トーゴ戦で幕を閉じた10月シリーズは、南アフリカW杯へ向けた岡田監督の構想を映し出していただろう。指揮官のなかですでに人選の固まっているポジションと、引き続き検討を必要とするポジションがはっきりとしてきた。

特徴的なのは右サイドバックだっただろう。香港戦では駒野、スコットランド戦では内田、トーゴ戦では徳永と、試合によってスタメンが変わったのだ。

内田、長谷部、中村俊による右サイドのトライアングルは、アジア予選を通じて関係性を深めてきたブロックである。所属クラブでのパフォーマンスが落ちているとはいえ、これまで重用してきた内田のポジションを再考の対象としたのは、ときにドラスティックな判断を下す岡田監督らしい。内田にさらなる成長を促すための、刺激剤としての意味合いも含まれていたのだろうが……。

ドイツW杯に出場した駒野は両サイドでプレーでき、徳永はセンターバックにも対応する。世界仕様のフィジカルでは、徳永、駒野、内田という序列になる。内田で当確と思われてきた右サイドバックは、残り8か月の段階でホットゾーンのひとつとなった。

個人的には、こんなオプションを提案したい。長谷部の右サイドバックである。

サイドバックとしての資質は申し分ない。攻守の切り替えの速さは抜群で、ボールをゲインできる推進力がある。トーゴ戦で岡崎の3点目をアシストしたように、クロスの精度も高い。1対1での粘り強さもある。運動量の多さは、言うまでもないだろう。長谷部を右サイドバックへ下げ、遠藤を右ボランチへ置けば、中村俊を中心としたトライアングルがチームの強みとなるのは変わらない。

長谷部の影響力を右サイドに限定するのが、ひどく贅沢なのは分かっている。もったいないと思う。ただ、遠藤のパートナーとなるボランチがしっかりしていれば、長谷部を最終ラインへ下げるという選択も現実味を増す。
 
スコットランド戦でゲームキャプテンを務めた稲本は、久しぶりに躍動感のあるプレーを見せた。本田圭や石川を迎えて人材が過剰気味の攻撃的なタレントを生かすために、中村憲を本来のボランチに戻してもいい。

長谷部を右サイドへ下げることで、選手起用にこれだけの拡がりが生まれるのだ。試合途中からのオプションとして検討する余地は十分にあるというのが、個人的な意見である。

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