合格闘技の黎明時代のようにね。彼らにはその資格がある」

―― ヒョードルの判定勝ちについては?

「僕は引き分けだと思ったね。でもふたりとも素晴らしい戦いを見せたから、嬉しかったよ」

―― 先日、モハメド・アリが亡くなりましたが、アリのことは好きでしたか?

「大好きだよ。ボクシング・スタイルも好きだし、70年代に彼がアントニオ猪木と戦ってプロレスに愛情を示したことも素晴らしい。アリvs猪木戦についていえば、猪木はあの試合で、投げも関節技も上半身への蹴りも禁じられ、ほとんど技が使えなかった。その状態でああいうふうに(マットに自ら寝てアリの脚を蹴る)戦ったのは賢いと思う。非常に限定された条件での試合だった。でもその中で猪木は非常に創意工夫に満ちた戦いを見せた。とても賢いよ」

―― ジョシュさんはアメリカでの新日本プロレス中継の解説者もやっているとのことですが、元新日本プロレスの中邑真輔がWWEに移籍しましたよね?

「ああ、(WWEのファーム団体)NXTにね。それに関して僕はアメリカのメディアでも話をしたよ。マウロ・ラナーロ(Mauro Ranallo)と僕が一緒に実況をした番組でね。マウロは、アメリカでPRIDEの実況をしてたことで有名だ。そのマウロと僕で新日の実況をやってたんだけど、全米で最高のプロレス実況だって言われてたんだ。去年末の『レスリング・オブザーバー』誌の投票で、マウロはプロレス実況ナンバー1に選ばれたんだ。僕は3位だった。ふたりで最高のプロレス実況コンビだったのさ。

 この新日本プロレスの番組はAXS(アクセス)という局でやってたんだけど、この局の一番人気の番組だった。それでWWEがマウロを引き抜いて(今はスマックダウンの実況)、僕たちが新日本レスリングをアメリカで人気にした。そしたら、WWEはカール・アンダーソン、ドク・ギャローズ、中邑、AJスタイルズなど、新日のトップ選手何人かを引き抜いたんだ。彼らが大きなチャンスを掴むことができたんだから、僕も嬉しいよ。新しいファンと出会い、キャリアにおいて新たな旅をするわけだからね。素晴らしいことだと思う」

―― プロレスは人気を回復しました。では、日本の総合格闘技界の未来は?

「パンクラスが一番よくやってると思う。とても質の高い大会を長年続けてるのには敬服する。海外からも優れた選手を招へいしてるし、とてもよくやってるよ。"日本のUFC"と言ってもいいし、たぶんそれを目指してるんじゃないかな。リングの使用をやめて金網での試合になってしまったのは残念だけど......。でもUFCは人気があるし、パンクラスの大会はすべてUFC Fight Passで放送されるようになって、世界中の人が見られるようになったからこれから人気がでるだろうね。

僕の記憶しているパンクラスとは少し違うものになったけど、僕の弟子たちに素晴らしい機会を与えてくれる場所だ。僕は今もパンクラスの無差別級王者だし、パンクラスを応援するよ。日本の総合格闘技は、また上り調子になっていると思う。RIZINのように大きな大会ができたのもいいことだし、DEEPや修斗も続いてる。村田夏南子やRENAみたいな選手にどんどん出てきてほしいよ! 彼女たちは、まさに見本とすべきハイレベルな選手。階段を上って、新たなスターとして輝くはずだ。そして、アマレス選手がプロ格闘家になったり、あるいはプロレスラーがハイレベルのガチ・ファイターとして活躍するようになるはずさ」

稲垣收●文 text by Inagaki Shu