大手広告代理店のCM料金表を入手!『さんま御殿』『Mステ』は20年間で半額、下げ幅最大の70%ダウンは伝統枠
2004年にCMで引っ張りだこだった藤原紀香(写真は2001年)と、2024年現在、多くのCMに出演する芦田愛菜
「20年という年月を経て、テレビ局のすべての指針であった『視聴率』が、ざっくり言って『半分』になっている印象です」(広告代理店担当者、以下同)
テレビ局の収益の柱である、スポンサーから得られるCM料金は、番組の視聴率をベースにして決められている。本誌は、大手広告代理店が制作した2004年と2024年のCM料金表を入手。比較してみると、この20年間で“底が抜けた”といえるほど暴落していることが判明した。
「この数字は、テレビが視聴者や消費者に及ぼす影響力も、2004年とくらべて“半減”してしまったことを意味します」
2004年といえば、全日・ゴールデン・プライムで、フジテレビが年間視聴率三冠を達成した年にあたる。その象徴である「月9ドラマ」の広告料は、1100万円(30秒換算)と他局を圧倒していた。
「『月9』は超人気のコンテンツだったので、満稿(スポンサー枠が埋まること)なのはもちろん、出稿を希望するクライアントを、すべて断わっていた状況でした。それが、今ではCM料金をダンピングしても空き枠が生じ、スポットCM(局の自由選択でランダムに流すCM)で埋めることもあるほどです」
『踊る!さんま御殿!!』や『ミュージックステーション』、放送時間帯が変わったとはいえ、『ビートたけしのTVタックル』といった“ビッグ3”の番組も、CM料金は半減している。ある長寿番組の大手スポンサー担当者がこぼす。
「コロナ禍となる以前から、もう数字が取れていない兆候があったので、ウチとしては何度も撤退を検討していました。それでも続いているのは、長く続いた信頼関係、いや、“腐れ縁”でしょうね。正直、番組が打ち切りになれば、ホッとすると思います」
かつては日立や東芝といったナショナルクライアントがゴールデンの番組を1社提供していたが、今では撤退した。
「一方の報道・情報番組は、放送日によって多数のスポンサーが複雑に入れ替わる体制を取っていますが、それも一時しのぎにすぎません」(前出・代理店担当者)
“惰性”で続く長寿番組は岐路に立たされている。では、タレントのCM契約料金の変遷はどうか。
「20年前に比べても、それほど値崩れしていない印象です」(同前)
当時も今も、上位に君臨するのはスポーツ選手だ。
「タレントと違い、スポーツ選手はオファーしても断わられるケースがあります。過剰に出演することもないので、出てもらえるのは貴重なんです」(別の広告代理店担当者)
その点、20社と契約する大谷翔平は別格扱いだ。ほかの大物タレントはというと、CM料金“半減”の影響をじわりと受け始めている。
「じつは、ほとんどのタレントが、2023年比でほぼ10%のダウン提示をされています。個々のタレントの価値が下がったわけでなく、“適正価格”に落ち着きつつあるのです。もともと、クライアントからは『ギャラが高すぎる』と言われていました。値引きに応じてでも契約を維持したいタレントと、思惑が一致しているのが今なのです」(同前)
3000万円クラスで準一流、5000万円以上で超一流といわれるCM業界。いつまで時代の“最先端”でいられるのだろうか。
――人気長寿番組のCM料金(2004年→2024年のそれぞれ最高額)――
■『行列のできる相談所』 日本テレビ 2002年開始 日曜21時
最高900万円(2004年)→→→ 56%減 →→→ 最高400万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・木下グループ、アサヒビール、RIZAP、TOYO TIRE、LION、東京中央美容外科、アクサ生命保険)
2007年には最高視聴率35.3%を記録したが……。「番組打ち切りの噂が現実になりつつあります。同時間帯の『だれかtoなかい』(フジ系)が意外と健闘しているほか、『日曜劇場』(TBS系)にも数字を食われているためです。結果、今はバラエティ番組の直近の獲得視聴率のベスト10から漏れています」(広告代理店担当者、以下同)
■『踊る!さんま御殿!!』 日本テレビ 1997年開始 火曜20時
最高700万円(2004年)→→→ 50%減 →→→ 最高350万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・P&G、ニトリ、RIZAP、アサヒビール、買取大吉、マクドナルド)
明石家さんまの司会で放送されていた『恋のから騒ぎ』(日テレ系)の芸能人版というコンセプト。「『行列のできる相談所』『ぐるぐるナインティナイン』などとともに、日テレの年間視聴率三冠王獲得の原動力となりました。2020年以降は視聴率に陰りが見えはじめて、2024年4月23日放送回は9.5%に留まっています」
■『ダウンタウンDX』 日本テレビ 1993年開始 木曜22時
最高600万円(2004年)→→→ 41%減 →→→ 最高350万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・P&G、アサヒビール、花王、サントリー、プロミス)
「当初は、制作している大阪の読売テレビにゲストを招いていましたが、ダウンタウンが多忙になり、1994年以降は東京での収録となりました。毎週多数のゲストの写真やエピソードを紹介してトークを展開したり、クイズを取り入れたりするなど、何度もリニューアルをおこない、現在は浜田雅功さん一人でなんとかしのいでいます」
■『笑点』 日本テレビ 1966年開始 日曜17時半
最高500万円(2004年)→→→ 52%減 →→→ 最高240万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・佐藤製薬、日本香堂、龍角散、大王製紙、救心製薬、サントリー)
「日曜の夕方に放送し続ける超長寿番組で、関東地区で根強い人気があります。バラエティ部門で週間視聴率が首位になることもありますが、視聴者の年齢層が高いことから、CM料金は半減しています」
■『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』 TBS 2001年開始 金曜20時57分
最高750万円(2004年)→→→ 53%減 →→→ 最高350万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・P&G、アサヒビール、佐藤食品、明治、ファミリーマート、ニトリ)
番組の過渡期とされるのは、2022年に中居正広が病気によって番組出演を見合わせたとき。「その間、基本的には新規の収録はおこなわず、あえて総集編や未公開シーンなどで休養期間を乗り切りました。それでもスポンサーは離れることなく、番組の提供を続けたのですが……」。現在のCM料金は、対2004年比で53%減という結果に
■日曜劇場 TBS 1956年開始 日曜21時
最高850万円(2004年)→→→ 18%減 →→→ 最高700万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・SUBARU、日本生命、サントリー、花王、Sky)
すべてのテレビ局で、もっとも歴史が長いドラマ枠。2004年、『砂の器』が平均視聴率19.6%、『オレンジデイズ』が17.4%。その他、『ビューティフルライフ』『半沢直樹』など話題作が多い。2024年の『アンチヒーロー』は10.8%(5話まで)だが、のちに紹介するフジの月9ドラマと比べて下げ幅は小さく、 “ドラマのTBS” の面目躍如
■『news23』 TBS 1989年開始 月〜木23時、金曜23時58分
最高660万円(2004年)→→→ 47%減 →→→ 最高350万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・因幡電機産業、UACJ、野村證券、Volkswagen※別パターンと隔日で交替)
『筑紫哲也 NEWS23』として番組スタート。後藤謙次にMCが交代し、現番組名となる。その後のMCを膳場貴子などが務め、現在は『報道ステーション』(テレ朝系)のサブキャスター歴7年半の小川彩佳アナが担当する。「他局に視聴率でダブルスコアで敗れることもあり、小川キャスター降板の噂は絶えません」
■『ロンドンハーツ』テレビ朝日 1999年開始 火曜21時→火曜23時15分
最高500万円(2004年)→→→ 66%減 →→→ 最高170万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・宝くじ、ソニー損保)
番組開始当初は、日曜の20時枠だった。「放送時間の枠移動が多く、2004年には『Aタイム』といわれる21時台だったのが、2024年は『特Bタイム』である23時台に。66%という大幅減は、そのことが大きい」
■『ミュージックステーション』テレビ朝日 1986年開始 金曜20時→同21時(隔週)
最高690万円(2004年)→→→ 49%減 →→→ 最高350万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・P&G、大塚製薬、KINCHO、日清食品、Panasonic、Disney+、サントリー)
スタート当初は関口宏が司会を担当していたが、1987年4月よりタモリに交代。「ここ最近、低迷が続いて放送時間枠を2019年より変更し、さらに制作費削減のため、月に2回の放送へとリストラを慣行。2024年2月に放送した2時間SPの視聴率は、8.5%を記録し、他局の音楽番組をダブルスコアで引き離しました」
■『ビートたけしのTVタックル』テレビ朝日 1989年開始 月曜21時→日曜12時
最高660万円(2004年)→→→ 70%減 →→→ 最高200万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・メモリード)
『どーする? TVタックル』として放送開始。「多くの政治家や評論家たちが番組内でバトルを展開し、番組内容に対して多くの抗議を受けて、存続の危機が何度も訪れました。現在ではビートたけしの名前が冠とされている唯一の番組として、日曜の昼(特Bタイム)に移行し、制作費は大幅にカットされています」
■『徹子の部屋』 テレビ朝日 1976年開始 月〜金13時20分→同13時
最高240万円(2004年)→→→ 38%減 →→→ 最高150万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・Doggyman、アデランス、龍角散、SUNNY PLACE、SGC、白山御廟 ※月曜の場合)
2023年に放送1万2100回を迎え、同一司会者のトーク番組としてギネス認定。「2024年2月の特番は藤井聡太さん、芦田愛菜さんらが出演し、視聴率14.0%を記録。話題性は健在で、CM料金の下げ幅も軽微です」
■『報道ステーション』 テレビ朝日 2004年開始 月〜金21時54分
最高700万円(2004年)→→→ 50%減 →→→ 最高350万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・東和薬品、セブン&アイ、サントリー、M&A Best Partners(月2回)※月曜のあるパターンの場合)
ちょうど20年前の2004年4月より『ニュースステーション』の後番組として放送開始。「放送内容や報道姿勢に対してたびたび物言いがつき、スポンサーの撤退も起きています。代理店にとっては “厄介な番組” として、局との間でも緊張状態が続いています。曜日や時間帯によってスポンサーは替わり、変遷を繰り返しています」
■『ワイド!スクランブル』 テレビ朝日 1996年開始 月〜金11時25分→同10時25分
最高150万円(2004年)→→→ 33%減 →→→ 最高100万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・司法書士法人 中央事務所、オリックス生命、レディースアートネイチャー、はなさく生命、ベリーベスト法律事務所 ※月曜の場合)
現在はMCの「大下容子」の名を冠する。第1部(午前10時25分〜正午)の年間平均視聴率が、10年連続で横並びトップに。第2部(正午〜13時)も2年連続同トップと安定して強く、CM料金は33%下落に留まる
■『開運!なんでも鑑定団』テレビ東京 1994年開始 火曜20時54分
最高350万円(2004年)→→→ 66%減 →→→ 最高120万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・ヨドバシカメラ、元旦ビューティ工業、買取大吉、HANDA Watch World、古美術 永澤)
当初は、同局では異例の視聴率20%超を記録。「司会の島田紳助さんの不祥事で低迷するも、系列以外の地方局への番組販売が好調で、危機を乗り切りました。視聴者の年齢層が高く、CM料金は頭打ちです」
