平成30年間でいったい何が変わったのでしょうか(写真:LewisTsePuiLung/iStock)

平成もあと数カ月で終わろうとしています。平成の30年間とは、いったいどんな時代だったのでしょうか? 今回は、平成の30年間の人口や婚姻などの各種データを振り返り、平成という時代について考えてみたいと思います。


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よく「失われた30年」と言われますが、平成とは「あらゆるものが失われた時代」と呼べるかもしれません。とくに、未婚化の急激な上昇、つまり「夫婦が失われた時代」ということです。

50歳時点での平均未婚率を示す生涯未婚率が、2015年の国勢調査で男性23.4%、女性14.1%と過去最高記録となったことはご存じかと思います。が、30年前までの日本はほぼ全員が結婚する皆婚社会でした。1985年時点の国勢調査を見ると、生涯未婚率は男女とも5%にも達していません(男性3.9%、女性4.3%)。平成以降の30年間で男性は6倍、女性も約3倍に増えました。

未婚化、晩婚化が進んだ

未婚率の上昇を男女年代別に比較したグラフを見ていただきたいのですが、男性の場合は30〜40代、女性の場合は20〜30代の未婚率が最も増えました。アラフォー男性とアラサー女性が全体の未婚率を押し上げています。これは、未婚化だけではなく、男女ともに進んだ晩婚化の影響もあります。平均初婚年齢はこの30年間で男性2歳、女性は3歳も上昇しました。


増えたのは未婚人口だけではありません。国勢調査に基づき、15歳以上の男女未婚人口と独身人口(離別・死別によって独身に戻った人も含む)の30年間での比較をしたものが以下のグラフです。


未婚人口は男女合わせて500万人も増えていますが、それ以上に独身人口は1000万人以上も増えています。つまり、未婚者数の増加以上に、離別・死別によってソロに戻った独身者も増えているということです。

未婚率上昇はいつまで続くのか

国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計によれば、生涯未婚率は今後も上昇し、2035年には男性3割、女性2割に達する見込みですが、実は未婚率の上昇はそこが頭打ちになると予測されています。むしろ、その後も増加が止まらないのが、この離別死別によるソロの増加です。

男女人口差についても、いびつな構造になっています。2015年時点での年齢別男女の人口差を表したグラフを見ると一目瞭然です。未婚男女差は20〜50代を中心として男が341万人も多い「男余り構造」であるのに対して、独身男女差は60歳以上の高齢者を中心として、765万人も女が多い「女余り構造」になっています。日本の独身は、未婚男と死別女で占められているのです。


そして、平成とは「家族が失われた時代」でもあります。1985年の国勢調査時点、世帯の中心は、「夫婦と子」からなる核家族で、その構成比は40%ありました。しかし、2015年には27%まで激減。代わりにトップに立ったのは、単身世帯で約790万世帯から1842万世帯へと約2.3倍に膨れ上がりました。

単身世帯の占める構成比もこの30年で21%から35%へと増加しています。この傾向はますます加速し、2040年には4割がソロ世帯となると推計されています。未婚人口が増えるに伴い、未婚の有業人口(収入を得ることを目的に仕事をしている人)も増えました。

就業構造基本調査の1987年と2017年の30年比較をすると、15歳以上の未婚男性の有業人口は、約807万人から約1106万人へと約1.4倍に増えました、同様に、未婚女性の有業人口も、570万人から833万人へと、約1.5倍増です。

未婚男女が経済的に自立した

未婚男女がそれぞれ経済的自立をしたことで、「結婚することでの経済的恩恵を得る必要がなくなった」とも言えますが、反対に、「働けど働けど給料があがらず、いつまでも結婚や子育てが可能な収入にならないから結婚できない」という解釈もできます。

平成になってから顕著なのは、婚姻数の減少と離婚数の増加です。単年比較ではなく、平成(確定統計のある1989〜2017年の29年間)と昭和後半の30年(1959〜1988年)の期間あたり年間平均値を比較したグラフがこちらです。昭和と平成の大きな違いがよくわかると思います。


昭和と比べて平成とは、「結婚が失われた時代」でした。年間16万組も婚姻が減り、11万組も離婚が増えています。直近の傾向でも、婚姻の絶対数が減少傾向にあるのに対し、離婚の絶対数はほぼ同様に推移しています。結婚しても離婚してソロに戻る夫婦がいかに多いかがわかります。

さらに、平成とは「命が失われた時代」とも言えます。出生数は年間平均56万人も減りましたが、平成元年の合計特殊出生率は、戦後最低といわれて大きな社会問題となった「1.57ショック」の年です。それ以降、30年続いて出生率は低下傾向にあります。反面、年間平均34万人も死亡者が増えました。

『「少子高齢化で社会が破綻」は大いなる誤解だ』の記事にも書いたように、日本はこれから「多死社会」へと突入します。2023年から約50年連続で、年間150万人以上が死んでいくと推計されています。この年間死亡者数は、太平洋戦争時の年間死亡者数よりも多いです。

戦争もしていないのに、戦争中と同等の人が死ぬ国に、日本はなります。死亡者の大部分を占めるのが既婚高齢者であり、結果、死別による独身者が毎年増え続けていくことになるわけです。

非正規が増えると婚姻数が減る

そして、何より注目すべきは、年間当たり平均154万人もの完全失業者が増えたことです。平成は、まさに「仕事が失われた時代」だったのです。私は、「結婚は経済」であると考えていますが、失業者をこれだけ増大させた経済環境の悪化が、結婚やその先にある子育てに踏ん切れない状況をつくり上げたことは否定できません。

平成で激減したのは初婚同士の婚姻で、約2割減です。若者同士の結婚が減っています。婚姻率と男の非正規社員数の推移の相関を見ると、驚くべきことに相関係数はマイナス0.866と、強い負の相関が認められました。

つまり、非正規が増えれば増えるほど婚姻数が減っているのです。とくに、2001年以降は雪崩式に急降下しています。非正規雇用男性が約100万人増えるごとに、婚姻数が約3万組減るという計算になります。もちろん、非婚化は、非正規男性の増加だけが要因ではありませんが、「男が草食化したからだ」という抽象的な要因より確かなものと言えるでしょう。


高度経済成長期とは、「今日より明日はきっとよくなる」「今年より来年は給料が上がる」とみんなが信じられた時代でした。もっと言えば、10年後の自分の未来予想図が描けた時代でもあったわけです。結婚や出産を後押ししたのは、そうした未来への安心感だったでしょう。

決して昭和がよかったという話をするつもりはありません。しかし、人間とは環境に支配される生き物ですから、平成に入ってからの急激な未婚化、少子化というものは、そうした経済的不安の影響が大きかったと考えられます。平成とは、そうした「安心が失われた時代」だったと言えるでしょう。