オバマとマリオが世界を変える!?『ゲーミフィケーション』
オバマは、「インターネットやソーシャルの力を活用した」というのは、たびたび指摘されたポイントだ。
そのベースとなったオバマを応援するソーシャルサイト「マイバラクオバマ・ドットコム」が、“ゲームとしての入念な仕掛けが施されている”と指摘するのが、井上明人『ゲーミフィケーション ＜ゲーム＞がビジネスを変える』（ＮＨＫ出版）だ。
「マイバラクオバマ・ドットコム」にログインすると、プロフィールページが現れる。画面をみると、“現在のあなたのレベルは★３つで、次のレベルは★４つです。現在のあなたのポイントは何点です、といったステータスが表示されている”。
これは、自分が何をしたか、たとえば献金をしたか、勧誘の電話をかけたか、戸別訪問をしたか、勧誘メールを送ったか、そういったことがデータとして蓄積されて、レベル表示されているのだ。
しかも、最初は、登録や個人情報入力といった簡単なことでレベルアップしていく。難易度の設定もばっちりだ。
まるでゲームである。
熱中しすぎてズルをしようとするプレイヤーも出てくるぐらいに、ハマるゲームとなっていたのだ。
このような、ゲームの考え方や方法論を、ゲーム以外のことに利用することを「ゲーミフィケーション」と呼ぶ。
ランニングをゲーム化する「ナイキプラス」」や、ディズニーの社内表彰制度、スターバックスの紙コップを減らすアイデア、プログラム言語をゲームのように学ぶCodeacademy、企業サイトにバッジやレベルといったゲーム化する仕組みを導入するサービスBadgevilleなどなど。
後半は、ゲーミフィケーションを実践するためのハウツーも登場。どういうふうに着想して、つくりあげて、洗練させるか。
特に印象に残るのは、レベルデザインについての解説だ。
宮本茂がマリオのマップ設計の手法を、こう語る。
「『マリオ』なら、まず地図の大きさを決めてしまって、決めたところにネタを貼ってみてって言うんです。『マリオ』ならひとつのネタがあったら必ずそれを覚える場所、実際遊ぶ場所、応用する場所、極める場所がある」
そして、実際の「スーパーマリオブラザーズ」のマップの中で、「覚える場所」「実際遊ぶ場所」「応用する場所」「極める場所」がどのように形成されているかを本書では紹介し、解説している。
といったふうにゲームのおもしろさがどういった工夫からくるのかの具体的な解説もでてくる。
だから、「ゲーミフィケーションを導入すれば簡単に客との関係が気付けますよ！」「この７つの方法で効率よく！」みたいなクソゲーしかできないだろそれじゃーっつーイカレポンチな啓蒙に堕していない。
ゲーミフィケーションについて、威勢のよいアメリカンドリーム的な解説を読みたい人はジェイン・マクゴニガル『幸せな未来は「ゲーム」が創る』を（退屈で壊れた現実をゲームでよりよく変えていくぜ！って内容です）、もうちょっと冷静な内容を知りたいときは、今回紹介した井上明人『ゲーミフィケーション ＜ゲーム＞がビジネスを変える』をオススメする。
おっと、本日、2012年02月29日(水)、第15回文化庁メディア芸術祭 テーマシンポジウム「ゲームは現実を変えるか」に、著者の井上 明人が出る！ ゲームデザイナーの飯田和敏と、ぼく米光一成も出ます。観てね。ニコニコ生放送もあるよ。
（米光一成）
