「昼顔」最終回レビュー「夫がいるくせに畑を荒らさないでください。男の数は限られてますから」
いや、びっくりシーンの連続でした。
連続ドラマ「昼顔〜平日午後3時の恋人たち」(フジテレビ木曜22時〜)の15分拡大の最終回(9月25日放送)。
開始10分ほどで、紗和(上戸彩)と北野(斎藤工)の潜む山荘に、夫、妻、舅と姑が乗り込んできてのド修羅。派手に盛り上げてくれました。
その後も、ド修羅に次ぐド修羅の連続で、酒瓶片手にベランダから狂言自殺しようとする乃里子(伊藤歩、妊娠も虚言だったらしい)、加藤(北村一輝)を「死んじゃえ!」となじる利佳子(吉瀬美智子)の娘たち、加藤の盗作事件を知って怒鳴り込んだ挙げ句、彼の右手を使いものにならなくしてしまう利佳子の元彼・智也(淵上泰史)などなど、紗和と北野、利佳子と加藤による不倫男女のとろけるような肉体的接触よりも、彼らを引き裂こうとする夫、妻、姑、元彼、娘などによる男女混合、男対男による暴力的な接触のほうが、全11話中、エキサイティングだったとはいったいどいうことなのでしょうか!?
いや、最も、エキサイティングだったのは、紗和が寂しさを紛らわすために、
コンビニの袋に北野の似顔絵を描き、ポットにかぶせて、さらにはポロシャツを下に敷いていたことです。
そして、紗和と北野が、妻や夫たちによって引き裂かれていくときに、コンビニ袋の似顔絵をもっていくという。いったい、これ、どういう気持ちで見ていいの? と心が大きく揺れました。
悲しいシーンなのに爆笑してしまう。
いったいなぜ、ここへ来て、こんなことを?
「昼顔」にめっちゃハマった人たちへ、これ、ドラマですから! 本気にしないで! という警鐘でしょうか。
でも、これがあったからこそ、「昼顔」は、単なる消費ドラマではなく、ちゃんと作品として記憶に強く残ることになったと思います。
視聴率がいいと、遊びを入れることができるんだなあ。やっぱり、いろんな制約を気にして普通なものを作るよりも、のびのびともの作りをしたほうが面白いものになる気がします(妙に真面目)。
そして、こういうふうに、多少茶化したことで、やっぱり不倫は重罪で、断罪、断罪また断罪ものであるのかもしれないと思わせます。
誰かを傷つけちゃうのですから。
ド修羅の現場で「恥知らずー!」と絶叫!ビンタ連発!で大活躍した姑(高畑淳子)が、「裏切られたことって忘れられないのよ」と夫の不倫を思い出してしんみり言っていました。
このドラマを見ている人たちや、広い世の中には、捨てられた者たちがたくさんいるってことをわかった上での、すばらしい流れです。
乃里子が、絶対離婚しないと言いはり、紗和と北野が今後万が一会ったら、紗和に死ぬまで毎月30万円支払ってもらうと要求するとき、「お金がほしいわけじゃありません。ただ、それ以外に決着をつける方法がないので」と言うのも、裏切られた者の悔しさがよく出ています。彼女がお金もちだから説得力ありました。
あれ、でも、乃里子も不倫経験者だったっけ。
まあ、その件については百歩譲りまして、こんなふうに行き場のない悲しみを抱えた人たちがいる。
紗和は、自分の罪を強く意識して、こんな台詞を言います。
「罪からはじまった恋でした。
私の恋はみんなの笑顔を奪いました。
一番大事なあの人の笑顔も」
愛する人を得たつもりで、一番好きだった人の笑顔を失ってしまった、というのは、かなり鋭い台詞です。
紗和ちゃん、最後に靴ひもも結べるようになっていましたが、本当に本当に成長しました。人として。女として。
紗和ちゃん、ウソもうまくなって、北野と別れるとき、「流行の昼顔妻をやってみたかった」というときの、やさぐれ演技も名演技(上戸彩がすばらしいです)。
そして、最後の最後で、万引きした口紅を返却します。
加藤も「泥棒」でいたくなかったからと、盗作をカミングアウト。そして、ケガしたあとは、
「ひとりの女を不幸にしたと思いながら生きたくない。それでもいいじゃないかと割り切れるほど強くないんだよ。子供だからな」と利佳子を愛しながらも、家に帰すのです。
まじでかっこいいのかもしれないし、結局、かっこつけたいだけなのかもしれません(子供だから)。
このとき、加藤に涙を見せない、利佳子のほうがかっこいい。しかも、最後、また携帯もってニコとしていて、懲りてない?と疑わせる場面もありました。
北野も、最後の最後で行動に出ます。
放送室に鍵をかけて、自分の思いを吐露。
北野が長らく、何もしないで来たことが、最後に生きた瞬間です。
生物の先生らしい長い感動的な台詞が、やさぐれた生徒の心も動かし、紗和を号泣させ、ずっと気になってた男装しているふうな校長先生(りりィ)に「ほんと男はいくつになっても青くさいねえ。やっぱり大人の女がいい」と言わせることで視聴者の疑問を解消します。
このようにして、10話レビューで書いた疑問は、ほぼほぼ回収されました。
井上由美子さん、ベテランの貫禄。
ただ、紗和ちゃんは、自宅マンションに放火。それ、また罪ですから!!!
