紀元前8世紀から紀元前1世紀にかけてイタリアで高度な文明を発展させたエトルリア人は、宴会や音楽、ぜいたくを愛し、しかしとても信心深かったと言われています。高度な文字文化を持っていたものの現在ではほとんど資料が残されておらず、どんな文化を築いていたかがわからないため「謎の文明」と言われることもあるエトルリアの言語が刻まれた石板が新たに発見され、謎を解明する手がかりになると見られています。

Text in lost language may reveal god or goddess worshipped by Etruscans at ancient temple | SMU Research

http://blog.smu.edu/research/2016/03/28/text-in-lost-language-may-reveal-god-or-goddess-worshipped-by-etruscans-at-ancient-temple/

考古学者らによってイタリアで発見された板石は2500年以上前に建てられた寺院の土台に埋め込まれていたもので、寺院がまだ機能していた当時は権力の象徴として飾られていたものであろうと見られています。



板石には死語の1つであるエトルリア語が記されており、文書は神や女神に対する崇拝についてのものだと見られています。これまでに発見されたエトルリア語の多くはお墓やお葬式にまつわる短い文章だったため、崇拝や宗教に関わる今回の発見は非常に貴重なものであるとのこと。



考古学者グレゴリー・ワードン氏は「今回発見された文書は神聖なもので、欧米の慣習の根源となった『失われた文化』で行われていた、初期の信仰について解明する重要な手がかりになるでしょう」と語ってます。

板石の重さは500ポンド(約230kg)ほどで、高さ4フィート(約1.2m)×幅2フィート(約60cm)という大きさ。句読点とともに約70文字からなる文書が書かれていたそうです。エトルリア人は劣化が激しいろう板や布製の本に文字を書くことが多かったため、これほどに長い文書が石板に書かれていることは珍しく、過去に発見されていない新しい文字も見つかるだろうと予測されています。

石板は文字がかすれて読みづらくなっている部分があり、古代に火災があったためか片面が変色しているとのこと。現在は写真測量法やレーザースキャンによって内容が調べられており、今後数カ月にわたって調査が行われる予定です。



20年にわたる採掘プロジェクトによって、上流階級・非上流階級が使っていた陶器や家屋など日常にまつわるものが明らかになると共に、神への供物・信仰に関することも判明してきました。また紀元前7世紀から紀元前2世紀にかけての宝石や貨幣、芸術作品なども発見されており、これらはエトルリア人の文化を理解するための貴重な資料となっています。

エトルリアの言語については動詞や名詞など、判明している部分もあるのですが、その土地で崇拝されていた神や女神といった宗教的な部分についてはわかっていない部分も多く残されているため、今回の発見は謎の解明にとって非常に価値のあるものとなりそうです。