OPの走るカット40P！『魔法少女まどか☆マギカ KEY ANIMATION NOTE vol.1』
ちょうど東日本大震災とかぶって、最終回が一月延期になりました。なんだか昨日のことのようで、驚いてしまいます。もう１年かあ……。日本が大きく変わった瞬間にあったこのアニメ、受け手側にしても切り離せない存在として昨年は語られ続けました。
さて、そんな昨今一冊の分厚いムックが発売されました。
その名も『魔法少女まどか☆マギカ KEY ANIMATION NOTE vol.1』
アマゾンで表紙を見ると「えっ、これ……なに？」という非常にシュールなものになっています。冬のコミケでは先行販売で劇団イヌカレー（切り絵やパステル画などを使い特殊な世界観を作る二人組のコンセプトデザインアニメーター）による表紙の限定版が頒布されましたが、今回は画像にあるようなキャラクター表紙のものです。わかりづらいですがシルバーできらきらしています。
問題は「じゃあこの本なんなのか」なんですよ。
ややこしい単語並べてもアレなので一言で言うと、「デジタルデータじゃなくて本で取っておきたくなる本」なんです。コレクターアイテムと言ってもいいかもしれません。
もちろん内容は、今までの「まどか☆マギカ」のあらゆる細かな設定が鈍器のごとき厚さの本にびっちり詰まっていますし、劇団イヌカレー画集は、アニメでは表にでなかった数多くの魔女たちの裏設定を見ることが出来る貴重なものでした。今も入手可能です。
さて。
じゃあ今回の本なんなのよ、というと、原画集です。
実際にTVアニメで使われていた原画をみっちり詰め込んでおり、しかも１Pにつき二枚、上段と下段に並べられています。
ここまで大きな絵で原画見られるのって珍しいんじゃないかしらってくらい贅沢に使われています。でも確かにね、原画ってアニメに興味ある人だったら「どう動きを表現するように描かれているのか」が見たいわけですから、大きいに越したこと無いんです。
お陰様でといいますか……これが一番驚いたんですが。
この本一冊、オープニング「のみ」の原画集です。
本編一切載っていません。オープニングのアニメだけで一冊。百数十ページ、オープニングのカット全て載っています。
圧巻なのはまどかが走るシーン。オープニング見たことある方は思い出してください。そう、つんのめりそうになりながらまどかが必死に走り、画面からはみ出したり戻ってきたりするあの繊細なシーン。
あのカットだけでなんとこの本の４０ページを占めています。
ほんの数秒のカットです。
４０ページも使っている理由は、見れば一発でわかります。
まどかが走るオープニングのシーンは、アニメーターさんが魂を注ぎ込んで作っている重要なシーン。物語の全てが詰まっていると言っていいほどです。
素人目に見ても、まどかが走る体重のバランス、焦りで揺れる体、ズームイン・アウトの切り替え、不安定な足元、表情の変化がこの原画集見るとすごくわかるんです。
原画一枚一枚、同じカットではあっても瞬間ごとに表情が変わります。
アニメを全部見た人なら、このまどかが何を考え、何を思い走っているのかが、大きく印刷された目や力んだ腕に見ることが出来るんです。
あっ手こんなふうに力の動きを伝えていたんだ、目がここでこう傾くことで切なさが出ているんだ、と。
アニメに詳しい人であれば、タイムシートや色指定も面白いはず。作画監督のコメントも必見です。
個人的に好きなのが、裸のまどかとまどかが触れ合うシーンなんですが、ここについてのコメント。
「肌が触れ合った時の感じがよりよく出るように実践ではなく色トレス処理になっています。」
……あかん、気づかなかった。見なおさないと。どおりで柔らかさが出ていたわけだ。
『魔法少女まどか☆マギカ KEY ANIMATION NOTE vol.1』はOPアニメだけですが、vol.2はマミさんが登場して活躍する１から３話、vol.3は４から６話中心のさやか編、vol.4が７から９話の杏子編。
個人的に楽しみなのがvol.5で、これが１０話のほむら編なんですよ！
わかる？！ この昂ぶりわかりますか！？ わかんない？ じゃあまずは１０話見てね！
そしてvol.6は１１・１２話を中心にしたまどか編。クライマックスですね。
とはいっても「全話ガチガチに見ている読者以外はよめないの？」となるとちょっともったいないですよね。
そんなことはないそうです。話しによると制作会社シャフトの意向で、物語がこの本だけで追えるような形でカット収録されているとのこと。マニアだけではなく、全てのユーザーが楽しめる本にしたい、という意向が込められているそうです。
また○○編、といっても当然そのキャラだけが出ているわけではありません。しかしやはり本ごとに特色を出すため、各巻にイメージカラーを設定。さやかなら水色、杏子なら赤、ですね。
想定はすべてミルキィ・イソベ。ステュディオ・パラボリカ制作で、本の装丁はプロダクションノートほどではないですが細かいところで凝っています。
１巻はコミケで劇団イヌカレー版がでましたが、２巻以降はどこで買っても同じく総作画監督谷口淳一郎描きおろしイラストになるとのことなので安心して買えます。アマゾンに上がっている謎模様はダミーですね。
劇団イヌカレーファンのために、原画だけでなく中に描きおろしイラストが収録されます。これは本に折込として収録されるそうで、開いて見ることの出来る大きなイラストになっています。
加えて劇団イヌカレーのデジタル素材も多数収録。具体的に言うと魔女空間のシーンではたくさんの使い魔や、コラージュの背景、うごめく魔女と非常に緻密でカオスな空間が映像になっているのですが、それぞれをバラバラにした状態で収録して見ることが出来るのです。
デジタルでもいいんじゃないの？ と思う方も多いかもしれません。
しかし「大切な作品を紙に残しておきたい」というのがシャフトの意向。それで今回このような分厚くて、一つのカットに何十ページも割くような例のない原画集が出来上がったわけです。
「vol.1」の１０８ページでね、走っているまどかが一瞬目を閉じるんですが、これが原画でいかに丁寧に描かれているか見ただけで、……最終回を知っているだけにもうじわっときてしまって。
決して安い本とは言いません。でも手元に残しておきたいと感じさせる「本」を買う体験、してみません？
（たまごまご）