許されない恋を裁ち切ろうとして、また罪を犯してますから!!!
結局、俊介(鈴木浩介)にかばってもらう。そして、離婚も受け入れてもらうのです。
激しい嵐が過ぎて、みんな、別々の生活に散っていきます。
加藤は、利佳子と別れて、また、昔のような野良猫キャラに戻ってしまいました。
北村一輝による、売れ始めたときの顔と堕ちたときの顔の鮮やかな差も見どころでした(北村一輝は底辺這いずっている演技のほうが色っぽい気がします)。
元妻(高橋かおり)からビールをたくさんめぐんでもらっているときの顔といったら・・・。
で、最後、紗和がひとり旅だっていくときに、北野の乗ったトラックとすれ違います。消防車が来たので、トラックが止まって、ばったり再会? と思わせて、
そのままトラックは走っていき、そのあとに消防車が通り過ぎます。
これは、恋の火消しが終わった、という意味なのでしょうか。
でも、紗和の最後の語りは、
「神様、ごめんなさい。またいつかあなたを怒らせるかもしれません」
なのでした。こわ!
こわいので、最後は、美鈴の台詞で終わらせてほしかった。
「奥様、会社でも不倫しているおばさんいますけど、夫がいるくせに畑を荒らさないでください。男の数は限られてますから」
いや、この台詞、コンビニ袋似顔絵につぐ、11話のヒットでした。
で、「他人の関係」が鳴って、劇終!だったら、最高に笑えたけれど。
ともあれ、濃密な3ヶ月、ああ、楽しかった!
ひとつ気になるのは、戻ってきたハムスターのハムミ。ハムスケとミハムとの三角関係のゆくえです。(木俣冬)
連続ドラマ「昼顔〜平日午後3時の恋人たち」(フジテレビ木曜22時〜)の15分拡大の最終回(9月25日放送)。
開始10分ほどで、紗和(上戸彩)と北野(斎藤工)の潜む山荘に、夫、妻、舅と姑が乗り込んできてのド修羅。派手に盛り上げてくれました。
その後も、ド修羅に次ぐド修羅の連続で、酒瓶片手にベランダから狂言自殺しようとする乃里子(伊藤歩、妊娠も虚言だったらしい)、加藤(北村一輝)を「死んじゃえ!」となじる利佳子(吉瀬美智子)の娘たち、加藤の盗作事件を知って怒鳴り込んだ挙げ句、彼の右手を使いものにならなくしてしまう利佳子の元彼・智也(淵上泰史)などなど、紗和と北野、利佳子と加藤による不倫男女のとろけるような肉体的接触よりも、彼らを引き裂こうとする夫、妻、姑、元彼、娘などによる男女混合、男対男による暴力的な接触のほうが、全11話中、エキサイティングだったとはいったいどいうことなのでしょうか!?
コンビニの袋に北野の似顔絵を描き、ポットにかぶせて、さらにはポロシャツを下に敷いていたことです。
そして、紗和と北野が、妻や夫たちによって引き裂かれていくときに、コンビニ袋の似顔絵をもっていくという。いったい、これ、どういう気持ちで見ていいの? と心が大きく揺れました。
悲しいシーンなのに爆笑してしまう。
いったいなぜ、ここへ来て、こんなことを?
