将棋名人戦を解説しましょう！ 400年記念、羽生対森内の勝負にわくわく
このタイトルの中で一番有名で、かつ特別なもの。それが「名人」です。最も古いタイトルで、最も持ち時間が長く（それぞれ9時間の持ち時間）、2日に渡って戦います。そもそも名人は、1612年に徳川家康が将棋の一番強い人に「名人」という称号を与えたのが始まりです。そう、2012年である今年は、「名人」が生まれて400年なのです！
まず、名人戦の仕組みについて。昔の名人は家元制で、終身名人として一度名人になったらずーっと名人だったのです。それが、1935年から実力名人制に変わりました。つまり、その時々で一番強い人が名人になるのですね。最初の名人戦は2年にわたってリーグ戦が行われ、木村義雄名人が初代実力制名人になりました。以後は名人と名人挑戦者で戦い、勝った方が次の名人になるというわけです。
現在は、順位戦という6月ぐらいから翌年3月までに行われているリーグ戦で、名人挑戦者を決めています。この順位戦はA級、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組の5つのクラスに分かれていて、毎年成績によってクラスが上がったり下がったりします。そしてA級リーグの優勝者がその年の名人への挑戦者になるのです。
今回の第70期の名人戦は、森内名人 vs 羽生善治二冠です。まずは、こちらのニコニコ動画の名人戦PVを見てみてください。どうです？ わくわくしてきませんか？
森内名人と羽生二冠は同い年で小さい頃からのライバルで、さらにはこの10年は2人で名人位を独占しているのです（森内：6期 羽生：4期）。通算で5期獲得すると資格を得られる（名乗れるのは引退後から）永世名人についても、森内名人は第十八世永世名人、羽生二冠は第十九世永世名人になります。
「天才の中の天才の中の天才」羽生二冠は、最近ますます神がかった強さというか、とにかく強いです。何せ、挑戦者を決める今期のA級リーグで全勝しているのですから。史上3人目のA級全勝優勝者として名人戦に挑戦します。ちなみにここで名人位を獲得すると、通算タイトル獲得81期で、歴代単独1位になるそうです（現在は大山康晴十五世名人と並んで歴代1位タイ）。
「名人戦の神に愛された男」森内名人も、名人戦では別人になると言いましょうか。2011年度の最後の方では調子を落として10連敗とかしていて、これは案外あっさりと負けてしまうのかも……と心配していたら、第一戦で見事な勝利を収めていました。さすがすぎます。
ちなみに第六局が始まる6月12日時点での対戦結果はこのようになっています。
第一局 森内（先）○ − 羽生（後）●
第二局 森内（後）● − 羽生（先）○
第三局 森内（先）○ − 羽生（後）●
第四局 森内（後）● − 羽生（先）○
第五局 森内（先）○ − 羽生（後）●
第六局 森内（後） − 羽生（先）
森内名人が3勝し、防衛に王手をかけています。
そして、この結果を良く見ると、見事なまでに先手を取った方が勝っていますね。なんでも羽生二冠は直近での先手を取った時の勝率が8割を超えていて、15連勝中だとか。なので順当に行くと六局目は羽生二冠が勝って、最終の第七局までもつれるのでしょうか。とはいえ、森内名人は本当に名人戦では神がかっているので、このまま決まっちゃうかもしれません。
この熱い戦いをどうやって見ればいいのでしょうか。名人戦はNHKプレミアムでの放映もあるのですが、決められた時間にしか放映されません。ここは完全に生中継で全てを放送するニコニコ動画がオススメです。名人戦チャンネルで確認しましょう。なかなかパソコンで見る時間が無いという人は、iPhoneの日本将棋連盟ライブ中継アプリも、ほぼ1手ごとに解説が書かれますのでオススメです（ただし、30手以上を見る場合は利用権を購入する必要があります）。
ちなみに私、もういてもたってもいられないので、この記事が掲載されるであろう6月12日は北九州まで飛んで見に行ってきます。現地に行かれる方は現地でお会いしましょう。
（杉村 啓）