■『ワールドビジネスサテライト』 テレビ東京 1988年開始 月〜金23時→月〜木22時、金23時
最高150万円(2004年)→→→ 20%減 →→→ 最高120万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・日本経済新聞社、三井不動産、オービック、伊藤園、KKCompany、REALIZE GROUP※あるパターンの場合。その他偶数日、奇数日で変動)
親会社「日本経済新聞」の強みを生かした経済ニュース番組。番組開始時の司会は、小池百合子と若林宗男。「2021年4月、初めて放送時間が1時間前倒しになりました。攻めの姿勢で、CM料金も好調です」
■月9ドラマ フジテレビ 1987年開始 月曜21時
最高1100万円(2004年)→→→ 70%減 →→→ 最高330万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・花王、大和証券、エステー、サントリー、MENARD、フジパン)
2001年以降、木村拓哉主演の『HERO』の視聴率34.3%を筆頭に、軒並み20%超を記録。2024年は1月期『君が心をくれたから』(主演・永野芽郁)が5.8%、4月期『366日』(主演・広瀬アリス)が5話まで6.3%と、近年は低迷している。今回算出したCM料金の下落率では、放送時間を移行した『TVタックル』と並び、最低の70%となった
■『めざましテレビ』 フジテレビ 1994年開始 月〜金5時25分
最高330万円(2004年)→→→ 43%減 →→→ 最高200万円(2024年)
(直近のおもなスポンサー・LION、ケンタッキーフライドチキン※7時台前半。別パターンと隔日で交替)
「当時、独走していた『ズームイン!!朝!』(日テレ)に殴り込みをかけました」。八木亜希子、高島彩、中野美奈子、加藤綾子ら数々のスターアナを生んだ当時の勢いはないが、30周年を迎えて健闘している
――2004年のおもなCMタレントの年間契約料金――
(契約料金 / 名前)
1億2000万円 / 松井秀喜
1億円 / 明石家さんま、中居正広 、中田英寿、ビートたけし、吉永小百合
9000万円 / 木村拓哉、長嶋茂雄、浜崎あゆみ、タモリ
8000万円 / 所ジョージ、藤原紀香、モーニング娘。、松嶋菜々子、香取慎吾
7000万円 / 高橋尚子、島田紳助、広末涼子、福山雅治、草磲 剛、稲垣吾郎
6000万円 / 飯島直子、後藤真希、柴咲コウ、松浦亜弥、藤本美貴、反町隆史、古舘伊知郎
5000万円 / 矢田亜希子、伊東美咲、小雪、長谷川京子
4000万円 /和田アキ子 、井川 遥、笑福亭鶴瓶、久本雅美
3000万円 / 坪井慶介、坂下千里子、MEGUMI、筧 利夫
2000万円 / 船越英一郎 、ガッツ石松、山田花子
1500万円 / 若槻千夏、井上和香
1000万円 / 小野真弓
――2024年のおもなCMタレントの年間契約料金――
(契約料金 / 名前)
3億5000万円 / 大谷翔平
1億2000万円 / 松山英樹
9000万円 / 福山雅治
7500万円 / 浜田雅功
7000万円 / 井上尚弥、ダルビッシュ有、大泉 洋、堺 雅人、綾瀬はるか
6000万円 / 石原さとみ
5500万円 / 小栗 旬、木村拓哉、鈴木亮平、天海祐希、新垣結衣、有村架純、広瀬すず
5000万円 / 櫻井 翔、松本 潤、サンドウィッチマン、菅田将暉、千鳥、八村 塁、ヌートバー、村上宗隆、芦田愛菜、小池栄子、北川景子、長澤まさみ、吉高由里子
4800万円 / 二宮和也
4500万円 / 佐藤 健、竹内涼真、長谷川博己、渡辺 謙、石田ゆり子、伊藤沙莉、川口春奈、橋本環奈、永野芽郁
4000万円 / 江口洋介、高橋一生、博多華丸・大吉、斎藤 工、今田美桜、上戸 彩、本田 翼
3500万円 / 山田孝之、吉沢 亮、松坂桃李、上白石萌音、黒木 華、多部未華子、浜辺美波、広瀬アリス、吉岡里帆
3300万円 / MEGUMI、山本耕史
3000万円 / 上白石萌歌、小芝風花、田中みな実、芳根京子、向井 理
2700万円 / 生見愛瑠、松下洸平
2500万円 / 奈緒、杉咲 花、生田絵梨花
2400万円 / 磯村勇斗
2200万円 / 堀田真由
2000万円 / 中村アン、河合優実
写真・本誌写真部