懸命に伸ばしたラケットの先を、黄色いボールがかすめていった──。歓喜の涙にくれる優勝者を視界の先に捉え、小田凱人は吸い込んだ息を大きく吐き出す。敗戦の事実を、彼は過不足なく受け止めているようだった。「力は、出しきった。もちろん悔しいけれど、悔いはないです」全豪オープン車いす部門・決勝戦、対アルフィー・ヒューエット(イギリス)戦。その試合後の会見で、彼はきっぱりそう言った。小田凱人は16歳で全豪