●東野幸治、ヒロミの新番組が相次ぎスタート

民放キー5局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)の10月改編情報が18日、出そろった。中堅芸人による期待のバラエティが1年で幕を下ろす中で、ベテランMC勢が躍進。金・土曜の23時台に全国ネットのアニメ枠が相次いで新設される一方、クイズ番組の減少傾向が続いている。

このほか、重点指標の捉え方なども含め、各局の改編説明会からこの10月編成の動向をまとめた。

民放キー5局


○『ジョンソン』から豪華MC陣の『THE MC3』

今改編では、TBS『ジョンソン』(月曜21:00〜)、フジ『オドオド×ハラハラ』(木曜21:00〜)と、1年前に大きな期待の中でスタートした中堅芸人メインのバラエティが終了し、ベテランMCの番組に切り替わる枠が目立っている。

2005〜13年に放送されていた『リンカーン』はスタート当時、TBSとしては久々のダウンタウンのレギュラー番組で、現在の『水曜日のダウンタウン』をはじめ、その後の同局バラエティにも大きな影響を与える、ターニングポイントとなった番組だ。

その“後継番組”を宣言するほどの意気込みで臨んだ『ジョンソン』は、昨年10月23日にスタート。かまいたち、モグライダー、見取り図、ニューヨークと旬の芸人たちが集結したが、TBSの畠山渉コンテンツ戦略部企画プロデュース室長は「人気芸人の皆様にお集まりいただき、制作スタッフもいろんな形を試行錯誤しながら挑戦してきましたが、思うような成果が出せなかった」と終了の理由を語る。

後番組は、中居正広、東野幸治、ヒロミというMCを務める『THE MC3』。いずれも各局でMCを持つ、50代のベテランによる安定感ある布陣で、畠山室長は「豪華なお三方が名を連ね、週の頭、少し気の重い月曜日に彩りを加えるコンテンツになってくれたら」と期待を示した。

ちなみに中居は、これで『ザ!世界仰天ニュース』(日テレ)、『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS)、『だれかtoなかい』(フジ)と合わせて、21時台のレギュラー番組が4本に増加する。

○『オドハラ』から若手演出の『この世界は1ダフル』

オードリーとハライチが出演する『オドオド×ハラハラ』は、両コンビと付き合いの長い元テレビ東京の佐久間宣行氏が総合演出を務めるということで、注目を集めてスタート。特番の実績も踏まえ、昨年10月19日から木曜20時枠でレギュラー化し、半年後に21時台に繰り下がったが、1年での終了となった。

後番組は、こちらも東野幸治がMCを務め、Snow Manの渡辺翔太とタッグを組む『この世界は1ダフル』。東野はベテランだが、演出の小宮泰也氏(イースト)は32歳という若手で、フジの中嶋優一編成戦略センター室長兼編成部長は「テレビをどうしても作りたくて、小さい頃から研究に研究を重ねて32歳と思えないほど良質な番組を作られる方です」と期待を述べている。

そうした中で、フジは金曜21時にヒロミとホラン千秋MCの『ザ・共通テン!』をスタート。また、土曜18時30分に放送されている、かまいたち&チョコレートプラネットの『イタズラジャーニー』を終了し、南原清隆らMCの『ネタパレ』が金曜23時台から枠移動する。ヒロミに南原と、ここでも50代のベテランへの信頼がうかがえる。

●「いい時間で」23時台にアニメ枠

昨年の10月改編で、日テレが金曜23時にアニメ枠「FRIDAY ANIME NIGHT」(通称・フラアニ)を新設したが、今回の改編ではフジが金曜23時40分にバラエティ『ネタパレ』からアニメ枠に切り替え『ドラゴンボールDAIMA』をスタート。また、テレ朝が土曜23時30分にドラマ枠から切り替え「IMAnimation」枠(第1弾は『ブルーロック VS. U-20 JAPAN』)を編成する。

