こういった顧客とのリレーションシップの強化は大切だと思う。飲食店の基本三原則であるQ(品質)S(サービス)C(クリンリネス)は他のチェーン店と比較すると、見劣りする店があるのも事実。やはり店舗を率いる店長次第で、同じ看板、同じパッケージでも、差が出るものである。

餃子の王将の業績を時系列で分析!

餃子の王将の業績推移(2019年3月期〜2023年3月期)】
売上高(前期比):816億3800万円(104.5%)→855億7100万円(104.8%)→806億1600万円(94.2%)→847億7500万円(105.2%)→930億2200万円(109.7%)
直営店既存店売上伸率:102.3%→104.0%→92.8%→103.1%→108.7%
売上総利益(率):572億6100万円(70.1%)→601億4800万円(70.3%)→560億8800万円(69.6%)→581億7500万円(68.6%)→636億5700万円(68.4%)
営業利益(率):69億2400万円(8.5%)→76億9800万円(9.0%)、60億7300万円(7.5%)→69億5900万円(8.2%)→79億8100万円(8.6%)
経常利益(率):73億1000万円(9.0%)→80億8400万円(9.4%)→68億6700万円(8.5%)→130億2400万円(15.4%)→91億4000万円(9.8%)
当期純利益(率):41億8900万円(5.1%)→53億1100万円(6.2%)→42億8700万円(5.3%)→88億0700万円(10.4%)→62億1300万円(6.7%)
総資産:639億5000万円→675億3800万円→911億5400万円→894億500万円→841億300万円
純資産(自己資本比率):468億7200万円(73.3%)→503億500万円(74.5%)→529億5200万円(58.1%)→590億9800万円(66.1%)→627億7000万円(74.6%)

 王将フードサービス決算情報(2023年3月)から業績を時系列でみると、2023年3月期の売上は前期比9.7%増の930億2200万円で2ケタに近い伸び率で成長している。今年度2024年3月期の実績も、直営全店売上は925億5600万円(前年比109.1%)、と、通期においても過去最高売上を達成している。

 ちなみに、客数8万1735人(前年比105.9%)客単価1132円(前年比103.1%)と総て前年比を上回っている。FC売上を含む全社売上高(決算上の売上高)は、26か月連続で同月比過去最高を更新しており、通期では創業以来初めて1000億円(1009億8400万円)を突破している。

 2023年3月末の店舗数は732店。そのうち、FC加盟店は190店舗。FC比率は26.0%で、直営店主体の店舗展開を行っている。餃子の王将は直営店が多いため、家賃や人件費などが直接費用となり、固定費が高いことで損益分岐点は高めである。だから不測の事態に陥った時のリスクは大きい。

 そういった費用構造でも、2023年度実績では、営業利益率は8.6%は確保しており、収益力に問題はない。貸借対照表を見て財務状態を分析しても、自己資本比率が74.6%と財務基盤は盤石で経営の安定性は評価できる。

◆損益分岐点高めだが投資家からは評価

 上場企業だから資本効率(ROEが10%以上なら投資価値があると判断され、 5%以上なら合格点、15%以上なら優良企業といわれる)も重要指標として見られるだろうが、餃子の王将のROEは10.20%だから投資家にも一定の評価はされている。

 このように収益状況や財務基盤が安定しているのに、頻繁に値上げを断行するのは、まだまだ先行きが不安定のため、今のうちに経営基盤と組織体質を強化しようとする表れか。餃子の王将も店舗数729店舗(2024年5月発表)、売上1000億円を超え、従業員も2254人(2023年3月末時点)と巨大な外食企業となった。

 値上げは将来を見越して、成長する企業の社会的使命を全うするためで必要不可欠と判断したことであろう。株主、従業員、地域社会への責任などを重視する餃子の王将らしい。それが、どこまでお客さんに伝わり、安定成長を後押ししてくれるかは、収益の源泉である店舗次第であろう。ラーメン業界において、なくては困る餃子の王将をこれからも応援したい。

<TEXT/中村清志>

【中村清志】
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan