第10回高校生直木賞候補作窪美澄『夜に星を放つ』(文藝春秋) 体を信じる物語 本というのは不思議なもので、ただの文字の羅列でしかないのに、読んでいるうちに、自分の体が痛みに近い感覚を持ったり(もちろん実際には感じないのだけれど、その直前までいくような感覚がある)、鼻先に香りが漂ったり、何かに指が触れたときの感触が再現されることがしばしばある。また、それを非常にうまく描く作家というのがいる。 視