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キセ、ばっかもぉぉぉぉぉん!

僕は心底落胆しています。第72代横綱を自称する男・稀勢の里の体たらくについてです。大相撲初場所五日目、稀勢の里は嘉風に吹っ飛ばされ、土俵下へゴロンゴロンしました。横綱が五日目までに4敗するのは1953年春場所の千代ノ山以来53年ぶりとのこと。まったくもって弱い。

しかし、僕は弱いことに落胆しているのではありません。この大相撲の未曾有の危機にあって、ようやくキセに出番がまわってきたというのに、あろうことか六日目から休場を決め込んだというではありませんか。何故この類稀なるチャンスを活かさず、土俵から逃げ出してしまったのか。僕はその姿勢に落胆し、嘆いています。

歪んでいるようですが、僕はちょっと嬉しかったのです。

正直、この数か月寂しかった。あれほど大相撲が世間をにぎわせているのに、土俵を背負って立つべき輩が図体はデカイくせに、何の話題にもならず、何の主導的立場にもならず、何の注目も集めない空気のような存在であったことが。それが「●年ぶり」という歴史に名を残す活躍で、ようやく衆目を集め始めた。一年越しに「やっぱ横綱にすんの早かったんじゃね?」という相撲警察(※相撲は特に好きでも何でもないけれど相撲の不祥事には関心がある)の登場をうながす活躍に頬も緩んでいたところだったのです。ようやくキセが話題の中心になってきたな、と。

それが休場だとは。1日前は出場を明言したのに、翌日には「やっぱ休みます」と言い出すみっともなさも含めて、非常に嘆かわしい。せっかく「●年ぶり」の珍事を演出したのですから、このまま突っ走らなくてどうするのかと。皆勤負け越しというひとつのステータスは当然として、年6場所十五日制が定着して以来初となる「皆勤十敗」という大台を目指すチャンスだったのに。相撲の歴史に名を残すチャンスだったのに!

↓鶴竜にさえ冷ややかな目で見られる弱さ!2場所連続の3日連続金星配給も「87年ぶり」の珍事だそうです!

リキシのレキシに残る大活躍!

「自動金星配給機」というあだ名も板についてきた!

↓押し込みながら簡単にひっくり返され、土俵下に落とされる横綱!


皆勤すれば間違いなく十敗できた!

逃げるにしても白鵬に先を越されるあたり、勝負勘がまるでない!



何も嫌味で言っているのではなく、これは稀勢の里にとって大きなチャンスです。すでに年齢も31歳となり、今年は32歳となります。ここから10回も優勝を重ねて大横綱と呼ばれるようなことはないでしょう。どこまで言っても「小横綱」というのが関の山。大相撲の歴史に埋もれる「いたなぁ」レベルの力士としてキャリアを終えることは、まず間違いないところです。

しかし、今この弱さと、日馬富士の引退、白鵬の不人気、鶴竜への不信感、若手の成長いまだ物足りずという状況が逆のチャンスを生んでいます。5場所連続休場という状況は、嫌われ者なら横綱審議委員会から引退勧告のひとつやふたつは飛んでくる頃なのにもかかわらず、引きつづき来場所も当然出るものとして扱われている。負けても出られる、いっぱい負けられる。

このビッグチャンスを活かし、史上最弱横綱として歴史にその名を刻し、永く不名誉を讃えられてこそ僕の愛する力士です。「史上最強横綱」議論の大本命に白鵬が登場し、「史上最弱横綱」議論の大本命に稀勢の里が登場する、そんな時代を好角家として過ごすことができたら、それはまさしく誉れであります。(※貴乃花のモノマネで)

大乃国、若乃花(チャンコダイニング)らをぶっちぎって、史上最弱横綱となるにはどうすればいいのか。今こそ真剣に考えていこうではありませんか。そして、未来永劫相撲トークに名前が出てくるポジションをチャンコダイニングから奪い取っていこうではありませんか!

↓史上最弱横綱議論で勝つ(勝つ?)ために達成したい条件!


●最低でも負け越し、できれば十敗
「最弱」議論を考えたときに、負け越しを達成しているか否かという点は外せません。大乃国とチャンコダイニングが史上最弱横綱議論で真っ先に出てくるのは、皆勤負け越しを達成しているからにほかなりません。「ほかの連中は負け越す前に休んでいるだけ」という現実よりも、印象のほうが重要である。最低でも負け越し、できれば史上初の十敗横綱として「印象」をガッチリとつかんでいきましょう。

なお、皆勤負け越しという点をほじくり出すと、十五日制定着以前の記録ではあるものの、皆勤負け越しを三度達成した宮城山が出張ってくることは間違いありません。そこをねじ伏せていくためにも、ただの負け越し以上に印象は残したいもの。「3場所33敗(皆勤)」ラインを究極の目標として、質・量ともに高めて(高めて?)いきたいところです。


