ここぞで魅せたベストピッチ!壁を越えたエース・五十嵐の活躍で都立大山・都立六郷工科合同チームが本大会出場を決める!

先発・五十嵐(都立六郷工科)

 3月22日、一次予選で唯一代表が決まっていなかった第7ブロックの代表決定戦が修徳高校八潮野球場で行われた。第1試合は、都立大山・都立六郷工科の合同チームと都立羽村の対戦。

 都立大山・都立六郷工科は五十嵐、都立羽村は栗山の両先発で始まった試合は初回から動く。1回表、都立羽村は1番・田中が四球を選び出塁すると、2番・篠田もエラーで出塁。さらに盗塁を試みた田中に対し、三塁への送球が逸れる間に2人が還り、都立羽村が2点を先制する。このままバタバタとしたまま失点を重ねてしまうのかと思われるところだったが、都立大山・都立六郷工科はその後ミスも出したもののこの2失点のみで初回を切り抜ける。伊藤諒監督(都立六郷工科)はこう振り返る。「合同チームなので細かいところなど難しい部分はあります。ただ、エラーで失点したことも選手達にはマイナスにはならなかった。逆に余裕が出てきたのかなと思います。」

 その裏、都立大山・都立六郷工科は先頭の井上が二塁打で出塁すると、送りバントで三塁まで進め、3番・松尾の内野ゴロの間に1点を返す。続く2回、五十嵐が三者凡退に抑えたその裏にはヒットで出塁の5番・石川を三塁に置き7番・中村がタイムリーを放ちまず同点。さらに2つの四球でランナーを溜めると、1番・井上、2番・五十嵐の連続タイムリーが飛び出し3対2と勝ち越しに成功する。

 逆転されたままでいるわけにはいかない都立羽村は代わった重黒田が毎回のように四球を出す苦しい投球ながらも1失点に抑え、じっと反撃を待つ。

2番手・重黒木(都立羽村)

 しかし、この日の都立大山・都立六郷工科の先発・五十嵐が都立羽村の前に立ちはだかる。5回に1番・田中にタイムリーを打たれた以外は、ピンチらしいピンチも作らない見事な投球。伊藤監督も「ベストピッチだ」と太鼓判を押す活躍で得点を許さず、5対3での勝利に大きく貢献した。

 その五十嵐に話を聞くと「自分(の四球)から始まってしまったので、ピッチングで返そうと気持ちを入れました。」と切り出した。気持ちを込めた投球で、その後はほぼ完ぺきな内容。これには自分も驚いていたようだった。「これまでは6回につかまってしまうことが多くて、今日みたいに最後まで投げられたのはほぼ初めてだと思います。最近になって気持ちを切り替えることができるようになったので、それも良かったのかも」と笑顔を見せた。5回に失点を許した後、しかも今まで鬼門の6回を三者凡退に打ち取ると、7、8、9回も完璧な投球で都立羽村打線を抑え込んだ。壁を一つ越えたといっていいだろう。

 いい意味での開き直りかたを覚えたエースとチームは、今年の春季都大会の中では唯一の合同チームとして出場する。この都立大山・都立六郷工科は合同チームとは思えないほどの中の良さと明るさだが、聞けば、これまでも一緒に合宿を行ったりと交流は深かったよう。納得の結束力だ。「ひとつでも多く勝てるように、まずは初戦」と監督と選手は口を揃える。その都大会初戦は4月1日、立川市立川公園野球場で都立成瀬と対戦する。

(取材・写真=青木 有実子)

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