イケアの「400円モーニング」に色々おったまげた朝
あの「イケア(IKEA)」でなんとモーニングが食べられる(筆者撮影)
喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。
そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するライター・ブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第77回となる今回、訪れたのは「イケア(IKEA)」です。
飲食チェーンがひそかにしのぎを削っているジャンル、それが「モーニング」です。集客の弱い時間帯である午前中の売り上げを強化すべく、朝の数時間だけ提供される限定メニューは、コスパ抜群かつ店の特色が強く表れ、どれも魅力にあふれています。
今回ご紹介するのはファミリーレストラン「イケア(IKEA)」のモーニングメニュー。400円・600円・800円という手頃な価格の3種類のモーニングプレートは、週末にはオープン直後から行列ができるほどの人気です。
外食の定番は昼休憩に1人でランチ? それとも休日に家族でディナー? そんな固定観念を覆し、たまにはチェーン店で朝食を。
週末のみのスペシャルメニュー!?イケアのモーニングは3種類
「イケア」のモーニング「ブレックファースト&ブランチ」の提供時間は開店から朝11時まで。販売メニューは3種類です。
東京近郊の場合、土日祝のみ10時、平日は朝11時に開店というお店が多いので、実質週末のみ、開店直後の1時間だけ食べられるスペシャルメニューなんです。
【画像】「400円のモーニングプレート」「600円出せばシナモンロールもついてくる!」…超絶オトクなモーニングの様子を見る(16枚)
(筆者撮影)
・モーニングプレート 税込400円
・プラントボール モーニングプレート 税込600円
・ローストビーフ モーニングプレート 税込800円
※ほとんどのお店で取り扱いがありますが、都市型店舗など一部では販売していないようです。
さらに、イケア会員(IKEA FamilyまたはIKEA for Business)になると、税込190円のドリンクバーが無料(都市型店舗を除く)。会員登録も無料なので、事前にスマホアプリで登録しておくとさらにお得です。ホームページには、ドリンクバーの無料サービスは「土日祝・繁忙期を除く」との記載があるのですが、筆者が利用した際は、ドリンクバーは日曜日でも無料でした。
スウェーデンの味を日本各地で楽しむ
イケアはスウェーデンの会社で、日本に上陸した際もレストランのメニューを日本向けに開発せずに、「スウェーデンの味が気軽に楽しめる」というコンセプトで本国と同じメニューを提供しています。
本格的なコーヒーメーカー。実はイケアはオリジナルのコーヒー豆も販売しています(筆者撮影)
そのため、当然と言えば当然なのですが、モーニングも北欧の味がするのです。大して味に差が出そうもないシンプルなメニューでも、日本で食べ慣れた味とは少し違う、以前「バビーズ」で食べた、はっきりこってりした味付けのアメリカのモーニングとも少し違う、なんとも言えぬシンプルで素朴な味わい。
190円のドリンクバーが会員になれば無料。おなじみのソフトドリンクに交じって、エルダーフラワーなど他では飲めないジュースも(筆者撮影)
それがなんともおいしいのです。厳密に言うと、日本でおいしいとされている基準とは、少しずれた感じの味なのですが、たまに食べると新鮮で「これはこれでアリよりのアリだなぁ」という味なんです。
巨大ソーセージが目玉のイケアのモーニングプレート400円
「洋食の朝メニューといえば、まずはパン」という固定観念を打ち破る、パンなしモーニング。税込400円という、ワンコイン以下の価格設定も嬉しいポイントです。
最安値の朝限定メニュー。イケアのモーニングプレート400円(筆者撮影)
メニュー内容は、
・ポテト
・スクランブルエッグ
・ソーセージ
・ベーコン
です。
パンがない以外は、喫茶店やファミレスのモーニングでもおなじみのラインナップです。棒を刺したらフランクフルトになるような大ぶりなソーセージが中央にドーンと乗って400円は、お値打ちです。
イケアのレストランは学食方式で、セルフサービスでお盆を持って並び、自分の順番が来たらスタッフに注文を伝え、あらかじめ調理済みの食材をお皿に取り分けてもらうというシステムになっています。
パンはないものの、けっこうなボリューム。ほんのり温かい状態で提供されます(筆者撮影)
ケチャップはイケアオリジナルブランド
そのため「できたてホカホカ!熱々でウマウマ!」という食事ではありません。ウォーマーで保温した人肌程度のお料理が出てきます。でも、それを見越したうえでメニューを開発しているので、ちゃんとおいしい。
ふわふわとろとろの半熟スクランブルエッグは、ホテルモーニングのような仕上がり。イケアオリジナルブランドのケチャップをかけていただきます。イケアは家具や雑貨の他に食品も扱っているのですが、酸っぱめでフルーティー、あっさり軽いケチャップでした。
ふわふわのスクランブルエッグに、イケアオリジナルのケチャップをかけていただきます(筆者撮影)
すべての水分が抜けた干物のようなベーコンは、ベーコンとジャーキーの中間のような食感です。肉の旨みが凝縮されていて、しょっぱいけどうまい! スクランブルエッグの優しい甘さで緩和しながら、交互に食べました。
ポテトフライはしっかり焼き目がついて外側は香ばしく、皮つきのまま調理しているためしっかりじゃがいもの味が楽しめます。
肉のおいしさが詰まった、素朴な味わいのソーセージ(筆者撮影)
そして、このメニューの目玉である大きなソーセージ。日本のあらびきソーセージの外はパリッとして中はプリッとしている、おなじみの食感とはまったく違いますが、ミンチをみっしり詰め込んだ、独特の重量感とモソモソ感があります。
塩気はけっこうあるものの味は薄味で、素材を大切にした味付けです。噛むほどに旨みが口に広がり、じっくりおいしいソーセージでした。
