セゾンは手数料新設、三井住友は還元率引き下げ…相次ぐクレカの“改悪”を専門家が解説
「楽天カードはせこい!」 Xにそんな書き込みがあふれたのは2023年8月。楽天カードが「2023年11月から獲得ポイントの計算方法を変える」と発表したことがきっかけだ。
従来は月の利用合計額の1%を還元するが、買い物ごとの計算に変えるという。たとえば3千980円と5千980円、月2回楽天カードを利用したとしよう。従来なら合計額9千960円の1%=99p付与されたが、新方式では3千980円は39p、5千980円は59p、獲得ポイントは合計98pだ。買い物回数が多いほど100円未満の切り捨てが効力を発揮し、ポイントを減らしていく。
「クレジットカード(以下、クレカ)は手数料ビジネスです。カード会社として、コストが利益である手数料を超え赤字になりそうだと判断したら、ルールを変えて黒字化しようとします。利用者にとって“改悪”のルール変更も、以前からよく見られることです」
そう話すのは、クレカを100枚以上保有し活用するポイ活専門家の菊地崇仁さん。
また、2024年3月のXには三井住友カードに「1年たたずに大改悪は詐欺的」などの声もあがった。
発端は2023年、三井住友カードはクレカ決済でのつみたて投資に高いポイントを付けると大々的に宣伝していた。最上位のプラチナプリファードはつみたて投資のポイント付与率が破格の5%。当時クレカつみたて投資は最大月5万円で、年60万円だと5%還元で3万pが付与される。年会費は3万3千円だが、投資以外の利用もあればポイントで相殺できる。特典も多くお得だと人気を集めた。
2024年になって新NISAが始まり、クレカつみたて投資も話題を呼んだ。そこで国は3月に「クレカつみたて投資の上限を月10万円に引き上げる」と決定。三井住友カードはそのタイミングで「11月からポイント還元率の引き下げ」を発表したのだ。まさに「1年たたずに」だ。
プラチナプリファードは5%付与から、年500万円以上のカード利用があれば3p、年300万円未満なら1pに急降下した。
「つみたて投資に5p付与などは経営上無理な話。いずれ付与率を調整しようとしていたと思います」(菊地さん、以下同)
■デビットカードを使って月の予算額のやりくりを
ほかにも、改悪事例は後を絶たない。たとえば公共料金や税金などのポイント還元率を引き下げ。
「カード会社にとって儲けの少ないものからポイント還元率を下げていく傾向です」
また、コロナ禍以降、付帯する海外旅行保険が変わっている。以前はクレカの保有者に適用される「自動付帯」だったが、最近は旅行代金などでクレカを利用した人のみの「利用付帯」が大半だ。海外旅行に行く際は、必ず確認を。
さらに、激震が走ったのはセゾンカードの「カードサービス手数料」だ。一部カードでは年会費が無料でも1年間利用がない場合は手数料を年1千650円〜徴収するという。もはや年会費無料と呼べないのでは。 「カード会社はクレカの維持費がかかりますから、年会費無料で利用なしだと大損なのです。 使わないカードは不正利用の危険性もあるので解約しましょう」
カードの改悪は今後も続く?
「特典は変わるものと認識しましょう。規定変更などはメールや郵送で連絡がきます。必ず確認して」
改悪がわかったら、どうする?
「自分が受ける影響を冷静に判断しましょう。影響の度合いで利用をやめるか、続けるかを判断して」
公共料金などのポイント還元率が下がったら、引き落としを違うクレカに変える手も。変更手続きはネット上でOK、意外と簡単だ。
高いポイント付与率など、お得情報につられるのはよくない?
「お得度の大きいサービスは付与率の低下もあると、覚悟しておきましょう。そのうえでお得情報を見つけたら、早めに利用を始め、付与率が下がるまでしっかりお得をゲット。付与率が下がったら、解約するなどの手を打ちましょう」
また、お得を強調するクレカは、高還元率の適用範囲を確認しよう。たとえば百貨店発行のクレカは最大10%還元とうたうが、デパ地下の食料品は1%、ハイブランドではポイントはつかない。
改悪が横行するクレカを避けて、利用額がその場で口座から引き落とされるデビットカードを使う選択肢も。「楽天銀行デビットカード」は1%、ソニー銀行の「ソニーバンク・ウォレット」は口座残高などに応じて0.5〜2%とクレカに匹敵するポイント還元率だ。
デビットカードの口座を家計専用として月の予算額を入金し、その中でやりくりすると使いすぎを防げる。利用履歴が残るので、家計簿をつけなくていいのも◎だ。
特に注意したいのは、クレカの改悪を知らぬ間に見過ごすこと。情報を集め、お得を追求しよう。