男性保育士の入れ墨恫喝事件に端を発し、大阪市が全市職員に実施した入れ墨の有無を尋ねる記名式アンケート。その結果は、衝撃的なものだった。
 なんと110人の職員が「入れ墨有り」と回答。しかも、その7割を占めた環境局の職員の約半数が、入れ墨を入れたのが大阪市に採用されてからというのだから、何をか言わんやだ。
 「今回、大阪市が発表した入れ墨職員の数は、あくまでアンケートに応えた職員を対象としてのもの。もし全職員を対象にしたアンケートだった場合、その数はさらに増えると思われます」(政治部記者)

 アンケートの指揮をとった橋下徹市長はカンカンだ。記者会見では、職員の入れ墨は「原則的に消してもらう」と語った上で、「法的にいろいろ考えれば、人事配置で対処しなければいけない」と配置転換の可能性を示唆。さらに「入れ墨をやりたいなら、個性を全面的に表現できるような民間企業に行けばいい」と、お得意の民間差別とも取られかねない発言で怒りを露わにした。

 しかし、入れ墨といっても、極道が背負う龍や般若のような本格的なものから、素人がおしゃれ感覚で入れるファッション・タトゥーまで、その形はさまざま。ある市役所OBは、
 「特に若い者の中には軽い気持ちでタトゥーを入れているのもいる。そのコらは『元茶髪の橋下さんやったらわかってくれる』という軽い気持ちで回答したみたいですね」
 と話す。しかし市長は許さない。記者からの質問がファッション・タトゥーに及ぶと、レディー・ガガやジョニー・デップを引き合いに出し、「ファッションだから許せという見解には全くくみしない」と言い切った。

 それにしても、ここまで橋下市長が入れ墨にこだわる理由は何か。「公務員の綱紀粛正」は毎度のことだが、それ以外にも理由がありそうな気がしてならない。この点に関して、ある大阪市の関係者は言う。
 「入れ墨職員は、現業系の職場に多いというコトですが、それと橋下さんの入れ墨攻撃は無関係ではありません。これはあくまでも推測ですが、ついこの間までまかり通っていた縁故採用。それが一番多かったのが現業で、そういうところに顔が利く外部の人間は、橋下市長にとっても改革の対象のはず。私は、現業関係に顔が利く人間が『昔は悪さをしてたヤツやけど、今はマジメにやってる。そやから押し込んだってくれ』とか言う交渉の場を、何回か目の前で見たことがあります。橋下市長は、大阪市に以前から続く、そういう繋がりや癒着を一掃したいのでしょう」

 もし、そうであるならば、市にとっては、それはそれで喜ばしいことのような気がするのだが、前出関係者はさらに続ける。
 「入れ墨だけでは不公平。やるならやるで、徹底的にやらなければ意味がない。クスリや、わいせつ事犯の逮捕歴まで、全部調べるべきですよ」