テレ東は、引き続き土曜23時にアニメ枠を編成(10月から『BLEACH 千年血戦篇-相剋譚-』がスタート)しており、これで金曜・土曜の23時台にアニメ枠がひしめき合うことになる。

フジは、かつて土曜18時30分に長年アニメを編成していたが、中島室長は「せっかくの『ドラゴンボール』の新作ですから、全国ネットがいいとうことで、金曜23時40分にしました。また、この作品を好きな方がご覧いただきやすい枠だと考えております」と説明。

テレ朝の河野太一総合編成部長は「新たなIPの開発が一つのテーマになっておりますので、よりいい時間帯でアニメの枠を設けて、いろいろなビジネス展開を模索していくのが狙いです」と明かしている。

○各局でアニメ専門部署強化の動き

22年にテレ朝が「アニメ・ゲーム事業部」(現アニメ・IP推進部)、23年にTBSが「アニメ映画イベント事業局」、日テレが「スタジオセンター」、そして今年フジが「アニメ事業局」を設置するなど、近年アニメビジネスをめぐる動きが各局で活発化している。

09年に「アニメ局」を他局に先駆けて設置し、アニメビジネスで先行するテレ東の工藤仁巳コンテンツ編成部長は、こうした流れを受け、「もちろんテレビ東京のアニメを見ていただきたいですが、全局的に盛り上がって“テレビでアニメがやっている”と目が向いてくれることのほうがうれしいと思っているので、いい方向に行けばと思っております」と歓迎姿勢を示した。

●『東大王』『小5クイズ』終了、春には『ふしぎ発見』も

TBSでは『東大王』(17年スタート)、日テレでは『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』(19年スタート)と、2つのクイズ番組がレギュラー放送を終了する。昨年の10月改編では『潜在能力テスト』が6年半、そして今年4月改編で『世界ふしぎ発見!』が38年半という長きにわたる歴史に幕を下ろしており、クイズ番組の減少傾向が続いている。

これで、GP帯のレギュラークイズ番組は、テレビ朝日の『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』『くりぃむクイズ ミラクル9』、フジの『ネプリーグ』『呼び出し先生タナカ』『今夜はナゾトレ』の計5本となった。

日テレの江成真二総合編成センター部長は、クイズ番組というジャンルについて、「一旦レギュラー番組としてはなくなってしまいますが、大事なコンテンツと考えておりますので、引き続き特番等で開発は続けております。改めてレギュラーを含めてクイズ番組を編成していきたいという意志がございます」と強調。

クイズ番組は、コア層の数字が上がりづらい傾向があることから、「レギュラー編成するところの難しさはあると思います」と認めながら、「歴史上、お茶の間で家族そろって楽しんで見るという番組だと思いますので、そういった番組をぜひ作っていきたいというところで、いろいろ企画開発をしているところです」と力を込めた。

○異例の局移籍『どうなの会』、連ドラ枠がぶつかる火9

異例の局移籍で話題を集めるのは、今春まで日テレ系列で放送されていた『それって!? 実際どうなの課』(中京テレビ制作)のフォーマットを生かした『巷のウワサ大検証! それって実際どうなの会』(TBS)。4回の特番を重ねて、水曜20時にレギュラー化する。

TBSの三島圭太コンテンツ戦略部長は「中京テレビさんとコミュニケーションをとらせていただきました」と“円満移籍”であることを示唆しつつ、「シンプルに魅力あるコンテンツを編成し、放送するというのが我々の責務ですので、それを追求したということに尽きると思います」と意義を強調する。

スタジオ出演者の生瀬勝久、大島美幸(森三中)をはじめ、チャンカワイ、餅田コシヒカリ、ザ・たっち、狩野英孝&大島てるら、『どうなの課』からの継続メンバーが多数いる中で、数々の達人から驚異的なスピードでワザを習得していく“ワイルドスピード森川”こと森川葵、スタジオMCだった博多華丸・大吉はこれまで登場していないが、今後の出演の可能性について、三島部長は「現時点で決まっていることはありません」とした。

