驚きの写真修正と、「修整度」解析ツール

写真拡大

「驚きの写真修正と、「修整度」解析ツール」の写真・リンク付きの記事はこちら

ファッションおよびライフスタイル業界では写真の修整が常態化しており、消費者の心理に及ぼす悪影響も懸念されている。こうしたなか、写真に加えられたデジタル修整の度合いを定量化する解析ツールが開発された。

米国科学アカデミー紀要』(PNAS)オンライン版に11月28日付で発表された論文の中で、ダートマス大学のヘイニー・ファリッドと同大学博士課程に在籍するエリック・キーは、「無修整の写真」と「修整した写真」468組を解析して開発した計算モデルを紹介している。[計算モデルに関するWikipediaのカテゴリはこちら]

研究チームが計算モデルの開発に着手したのは、修整された広告写真に表示を義務付けることを英国政府が検討中だと知ったのがきっかけだ。

心理学者たちは、美しく修整された写真への懸念を表明している。こうしたレタッチによって、美しさや「普通の身体」についての標準が非現実的なものになり、自己嫌悪や病的な状態を生み出す危険性があるという懸念だ

米国医師会(AMA)も今年6月、広告主に対し、規制派と協力して、写真修整に関する基準を定めるよう要請している。しかし、客観的な基準を定めることは難しい。研究チームが計算モデルを開発した理由はそこにある。





ファリッド氏とキー氏は、解析を通じて、写真に写った人の体型や顔に加えられた修整の度合いを、数学的に記述できるようにした。それをもとに、計算モデルが修整程度を1〜5のスコアで評価する(スコアが大きいほど修整の程度が激しいことを示す)。

スコアの妥当性を検証するため、研究チームは、米Amazon社の労働力アウトソーシング・サービス『Mechanical Turk』を通じてランダムに選抜した50人に、写真を評価してもらった。その結果、人間もコンピューターと非常に近いスコアをつけた。







ここに挙げた写真はいずれも、人間と計算モデルのスコアに開きがある。人間の場合は特に顔への修整を重視するため、小さな違いも目についてしまうことが主な要因だ、とファリッド氏は述べている。

「これはトレーニング・データとなり、より多くの画像でモデルを学習させることができる」とファリッド氏は述べる。



こちらの画像セットは、上の例とは異なり、スコアがほとんど一致している。





左側のラルフ・ローレンの広告では、モデル(フィリッパ・ハミルトン)のウエストが、非現実的なまでに細くなっている。

[Wikipediaによると、左側の写真については2009年の10月頃に、ネット上で修整が話題になった。欧米諸国では若年のモデルらの夭折が相次いで発生していたこともあり、懸念を表明する報道もあった。ラルフ・ローレン側は修整の事実を認めたうえで、この写真は日本で使われているが、米国では使われていないと発表した。「日本に輸出されている欧米のモデルらの写真はほとんどが修整済みであり、こうした修整なしでは、市場価値のあるものとして日本で受け入れられることは不可能」といった指摘も行われた。なお、ハミルトンさんはのちにインタビューに答え、「君は太過ぎてこれ以上うちの広告には適さない」との通告とともにラルフ・ローレンから解雇されていたことを明かしている]



『Redbook』誌2007年7月号。カントリー歌手のフェイス・ヒルの顔が修整されていることを、『Jezebel』が指摘した



[以下の動画は、Photoshopでの画像修整を紹介するもの。別の日本語版記事より]








TEXT BY Brandon Keim
TRANSLATION BY ガリレオ -高橋朋子




【関連記事】
「世界の携帯の3割」はスマートフォン
「iPhoneから火花」報告2件
米国で広まる集団窃盗『フラッシュ・ロブ』(動画)
つい印刷したくなる「かわいいプリンター」(動画)
ヤマハの「スマートグリッド」電動バイク