西武・平井克典(左)と増田達至【写真:宮脇広久、矢口亨】

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通算194セーブを誇り、今月28日のロッテ戦が引退試合に

 通算194セーブを誇る西武・増田達至投手の今季限り現役引退が、17日に球団から発表された。28日に本拠地ベルーナドームで行われるロッテ戦が引退試合となる。岡田雅利捕手、金子侑司外野手に続く引退表明は、最下位を低迷中の西武に世代交代期が訪れていることを痛感させる。特に増田とともに西武のブルペンを長年支えてきた平井克典投手には、感慨深い思いがある。

「実は(増田から引退の意思を)結構前から、内緒で聞いていました。僕は『まだまだ、できるでしょ』と言っていて、発表されるまで『お疲れ様』とは言っていませんでした」。平井は“盟友”の引退についてこう明かす。「なぜか(平井の西武入り以降)8年間ずっとロッカーが隣。僕の左が増田さんです」と笑う。

 36歳の増田との一番の思い出を聞くと、「2019年にリーグ2連覇を達成した時です。先輩の凄さを身に染みて感じました」と即答した。この年、増田は30セーブ、防御率1.81で絶対的守護神として君臨。32歳の平井も中継ぎとして、現在もパ・リーグ最多記録でNPB歴代2位の81試合に登板(NPB最多は阪神・久保田智之投手=現投手コーチの90試合)する奮闘ぶりで、“勝利の方程式”を形成した。平井は「チーム全体が『1点でもリードして増田に繋げば……』と思っていましたし、僕自身もそう思って投げていました。本当に頼もしかったです」と振り返った。

 増田は2020年のオフに国内フリーエージェント(FA)権を行使した上で、西武と4年契約を結び残留。すると平井もそれにならうかのように、昨年オフに“宣言残留”して2年契約を結んだ。実際、FA権行使について誰よりも相談に乗ってもらったのが、増田だったという。

 しかし今季は、2人とも苦難のシーズンを送っていた。36歳となった増田は12試合0勝2敗0セーブ3ホールド、防御率4.09。3学年下にあたる平井は13試合0勝0敗4ホールド、防御率4.66。6月15日に2人同時に出場選手登録を抹消されて以降、2軍での調整が続いている。2軍本拠地のCAR3219(カーミニーク)フィールドで、パイプ椅子に隣り合って座る光景が何度か見られた。「お互い、悩みを打ち明けるではないですが、悩みながらいろいろ相談したりしていました」と明かす。

「打たれた時にぐっとこらえる振る舞いが素晴らしかった」

 試合前の練習でロッカーからグラウンドへ降りてくる時も、試合終了後に引き上げる時も、並んで歩いていた印象が強い2人だ。平井は「僕は先輩の一番いい時を見ているし、最近苦しんでいた時も一番そばで見てきました」とうなずいた。

 増田の引退が発表された今、「野球でも人間としても、抜けそうで抜けなかった先輩でした」としんみり語る。「打たれた時に、ぐっとこらえる振る舞いが素晴らしかった。僕には無い部分なので。調子がいい時は誰でも機嫌よく振る舞えますが、やられた時に違いが出るのですよね」と説明した。

 平井にとっては、ずっと追いかけてきた背中が消えることになるが、「野球を離れても、人として理想。永遠の目標です」と断言。増田の思いも胸に、再起を期す。(倉林知子 / Tomoko Kurabayashi)