一方、他局同士で同ジャンルがぶつかるのが、火曜21時。フジが金曜21時から連ドラ枠を移動して『オクラ〜迷宮入り事件捜査〜』をスタートさせることで、テレ朝の『民王R』と真裏同士の勝負となる。GP帯で民放の連ドラ枠が重なるのは、日テレとフジの水曜22時以来、半年ぶりだ。

●松本人志レギュラー番組はすべて継続

週刊文春との裁判に注力するためとして、今年1月から芸能活動を休止している松本人志のレギュラー番組は、すべて継続。このうち、『人志松本の酒のツマミになる話』(フジ)はセンター席に大悟が座って『酒のツマミになる話』に、『まつもtoなかい』(同)は二宮和也→ムロツヨシと代役がリレーされて『だれかtoなかい』に改題している。

松本がアンバサダーを務めていた5月の『THE SECOND〜漫才トーナメント〜2024』(フジ)は、くりぃむしちゅー・有田哲平が「ハイパーゼネラルマネージャー」、博多華丸・大吉が「スペシャルサポーター」として参加して、その役割をカバーした。今後、これまで全大会に出演して長年審査員を務めてきた『キングオブコント2024』(TBS)は、10月12日に決勝生放送が控えており、どのような対応がとられるのか注目が集まる。

○「個人・コア3冠再目標化」「オールターゲット」「LTV40-59」「共視聴」

番組の評価数値が多様化する中、各局で様々な重点指標が掲げられている。今回は、どのような意識のもとで改編を行っているのか。

今年春に編成戦略目標を「個人全体視聴率・コアターゲット視聴率両方3冠」から「コア」に振り切った日テレは、これを見直し、再び「個人全体視聴率・コアターゲット視聴率両方3冠」に戻す。4月クールでコア・個人全体共に「大変厳しい結果」(江成部長)だったことを踏まえ、「それぞれの番組が、自分たちのカラーを生かしながら面白さを追求し、多くの視聴者の支持を得るという本来の姿を取り戻す」と意気込む。さらに、“配信から地上波への回帰・送客”を促進する方針を示した。

23年度に2年連続の個人全体視聴率2冠(全日・プライム)と、世帯3冠(全日・ゴールデン・プライム)を獲得したテレ朝は「オールターゲット戦略でファミリー層に加え、あらゆる世代のニーズに応えるタイムテーブルを追求」。朝の情報番組『グッド!モーニング』ブランドを週7日の完全ベルト編成にする一方、こちらは週7日編成してきた夜の“ステーション”ブランド『サンデーステーション』から『有働タイムズ』に改編し、日曜の強化を図っている。

TBSは10月から、重点指標を従来の「新ファミリーコア」(4〜49歳)から「LTV4-59」(4〜59歳)に変更。「2030年に日本で一番人口が多くなる層が団塊ジュニア世代の55歳から58歳となります。その“50代の親”と“同居する20歳前後の子ども”という家庭が一番多くなるというデータもあります。60歳以上は対象としないという意味ではなく、“より多くのファミリー層”に観ていただいていることを分かりやすくする指標です」と解説する。

60周年イヤーが終盤に差しかかったテレ東は「もちろん“人と同じことはやらず”“トガッたこと”を仕掛けるスタンスは変わりません。視聴者・ユーザーに全力で寄り添い、ここまでの60年で耕した土壌と種蒔きが61年目以降に実をつけられるようドラマもアニメもバラエティも報道もあらゆる人に見ていただけるようパワーアップさせます」と強調。

フジは、改編テーマを4月から変えず「一緒に笑えるだけで、しあわせ」に設定。中嶋室長は、7月に放送された『FNS27時間テレビ 日本一たのしい学園祭!』の例を挙げて「世帯の約7割が複数の人で視聴するいわゆる共視聴となっており、そのうちの4割がキッズやティーンの若者というデータがありました」と明かし、引き続き「“共視聴”No.1のテレビ局を目指します」と意気込んでいる。