大人気シナモンロール入りプラントボール モーニングプレート600円
イケアモーニングの大本命が、税込600円のプラントボール モーニングプレートです。
人気メニューが並ぶ、プラントボール モーニングプレート600円(筆者撮影)
メニュー内容は、
・プラントボール 5個
・平飼いスクランブルエッグ
・マッシュポテト
・シナモンロール
です。
公式サイトで確認すると、なぜかマッシュポテトの姿が確認できないのですが、現場にあるメニュー一覧には写っていました。
「ザ・イケア!」なモーニングプレート
イケアの看板メニューである、シナモンロールとプラントボールが乗っている、「ザ・イケア!」な一皿です。イケアは看板商品を激安で販売することで、購買のきっかけをつくるという戦略を取っているのですが、この2品は露骨すぎるほど露骨に目玉感を醸し出しています。
小ぶりながらずっしり重量感のあるシナモンロール。甘くてスパイシーな味わい(筆者撮影)
単品販売で発酵バタークロワッサンが税込250円なのに対して、シナモンロールは税込100円。ミートボール8個が税込890円なのに対して、プラントボールは8個で590円(ほかにプラントベースソフトクリーム税込50円というのもあります)。これを看板商品と言わずして何としましょう。
シナモンロールはまさに北欧の味。甘い甘いパン生地に、スパイシーなシナモンをこれでもかというほどたっぷりとはさみ、上からざらめ糖をふりかけてあります。
うずまきパンにシナモンペーストとざらめ糖がたっぷりはさんであります(筆者撮影)
「甘さ控えめ」とかどこ吹く風、「ほんのり香る」とかクソ喰らえな、ガツンとくるシナモンの風味を堪能できるパンなのです。確かにおいしいのですが、味の癖が強いため毎日食べたいかと言われると微妙ですが、たまに食べるとなんとおいしいことか。
プラントボールは2020年に販売を開始。植物由来の原料だけで作ったミートボールの代替食品なのですが、これがなかなか再現度が高い。このプラントボールを、グレイビーソースとリンゴンベリージャムにからめて食べるのです。
言われなければ、プラントベースと気づかなそう。ヘルシーな植物由来の代替食品(筆者撮影)
私は後にも先にも「イケア」以外でミートボール(厳密に言えば違いますが)を、ジャムで食べたことはありません。さらに付け加えればリンゴンベリージャムもここでしか食べたことない。でも、ミートボールにこっくりしたグレイビーソースと甘酸っぱいジャムは、スウェーデンの風を感じる最高の食べ合わせとしか言いようがなく、間違いないおいしさなのです。
まるでホテルモーニングなローストビーフ モーニングプレート800円
税込800円と、モーニングメニューの中では最も高額なだけあり、まるでホテルモーニングのような満足度のあるメニューです。
レストラン顔負けのローストビーフ モーニングプレート800円(筆者撮影)
メニュー内容は、
・フィレローストビーフ
・クロワッサン
・サラダ
です。
800円のプレートはホテルモーニングのクオリティ
400円、600円のモーニングプレートが、家族やカップルでわいわいシェアして……というイメージなのに対し、これはミドルシニア夫婦が2人でゆっくり食べても満足できる、贅沢な大人のモーニングという感じ。ホテルモーニングのクオリティです。
クロワッサンが特大サイズのためわかりにくいですが、けっこうなボリュームの朝食です(筆者撮影)
「イケア」は実は、ローストビーフとスモークサーモンが、めちゃくちゃおいしいのです。半端なレストランなんて足元にも及ばない、素材もよければ調理も素晴らしい、王道のローストビーフが味わえます。
ローストビーフは厚切りなのに、食べてもあごが疲れない。つまりは肉質がよくて柔らかいので、スッと噛み切れるのです。食べるとじゅわわ〜と肉汁が溢れ、口の中がローストビーフのおいしさで満たされます。絶品!
しっとり柔らかなローストビーフに、ガーリックとオニオンたっぷりの特製ソース(筆者撮影)
ちなみに、単品販売している「フィレローストビーフ」は、税込1690円。その半分ぐらいの量が提供されます。そこに特大サイズのバターの風味豊かなクロワッサンがついて、マッシュポテトとサラダもついてくる。実は「イケア」のモーニングメニューで、一番コスパがいいのはこれじゃないかなと思っています。
朝食目当てで行きたくなる、魅力に溢れたモーニング
「イケア」は日本全国に郊外型の大型店舗を展開する家具店です。数年前からはネット通販にも力を入れ始め都市型店舗も増えてきましたが、ちょっと前までは「来店してもらってなんぼ」だったため、「とにかく店に来てもらわないとスタート地点に立てない」という状況でした。
ドリンクバーには、290円の生ビール自販機もありました(筆者撮影)
店に来てもらうためのきっかけが、本日ご紹介したモーニングです。日曜の朝オープン直後の「イケア」のレストランは大行列ができていました。
休日の朝の1時間だけ食べられるお得でおいしいメニューを目当てに、家族みんなで自家用車で「イケア」に向かう。食べた後はゆっくりお店をまわってもらう。それが「イケア」の戦略です。
もちろん筆者もその戦略にまんまとはまり、「モーニング」の取材に行ったはずが、買う予定のなかったフェイクグリーンやシーツ、チョコレートなど、カバンいっぱいにあれこれ買い込み、50円のソフトクリームを食べ、電車に揺られて帰宅したのは夕方。まる1日かけて「イケア」を満喫したのでした。
編集部注:本記事に登場するメニューの価格は、すべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。また、店舗によってモーニングの値段・内容は異なる場合があります。
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(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)