世界最大規模のバナナ輸送専用冷蔵コンテナ船団を「ドール」が自社で所有しているわけとは?
By Nik Stanbridge
果物や野菜の生産・販売を世界規模で展開しているアメリカの多国籍企業「ドール・フード・カンパニー」は、自社でコンテナ船やコンテナ設備を管理しています。バナナやパイナップルで有名なドールが、なぜ輸送専門業者に匹敵する規模の設備を所有しているのかが考察されています。
Why Should Dole Own Container Ships? | Flexport
https://www.flexport.com/blog/why-dole-owns-container-ships/
ドールのロゴがデザインされたコンテナが積み込まれたコンテナ船は、毎週月曜日・火曜日にサンディエゴ港を訪れます。アメリカの輸入業者の中で、1番目〜4番目をウォルマート、ターゲット、ホームデポ、ロウズが押さえており、ドールは5番目に当たります。しかし、トップクラスの輸入業者の中でも、自社で輸送設備を所有しているのはドールのみであり、その他の企業は貨物の輸送をCMA CGM、エバーグリーンといった外部業者に依存しています。
By bambe1964
運んでいる貨物はほとんどが果物で、ペルー、グアテマラ、エクアドル、コスタリカの港から仕入れたバナナやその他果物は、サンディエゴ港、フロリダ州・エバーグレイズ港、ミシシッピ州・ガルフポート、テキサス州・フリーポートに運び込まれます。サンディエゴ港には、バナナが100本入った箱を1000箱搭載できる40フィートコンテナを、約800個保管することができます。サンディエゴだけで20億本のバナナと1600万個のパイナップルを送り出しており、今やドールは世界最大のバナナ供給業者になっています。
By Port of San Diego
自社で輸送船を保有するドールにとって、船を港に停泊させておくことはいわば「無駄な時間」のため、可能な限りバナナを積載して輸送に使うことが重要です。もしバナナが季節性のある作物で、年に数回しか収穫されないとしたら、ドールにとって輸送船を保有することは得策ではありません。しかし、バナナは年間を通じて生産されるため、ドールには自前で輸送船を保有するだけのメリットが生まれるというわけです。以下のグラフは世界中の業者のバナナ取引量を月ごとにグラフで表わしたもので、ほぼ年間を通じてバナナの収穫が行われているのがわかります。
また、多くの海運業者にとって、アメリカと南米という結ぶサンディエゴ〜エクアドル間の比較的近距離な路線は、収益性の面であまり注力すべき路線とはみなされません。そのため、この路線の港湾設備にはあまり多くのお金が投資されることはなく、ドールは複合的な輸送・輸入プロセスに必要なサービスを受けることができません。また、出荷地の国の港湾設備にも、最新鋭と言える設備が整っていないことも事実。そのため、ドールはおのずと果物の品質を保つための「自社船団」を必要としたわけです。
さらに、ドールのコンテナ船にはコンテナの積み卸しを行うガントリークレーンが内蔵されているため、港の設備が不十分だったとしても貨物の積み卸しに影響しません。自前でクレーンまで搭載しているため、通常の貨物船よりも効率的に港を回ることができるとのこと。なお、ドールのライバル企業であるチキータも同様に自社船団を所有していたのですが、財政難により2007年に最後の12隻を2億2700万ドル(約270億円)で売却済み。現在チキータは製品の輸送をチャーター船で行っているとのことです。