著作権侵害の疑いがある海賊版コンテンツへの対策として、ドメインの差止命令やGoogle検索の検索結果に表示されなくするなどの対策が進んでいます。一方で、ブロックするだけの対策だとドメインを新しいものに変える回避策があったり、刑事訴追するには他国で運営されているサイトには手を出しづらかったりと、対策が難しい面もあります。そのような中、日本を拠点とする海賊版対策団体が中国で運営されるサイトの規制について成果を上げ続けていることを、海賊版や著作権に関するトピックを扱うTorrentFreakが報じています。

China's Pirate Site Crackdown is Real & Assisted By Anime Anti-Piracy Group * TorrentFreak

https://torrentfreak.com/chinas-pirate-site-crackdown-is-real-assisted-by-anime-anti-piracy-group-240717/



著作権侵害に関する追跡調査を行うMUSOがコンサルティング会社と共同で発表した調査で、2023年の海賊版サイトへのアクセス数は世界全体で1410億件超だったことが示されました。ここでは、海賊版サイトへの訪問者数が多く、特に近年で大きく訪問者数が増加している「ホットスポット」としてカナダやスウェーデン、香港、カタールが注目され、近年の増加率がかなり高くなっている「海賊版の成長市場」としてインドが挙げられました。

映画やテレビ番組の海賊版へのアクセスは2023年で1410億件超、日本は改善傾向 - GIGAZINE



MUSOの調査とは別に、海賊版の活動が盛んな国に中国があります。中国では、「知的財産権侵害は自国領土内で侵害を訴える人々が解決すべき問題である」という理論があり、中国国外に拠点を置く著作権保有者は、中国国内での著作権侵害者への対処が極めて困難であるという問題がありました。

日本を拠点とする海賊版対策団体の一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)は、2002年に日本コンテンツの海外展開の促進と海賊版対策を目的に設立されました。国外の団体からの訴えを受け付けにくい中国当局に繰り返し働きかけることで、CODAは大手海賊版アニメサイト「B9Good」の運営者を刑事摘発させることに成功しています。



CODAによると、B9Goodへの取り組みは2016年頃から始まっていたそうです。その際に行政苦情を申し立てた結果、サイト運営者はユーザーの地理的位置によってサイトにアクセスできなくするジオブロッキング措置により日本からはサイトが閉鎖されたように見せ、そのまま運営を続けていました。

その後、CODAはアニプレックス、テレビ東京、東映アニメーション、東宝、NHKといったアニメの権利者を含む正当な権利保護者として認定されたNGOである「CODA北京事務所」を中国国内に設置。国内から公安局に刑事告訴した結果、2023年2月14日から中国の法執行機関はB9Good運営者の一斉検挙を開始し、差し押さえやサイト閉鎖にたどり着きました。結果として、2024年3月時点でB9Good運営者の有罪判決が確定しています。CODAは「日本(CODA)からの働きかけをきっかけに海外の海賊版サイトの運営者やアップローダーに刑事罰が科されたのは、今回が初めてとなります。CODAとしては、このような悪質なサイトに対する今回の摘発および判決が、同様の海賊版サイト運営の抑止に大きな影響力を発揮するものと期待します」と一連の活動に関する声明で述べています。



CODAはさらに、2024年7月16日に新たな2件の海賊版ストリーミングに関連する訴訟で勝訴したことを明かしました。これらのサービスはアメリカ、イギリス、フランスなどの企業が所有する主流の映画やテレビ番組を提供していたほか、3万本以上のアニメも含まれていたとのこと。2件とも中国で運営されている海賊版サイトであり、CODAの北京事務所は中国江蘇省の公安局に著作権侵害の刑事告訴を提出しています。公安局による捜査は迅速に行われ、短期間で運営者の身元が特定されて逮捕まで至ったとCODAは報告しています。

CODAの刑事訴追と公安局の捜査を受けて、TorrentFreakは「中国は、著作権侵害に対する対応が甘いという認識が従来はありましたが、むしろ中国当局は海賊版サイトの運営者を逮捕する動きがかなりスピーディーで、著作権侵害の取り締まりに熱心に取り組んでいるようです。2023年から2024年にかけての訴追件数は、アメリカよりも中国の方が多い可能性があります」と指摘しています。