千葉ロッテマリーンズ 鈴木 大地選手「求めるは柔らかさと硬さの共存」
「ミズノさんのグラブを使うようになったのは東洋大学1年生の時です」千葉ロッテ・鈴木 大地は、頼れる相棒と10代で巡り会えた幸運に感謝するかのような表情でそう言った。
「それまでは他社のメーカーのものを使っていました。ぼくは柔らかい革のグラブが好きなのですが、柔らかいと使っていくうちにどんどんへたっていって、ただ柔らかいだけの形の崩れた、打球に負けやすいグラブになってしまうのが悩みでした。でもミズノさんのグラブは使い込んで柔らかくなっても形が崩れにくいんです。以来、ミズノのグラブ一辺倒です」
2013年以来、遊撃手として3年連続でリーグ最高守備率を記録。打撃面においても2014年にシーズン153安打、打率.287をマークするなどパ・リーグを代表する内野手への階段を着実に上っているプロ5年目の26歳だ。そんな鈴木 大地のグラブおよびバットへのこだわりとはどのようなものなのだろうか。まずは守備の達人が語るグラブ論に耳を傾けてみよう。
求めたい柔らかさと硬さの共存鈴木 大地選手(千葉ロッテマリーンズ)のグラブ
先ほども申しましたように自分は柔らかいグラブが好きなのですが、ある部分に関してはしっかりとした硬さがほしいんです。具体的には親指と小指の付け根の部分、そして人差し指の芯の部分の3か所。この3か所にしっかりとした硬さがあると、長期間使い込んでもグラブの型が崩れにくくなるのですが、ミズノのグラブはこのポイントをしっかりと押さえています。
1シーズンに消費する試合用グラブは平均1個。キャンプの時に何個かグラブを用意していただき、そのシーズンに使用する試合用のグラブを決めていきます。ぼくの手元に届いた段階ですぐにノックで使える柔らかさに仕上げていただいているので、最初の時点で相当柔らかいグラブなのですが、最低でも1年、時には2シーズンにわたって使用しても型が崩れない。気に入ったグラブを試合で長く使えるので心強いです。
[page_break:ウェブの好みは終始一貫 / 好みの材質はメープル]現在の技術に見合ったグラブが必要鈴木 大地選手(千葉ロッテマリーンズ)
ぼくのグラブを見た人からはよく「捕れる場所が広そうなグラブだな」と言われますが、普通の人のグラブよりは捕れる範囲が広いグラブだと思います。捕球ポケットの個数が多いというよりは、1個の巨大なポケットがあるという表現が近いかもしれません。ぼくはグラブを握らずに捕球する「当て捕り」が上手ではないので、捕れる範囲を広くしておいて、アバウトな感覚でもグラブにボールが入ってくれる感覚がほしいんです。それに試合の打球はノックとは異なり、不規則な打球が多い。捕球範囲が広いほうが安心感も生まれるし、結果、エラーも減ると思う。
すぐにボールの握り替えができるように、人差し指、中指の付け根あたりで捕りたいという願望はあるんです。理想はやはりそこの1か所しか汚れないようなハンドリング技術ですから。でも今の自分にはそういう実力が身についていない。捕球範囲の広いグラブに助けてもらう必要があるのが現状です。
グラブは深めに作ってもらってます。当て捕りをする上では、深めのグラブは不利なのですが、苦手な当て捕りに固執するよりも、今はしっかりと握って捕ることを優先しています。
ウェブの好みは終始一貫ウェブに関しては宮本 慎也さん(元ヤクルト・2015年インタビュー【前編】 【後編】)や石井 琢朗さん(元横浜ほか)といった守備の名手たちが使っていたことで知られる、この形(写真参照)のウェブが好きで、中学生時代から愛用しています。十字型のクロスウェブを使用した時期もあったのですが、やはりこのウェブが使っていて一番しっくりくることに気づき、戻しました。グラブの土手の上の部分のヒモは抜いた状態が好きですね。ヒモがないことで土手の部分が柔らかくなり、操作性が上がる感覚が芽生えるので、抜いた状態でいつも作っていただいています。
日常の手入れは汚れを落とす程度ですが、オイルを使用した手入れも定期的に行うようにしています。
ミズノのグラブは年々軽量化が進んでいますし、立ち止まることなく性能が進化している点がすごい。自分はもはやミズノのグラブしか考えられないですね。
[page_break:好みの材質はメープル / バットを巧みに使い分けたい]好みの材質はメープルバットの材質はメープルを愛用しています。自分はバットをしならせて打つタイプではなく、ボールにガツンとぶつけていくタイプの打者なので、硬くてはじきのいいメープルのほうが合っている感覚があります。
2015年はしなりのあるホワイトアッシュを試験的に使用した時期があったのですが、ホワイトアッシュは、メイプルに比べ、耐久性が低く、バット表面がはがれてくるのが早いことがある。仮に気に入ったバットが見つかっても長く付き合えないので、やはり耐久性があって、一本のバットと長く付き合えるメープルのほうがいいなとあらためて実感した年でもありました。2016年はメープル一本でいこうと決めています。
バットを巧みに使い分けたい鈴木 大地選手(千葉ロッテマリーンズ)
2015年に使っていたバットは長さが33.5インチ、重さが870〜880グラムのミドルバランスのタイプ。球界では軽い部類のバットですが、プロに入ったころは33インチ、850〜860グラムという、もっと軽い、おもちゃみたいなバットを使っていました。これではプロの球威に対応しきれないと感じ、少し長く、そして重くしました。ぼくはバットを短く持つタイプなので、短く持った時にしっくりとくる感覚を重要視しています。
2015年は新しい試みとしてグリップが少し太いタイカッブタイプのバットとスタンダードなグリップの2種類を使い分けながらシーズンを戦いました。使い分ける基準ははっきりとは設けていません。ピッチャーの球が速ければグリップの太いタイプを使ったり、変化球が多い投手に対してはヘッドがききやすいスタンダードタイプのものを選んだり。あとはその時の体のキレの状態なども加味しながら、自分の感覚に任せたざっくりした基準で使うバットをその都度決めていました。
2016年はこの2本に加え、33インチのバットを作ってもらおうと考えています。この短めのバットを目いっぱい長く持って、しっかりと振りきる打席を増やしていくのが狙いです。まだミズノさんのバット工場に行ったことがないので、近いうちにぜひ足を運んで、職人さんの方と直で話をしてみたいと思っています。
「立ち止まることなく、常に修正を重ねながら、進化を遂げている点がミズノさんの凄いところ。ほかのメーカーさんがどうとかではなく、ミズノさんが凄すぎると思ってます」
インタビューの終わり際にしみじみとそう語った鈴木 大地。目の前のテーブルに置かれていたグラブをあらためて手に取り、続けた。「要望を出した点をすぐに改善してしまうところにいつも驚かされます。選手が担当者に伝えた言葉が的確に工場の職人さんのもとへ届けられているのでしょうし、会社としてのヒアリング体制がしっかりしているのだと思います。いつも迅速な対応をしていただいているので、こちらもいいプレー、いい成績でお返ししなくては、という責任感が芽生えます」
全幅の信頼を寄せる道具とともに躍動する鈴木 大地の2016年に要注目だ。
(取材・写真:服部 健太郎)
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