11日からの週は、ドル高が進行した。前週の米大統領選で勝利を収めたトランプ氏の政策が強く意識された。対外的には高関税、対内的には減税、拡張的な財政政策などがインフレ圧力を高めるとみられた。いわゆる「トランプトレード」が強まり、米債利回り上昇とともに為替市場ではドル高の動きが継続した。米株式市場では主要3指数がそろって最高値を更新する日もあった。米消費者物価、生産者物価などが発表され、いずれも低下傾向は一服している。パウエルFRB議長は講演で、「利下げを急ぐ必要性を示す経済状況ではなく、慎重に決断を下すことができる」「政策はより中立的な設定に移行している」と今後の利下げに慎重な姿勢を示した。トランプ政策の負の影響が大きいとみられる中国、メキシコ、タイなどの通貨が売られた。欧州でも特にドイツ経済への影響が懸念されている。独連銀総裁からはドイツのGDPが1%押し下げられる恐れがあると指摘された。ドル円は152円台から156円台に上昇。ユーロドルは1.07台から一時1.04台に、ポンドドルは1.29台から1.26台に下落。ドル全面高となった。クロス円は米株上昇などでやや円安に振れたが、ドル相場主導となるなかで、神経質に売買が交錯した。週末にはようやくドル高調整の動きが入った。加藤財務相が円安けん制発言を行った。また、来週月曜日には植田日銀総裁の経済懇談会および会見が予定されており、12月利上げに関するヒントが得られるのかどうかが話題となっていた。ドル円主導でのドル売りがみられた。


(11日)
 東京市場は、円全面安。ドル円は、朝から米利下げ観測の後退などを背景にドル高・円安に振れ、前営業日終値から1円以上の円安水準となる153.67付近まで上昇した。9日にカシュカリ米ミネアポリス連銀総裁が米利下げ幅縮小の可能性に言及したことや、日経平均が午後に上げに転じたことも支えとなった。ただ、上げ一服後は153円台半ばまで押し戻されている。きょうは米国がベテランズデーの祝日で債券市場が休場となる。クロス円はドル円につれ高となり、ユーロ円は164.66付近まで、ポンド円は198.43付近まで上昇。ともに前日終値から1円以上の円安水準となった。ユーロドルは1.07台前半で揉み合い。前日終値を挟んで方向性の定まらない動きが続いた。

 ロンドン市場は、ドル買いが優勢。東京市場でドル円は152円台後半から153円台後半へと上昇した。円安圧力の面が強く、ユーロ円やポンド円などの上昇を伴っていた。しかし、ロンドン時間に入るとドル買いの動きが前面に押し出されている。1.07台前半で揉み合っていたユーロドルは1.06台半ばへと下落、5月初頭以来の安値水準となっている。ポンドドルはユーロほどではないが軟調に推移し、1.29台割れに沈んでいる。この日は米国がベテランズデー祝日のため米債券市場は休場となる。主要な経済指標の発表も予定されていない。材料難となるなかで、先週からのトランプトレードが継続しているようだ。また、最近の米経済指標結果が強含んでいることから米利下げ観測が後退、ドル高につながる面も指摘される。

 NY市場では、トランプトレードが続いた。ドル買いが優勢となるなかで、ドル円は154円手前まで一時上昇した。先週は米大統領選でのトランプ氏が勝利したことで、トランプトレードであるドル買いが瞬間的に出ていたが、材料出尽くし感から、トランプ氏勝利を見込んで事前に積み上げていたドルロングの解消も出ていた。しかし、基本的にはトランプ政権誕生でドル高を見込む動きは根強く、週明けはドル買いが優勢となった。ユーロドルは下値を切り下げ、1.0630近辺まで一時下落。このところのユーロ圏の成長鈍化やインフレの進展で、ECBが従来想定している中立金利よりも低い水準まで低下する可能性が市場からも指摘されている。そのためFRBとの金融格差拡大が言われる中で、ユーロドルも上値を圧迫されているようだ。ポンドは対ドルでは下落し1.2865付近まで値を落としたものの、対ユーロでは一時2年半ぶりの高値水準まで上昇した。先週の英中銀の金融政策委員会(MPC)を受けて市場では、英中銀の利下げは小幅に留まるとの見方が続いておりポンドを支援している。英国がトランプ氏の下での迫り来る貿易戦争の前線にはならないかもしれないという事実もポンドを下支えしているようだ。