チェルシーのベテランMF フランク・ランパードが、今季限りでクラブを退団することが決定した。以前にもお伝えしたとおり、ランパード本人は残留を心から望んでおり、彼を崇拝するサポーターらもオーナーのロマン・アブラモヴィッチにランパードの契約延長を要求していたのだが、オーナーが目論むチーム若返りの方針を覆すことは叶わなかった。他クラブとの移籍交渉を認められた34歳のランパードの移籍先最有力候補に挙がっているのが、マンチェスター・ユナイテッドである。

アレックス・ファーガソン監督がランパード獲得へ向けて本腰を入れるのにはワケがある。

今季限りで“2度目の引退”をすると噂される38歳ポール・スコールズ。在籍6年目ながらイマイチパッとしないブラジル人MFアンデルソン。病気で長期離脱していたダレン・フレッチャーも復帰後起用されたのはわずか7試合と体調万全とは言い難く、指揮官は中盤のテコ入れを図っている。23歳の若手トム・クレヴァリーは一気に知名度を上げた有望株だが、試合毎のパフォーマンスにムラがあるのが課題となっている。ランパードならばクレヴァリーの良き助言者となれる、とファーガソン監督は目論んでいるに違いない。

実は昨年1月もユナイテッドには獲得のチャンスがあったが、チェルシーに支払う移籍金とランパードが高給取りなのがネックとなり移籍話が流れた経緯がある。だが、今回はフリートランスファーなのでユナイテッドの懐に優しくおいしい話なのだ。今夏35歳になるランパードだが、今季の活躍ぶりを見れば彼のパフォーマンスが今なお最高レベルにあることを裏付けており、来年も同様の活躍は見込めるだろう。

ファーガソン監督は、若手の可能性よりもベテラン選手の経験値を重んじる傾向がある。ローラン・ブランやエドウィン・ファン・デルサルら経験豊富で安定感のある選手たちを当時のチームに補充した過去の裏付けから、長年ランパードの才能を高く評価してきたファーガソン監督は今度こそ獲得に本腰を入れるはずだ。もちろんランパードを狙うライバルは存在する。デイヴィッド・ベッカムの後任を探しているLAギャラクシーを筆頭に、アーセナルもランパードに興味を示している。経験豊富なイングランド代表MF獲得を巡る熾烈な戦いの火蓋は切られたばかりだ。