「昼顔」にめっちゃハマった人たちへ、これ、ドラマですから! 本気にしないで! という警鐘でしょうか。
でも、これがあったからこそ、「昼顔」は、単なる消費ドラマではなく、ちゃんと作品として記憶に強く残ることになったと思います。
視聴率がいいと、遊びを入れることができるんだなあ。やっぱり、いろんな制約を気にして普通なものを作るよりも、のびのびともの作りをしたほうが面白いものになる気がします(妙に真面目)。
そして、こういうふうに、多少茶化したことで、やっぱり不倫は重罪で、断罪、断罪また断罪ものであるのかもしれないと思わせます。
誰かを傷つけちゃうのですから。
ド修羅の現場で「恥知らずー!」と絶叫!ビンタ連発!で大活躍した姑(高畑淳子)が、「裏切られたことって忘れられないのよ」と夫の不倫を思い出してしんみり言っていました。
このドラマを見ている人たちや、広い世の中には、捨てられた者たちがたくさんいるってことをわかった上での、すばらしい流れです。
乃里子が、絶対離婚しないと言いはり、紗和と北野が今後万が一会ったら、紗和に死ぬまで毎月30万円支払ってもらうと要求するとき、「お金がほしいわけじゃありません。ただ、それ以外に決着をつける方法がないので」と言うのも、裏切られた者の悔しさがよく出ています。彼女がお金もちだから説得力ありました。
あれ、でも、乃里子も不倫経験者だったっけ。
まあ、その件については百歩譲りまして、こんなふうに行き場のない悲しみを抱えた人たちがいる。
紗和は、自分の罪を強く意識して、こんな台詞を言います。
「罪からはじまった恋でした。
私の恋はみんなの笑顔を奪いました。
一番大事なあの人の笑顔も」
愛する人を得たつもりで、一番好きだった人の笑顔を失ってしまった、というのは、かなり鋭い台詞です。
紗和ちゃん、最後に靴ひもも結べるようになっていましたが、本当に本当に成長しました。人として。女として。
紗和ちゃん、ウソもうまくなって、北野と別れるとき、「流行の昼顔妻をやってみたかった」というときの、やさぐれ演技も名演技(上戸彩がすばらしいです)。
そして、最後の最後で、万引きした口紅を返却します。
加藤も「泥棒」でいたくなかったからと、盗作をカミングアウト。そして、ケガしたあとは、
「ひとりの女を不幸にしたと思いながら生きたくない。それでもいいじゃないかと割り切れるほど強くないんだよ。子供だからな」と利佳子を愛しながらも、家に帰すのです。
まじでかっこいいのかもしれないし、結局、かっこつけたいだけなのかもしれません(子供だから)。
このとき、加藤に涙を見せない、利佳子のほうがかっこいい。しかも、最後、また携帯もってニコとしていて、懲りてない?と疑わせる場面もありました。
北野も、最後の最後で行動に出ます。
放送室に鍵をかけて、自分の思いを吐露。
北野が長らく、何もしないで来たことが、最後に生きた瞬間です。
生物の先生らしい長い感動的な台詞が、やさぐれた生徒の心も動かし、紗和を号泣させ、ずっと気になってた男装しているふうな校長先生(りりィ)に「ほんと男はいくつになっても青くさいねえ。やっぱり大人の女がいい」と言わせることで視聴者の疑問を解消します。
このようにして、10話レビューで書いた疑問は、ほぼほぼ回収されました。
井上由美子さん、ベテランの貫禄。
ただ、紗和ちゃんは、自宅マンションに放火。それ、また罪ですから!!!
許されない恋を裁ち切ろうとして、また罪を犯してますから!!!
結局、俊介(鈴木浩介)にかばってもらう。そして、離婚も受け入れてもらうのです。
激しい嵐が過ぎて、みんな、別々の生活に散っていきます。
加藤は、利佳子と別れて、また、昔のような野良猫キャラに戻ってしまいました。
北村一輝による、売れ始めたときの顔と堕ちたときの顔の鮮やかな差も見どころでした(北村一輝は底辺這いずっている演技のほうが色っぽい気がします)。
元妻(高橋かおり)からビールをたくさんめぐんでもらっているときの顔といったら・・・。
で、最後、紗和がひとり旅だっていくときに、北野の乗ったトラックとすれ違います。消防車が来たので、トラックが止まって、ばったり再会? と思わせて、
そのままトラックは走っていき、そのあとに消防車が通り過ぎます。
これは、恋の火消しが終わった、という意味なのでしょうか。
でも、紗和の最後の語りは、
「神様、ごめんなさい。またいつかあなたを怒らせるかもしれません」
なのでした。こわ!
こわいので、最後は、美鈴の台詞で終わらせてほしかった。
「奥様、会社でも不倫しているおばさんいますけど、夫がいるくせに畑を荒らさないでください。男の数は限られてますから」
いや、この台詞、コンビニ袋似顔絵につぐ、11話のヒットでした。
で、「他人の関係」が鳴って、劇終!だったら、最高に笑えたけれど。
ともあれ、濃密な3ヶ月、ああ、楽しかった!
ひとつ気になるのは、戻ってきたハムスターのハムミ。ハムスケとミハムとの三角関係のゆくえです。(木俣冬)