●優勝はこれ以上してはいけない

優勝2回というのは、多くはありませんが少なくもありません。第60代・双羽黒の優勝ゼロ回を筆頭に、優勝1回という横綱もいますし、「横綱としての優勝がない横綱」もいます。一方で大坂相撲では優勝相当の記録を6回残しつつも、東京相撲との合併興行では成績を残せず、「実質的には三役以下」と評された28代横綱・大錦がこの手の議論で槍玉に上がることが少ないのは優勝回数によるところでしょう。これ以上優勝を重ねると、優勝回数の時点で最弱議論から外されかねません。

1958年の年6場所制定着以降の横綱では、双羽黒(ゼロ回)、大乃国(2回)が優勝回数の少なさで挙げられるところですので、稀勢の里もガッチリと優勝2回を堅持していきたいところ。年6場所制定着以降では若乃花(三代目チャンコソウルブラザーズ)も横綱としての優勝がない稀有な例ですが、その点については「稀勢の里の2回目の優勝は、横綱昇進の基準(2場所連続優勝)を満たしていないからノーカン」と主張することで、互角の議論には持ち込めるものと思っております。

●短命を主張するなら来場所いっぱいがリミット
「短命」は必ずしも弱さを議論する材料ではありませんが、補強するひとつの要素にはなるでしょう。年6場所制定着以降では、三重ノ海(8場所)、琴櫻(実質8場所/番付に載った回数で言えば9場所)、双羽黒(実質8場所/番付に載った回数で言えば9場所)が短命横綱となりますが、稀勢の里はすでに在位6場所を数えています。

短命を弱さの根拠とするならば、来場所いっぱいでの引退によって年6場所制での史上最短命となる「在位7場所」を確保したいところ。結構忙しい感じですし、辞めると言っても止められそうな気もしますが、それぐらいのスピード感でいかないと「史上最」の称号は得られないのです。


●横綱成績はまだ高すぎるので、来場所の大負けは必須

勝率というのもまた最弱議論では重視される要素でしょう。ただ、これについてはどこからどこまでの勝率を取るかという点で意見がわかれそうです。通算なのか、幕内通算なのか、あるいは横綱通算なのか。幕内通算で言えば三重ノ海は勝率.568と低い数値を出していますが、それは昇進に時間がかかったということであり、横綱としての成績では55勝23敗30休と勝率.705を記録しています。「大器晩成」を主張されることを考えると、幕内通算成績での議論は難しいでしょう。

横綱成績をとるとした場合、第39代横綱・前田山は横綱成績が際立って低く、横綱成績24勝27敗25休(勝率.471)は史上唯一の横綱勝率5割以下という記録。在位6場所(年4場所制度時代)、優勝1回(大関時代)、横綱最高成績9勝6敗と総合的に隙がなく、「場所中に野球を見に行ってめっちゃ怒られる」など品格の面でもいいエピソードを持っています。

ここまでの稀勢の里の横綱成績は26勝22敗33休(※今場所で42休となる見込み)ですので、勝率はまだ5割を軽く超えている段階。ここから前田山の下に入っていくには、このまま負けっぱなしになったとしてもあと8敗が必要です。「もはや1勝も許されない」という土俵際(※外側の際)にあるのが稀勢の里の横綱成績なのです。

これはなかなかハードルが高い!(高い?)

来場所は勝負の場所となりそうです!



【結論】来場所8連敗での引退なら史上最弱横綱の筆頭格(筆頭?)に登場!

上記の検討を重ねるなかで、総合的に「史上最弱横綱」の評価を固めていくには、来場所での大負けによる引退がもっとも手堅い道と言えそうです。来場所大負けでの引退となれば史上最短命、史上最低の横綱成績を確保し、優勝回数でも最低クラスに位置どれるでしょう。平成二十九年春場所を「実質横綱に上がっていない段階」とみなすことで「横綱として無勝ち越し」という強硬な主張さえ可能になるかもしれません。

前田山の横綱最低成績を下回るためには、皆勤であった場合は「3勝12敗」がリミット。ただ、負け越しが決まった段階で休場せざるを得なくなる(※休場を決意するまでビール瓶とデンモクでの力強い説得がつづく)ことを考えると、初日からの8連敗しか前田山の下に入る道筋はありません。

優勝2回、横綱在位7場所、皆勤せずに負け越し達成、横綱成績史上最低(26勝30敗42休/勝率.464)、実質的に横綱として無勝ち越し……ここまでやればようやく「史上最弱横綱」とみなさんに広く認めていただけるのではないでしょうか。

史上最弱へのカウントダウンが進むなか、「立ち合いでのかち上げ、張り差し、変化を許容する」「いっそ高安をデンモクで殴って不祥事で引退すべき」「高安に数回のキスを強要して不祥事で引退すべき」といった擁護派からの声が真剣に上がり始め、国民的な議論へと広がっていく。もはやデンモクも白鵬もどうでもよくなる。そんな稀勢の里を来場所こそ見せてほしい。僕は強く願うものなのであります。



強いほうの1番も難しいけれど、弱いほうの1番も結構難しい!