都内で取材に応じた久保田未夢

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 声優アイドルユニットi☆Ris(アイリス)の久保田未夢がこのほど、よろず~ニュースの取材に応じた。デビュー10周年プロジェクトを締めくくる、同ユニット初の実写映画「Live & Documentary Movie~i☆Ris on STAGE~」(野中哲也監督)の公開を9月13日に控え、メンバーとの関係性を告白。仲良しではないけれど頼りにしている、そんな自由で確かな結びつきがあった。

【写真】ステージ衣装で穏やかな表情を浮かべる久保田未夢

 久保田が「なんだか本当にアイドルのよう」と楽しそうに語った今作。i☆Risは2012年にデビュー。現在は山北早紀、芹澤優、茜屋日海夏、若井友希と久保田の5人組で、21年3月に澁谷梓希が卒業した。今作ではアイドル、声優として成長する姿とその葛藤が、各メンバーにとって思い入れの強い地で実施されたインタビュー、各年のライブ映像を挟みながら映し出される。

 久保田は「i☆Risの歴史の教科書みたい。ライブ映像は私がもう見たくない過去のものから最新のものまであって、古くから応援してくれるファンには懐かしく、新しいファンには勉強になると思います」と映画を紹介。一方でメンバーのインタビューでは、それぞれが「普通のグループは皆で協力するけど、私はソロのつもり。出し抜いてやる」「戦友みたいな感じ。危ない時もあった」「負けたくない」といった、ライバル心を隠さない言葉も目立つ。

 久保田は「私たちは仕事のこと、プライベートのことは話し合わないんです。映画で初めて知ったことも多くて新鮮でした」と語った。そして「デビュー当時は全員がとがっていて『我が一番』みたいな感じ。でもグループ活動だけでなく、全員がソロ活動とかで(外に)出て、また戻ってくるので、どんどんトゲはなくなったようです。みんな大人になって、でも子供に戻るリーダー(山北)がいたりして、歴史を重ねるたびにバランスは良くなったと思います」と現状を明かした。

 ファンにとってはお馴染みだが、i☆Risは〝仲良しではない〟ことを以前からオープンにしてきた。結成前のオーディションを振り返り「もともとアイドルグループになります、ということではなかった。一人でデビューしたいタイプが多かったのに、グループということになって。みんなツンケンしている部分があった」と結成当初を述懐した久保田。現在はソロなどi☆Ris以外の活動を重ねる中で「他の現場では歌、ダンスができる扱いを受けるんですけど、初期の頃は歌もダンスも苦手で、今でも苦手意識はある。メンバーがどう思っているかは知らないけれど、私が一番できないという認識はあるので、他の現場で持ち上げられたとしても、ゼロに戻してくれる場所ですね」と、大切な〝原点〟が現存するありがたみを口にした。

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 久保田は「メンバーは歌、ダンスでも私を上回っていると思う。歴を重ねると後輩が増えて、どうしても追われる立場になっちゃうけれど、i☆Risでは、自分が追う側に戻れる安心感がある。ありがたいですね」と改めて感謝しつつ、このような話はメンバー同士では「しないです」と笑い飛ばした。「多分このインタビューも、他のメンバーは見ない。知らないまま、彼女たちは先を走ってくれる」と続けた。

 アイドル、バンドなどの芸能界だけでなく、一般社会でも、仕事の便宜上、建前上でも「絆」「一丸」「一致団結」が良しとされる。その中でi☆Risは、珍しい立ち位置といえそうだ。久保田は「リハ終わりでも全然一緒にご飯を食べに行かない。皆すぐに帰っちゃう。SNSにツーショットの写真を上げることもない。一人で撮って終わり。他のメンバーのソロ活動を見に行くこともないですね」と楽しそうに説明。若井と芹澤は多少の行き来はあるというが、メンバー全員がそろって交流することは、結成当初から記憶にない。「多分女の子同士でベタベタしないタイプが多かったからじゃないかな」と語った。

 仲良しではない関係性を公表することは、運営側からは不問だった。「私にとっては楽でした。長く続ける上ではストレスがないことは重要で、強要されること、偽りをつくることもなく、自然体でいられたことがポイントでした」。とはいえ、結成当初から大きなケンカ、対立はなかったという。「お互いが空気を察してそっとしておく感じでした。それがi☆Ris以外の現場に出ることが増え、皆がその大変さを知ってくると、他の人にも優しくなるじゃないですか。それで楽屋の空気にもトゲがなくなってきましたね」と語った。

 ファンがそんな状況を前向きに受け止めていることに対しては「面白がっていますよね。私たちは仲良くない、と言っているのに、『この2人の関係性が好き』というファンもいるんですよ。不思議だと思う」と関心を示した。「ベタベタしていないのに山北と芹澤を『山芹コンビ』と呼んで、あの二人の関係が好き、というファンがいる。私たちが提供していない分、ラジオやライブMCでペアになった時のささいな事から感じ取ってくれるのは、上手だなあ」と感心した。

 久保田に関しても「茜屋さんとはプライベートでは全然一緒にならないのに、ライブMCでキャッキャとすることもないのに、私と茜屋のペアが好き、ペアでフリをしているのが尊い、というファンがいるんです。でもフリって決められたものじゃないですか。そこからでも摂取しているのが面白い」と、楽しそうに語った。

 10周年記念企画は、今回の実写映画で完結。久保田が考える、自身のi☆Risでの立ち位置を尋ねると「自分のポジションはいまだに分かっていないんです。歌担当でも、踊り担当でも、笑いを取りにいくわけでもないし、リーダーでもないし、ツッコミは結構しているけど担当ではないなあ」と苦笑い。その上で「そういうグループって珍しいと思う。無理にポジショニングを考えず、何か足りないところを補えれば許してくれるやろって感じですね。MCがグチャグチャの時は仕切りに入るだろうし、誰かが仕切ってくれているときはファンと一緒に遊んでいるだろうし…」と少し考えた後に「グループ以外の活動をしているからこそ、皆がいろんな立ち位置、どんな担当でもできるのがi☆Risの強みだと思います」とまとめた。

 今後はデビュー12周年記念ライブ(11月4日、神奈川・ぴあアリーナMM)が決まっている。久保田は「何も考えずにオタクと楽しい時間を過ごしたい。前向きな気持ちしかないですね」とキッパリ。i☆Risとファンの幸福な共犯関係はこれからも続いていくのだろう。

(よろず~ニュース・山本 鋼平)