「本の話」を読んでくださっているみなさん、いつもご愛読ありがとうございます! 「オール讀物」編集部の石井です。

 5人の精鋭(?)でつくっている「オール讀物」の裏話、日ごろ編集部内で起きているよしなしごとについては、note不定期連載の編集部だより「オールの小部屋から」で(ほんとに不定期です。すみません)発信しておりますので、チェックしてみてください!

 こちら「本の話」の月イチ連載「オールの讀みどころ」では、最新号について、どんなところに力を入れたか、渾身の企画を紹介していきます。

 というわけで「オール讀物」5月号。まずは今回が第1回となる「大人の推理小説大賞」決定発表です。


「オール讀物」5月号

 賞というのは知らないうちに存在していて、なんとなく続いているもの、というイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、新たに“つくることのできる”ものなんです! 「オール讀物」編集部は、年1回の公募新人賞のほか、すでに刊行されている書籍を対象に、本屋さんが選ぶ「時代小説大賞」「大人の恋愛小説大賞」という2賞を主催しています。運営のお手伝いをしている賞に、高校生直木賞もあります。これらにまたひとつ(節操なく!?)新たな賞を加えたことになります。

 栄えある第1回「大人の推理小説大賞」は、黒川博行さん『悪逆』(朝日新聞出版)に受けていただきました。選考にあたったのは、日本最強のミステリー書店員である宇田川拓也さん(ときわ書房本店)、栗俣力也さん(TSUTAYA)、三島政幸さん(啓文社岡山本店)の3名。激論の末、満場一致の受賞となりました。


第1回大人の推理小説大賞を受賞した黒川博行さん

「最近、松本清張みたいな書き手はいないの?」

 オール讀物の愛読者でもある練達のミステリーファンからこう尋ねられたことが、「大人の推理小説大賞」を始めるきっかけになりました。昨今は(いささか乱暴な括り方であることは承知しています)特殊設定もの、ホラーやSF要素を含むもの、異能力をもつ名探偵が活躍するタイプのミステリーが多く書かれ、ベストテンに並んでいます。そういうチャレンジングな作品も好きだけれども、たまには刑事が靴底をすりへらして捜査するような、昔ながらの社会派推理小説を読みたい――。こう思っている読者の方は、案外多いのではないでしょうか。

 黒川さんの『悪逆』は、そうした声に真正面からお応えできる、大人の、大人による、大人のための推理小説です。5月号には、黒川さんのグラビア&インタビューとともに、選考会の模様や「大人の推理小説」ブックガイドも掲載しています。『悪逆』とあわせて楽しんでいただけたらと思います。

 同じくミステリ界のベテランに、デビュー35周年を迎えた有栖川有栖さんがいます。有栖川さんの記念すべき節目の年を祝って、有栖川作品を愛する気鋭の作家が参加する、トリビュート企画が発進します。その第1弾が、一穂ミチさん「クローズド・クローズ」。一穂さんが、火村と作家アリスの謎解き世界を描いてくれました。

 他の作家が、有栖川さんの生み出したキャラクターや世界設定を自由に使って小説を書いたらどうなるのか? 私自身、まったく予想がつかないこの企画。一穂さんの作品を皮切りに、これからどんどん新作が登場する予定です。今後の展開に乞うご期待! 企画のスタートを言祝ぎ、有栖川有栖さんと一穂ミチさんの記念トーク「私の中の火村とアリス」も掲載しております! こちらでトリビュート企画に参加予定の作家のお名前も発表していますので、ぜひお手にとって誌面をご覧ください。

 先日、八月の御所グラウンドで第170回直木賞を受賞された万城目学さん。早くも受賞第1作となる「三月の局(つぼね)騒ぎ」(前編)が登場です。うだつのあがらない大学生の夏休みを描いた受賞作に続き、今回も舞台は京都。いっぷう変わった学部生専用女子寮が描かれます。2001年、近いようで遠く、遠いようで近い古都の学生生活――。万城目さんの筆さばきをどうかお楽しみに!

 陰陽寮の学生(がくしょう)時代、若き安倍晴明を描いた映画「陰陽師0」が大ヒット上映中です。映画公開を記念し、グラビア企画「見る『陰陽師』食べる『陰陽師』」ほか、夢枕獏さん陰陽師最新作「ひもひめ」木下昌輝さん「道満の送り火」武川佑さん「首二ツ」と、豪華陰陽師競作をお届けします。


若き日の安倍晴明を山粼賢人さんが熱演/©2024映画「陰陽師0」製作委員会

 連休明けに公開を控えているのが劇場版「鬼平犯科帳 血闘」。親子で鬼平を演じる松本幸四郎さん×市川染五郎さんにご登場いただいて「荒ぶるシン鬼平」を語ってもらったほか、〈時代を描く人気シリーズ〉として、朝井まかて高瀬乃一遠田潤子織守きょうや各氏の新作を掲載しています。


シン鬼平を演じる松本幸四郎さん(右)と市川染五郎さん

「大人の推理小説特集」では、赤川次郎石田衣良大山誠一郎長岡弘樹五十嵐律人各氏の新作読み切りに加え、佐々木譲中山七里真山仁さんたち“大人の連載陣”も重厚な布陣。

 さらに「大人の新連載コラム」として、TBSテレビ「クレイジージャーニー」でもおなじみの危険地帯ジャーナリスト・丸山ゴンザレスさん「無法者(アウトロー)たちの晩餐」が始まります。第1回は「工藤會との会食」。こわいのでこれ以上は内容に言及できません……。


丸山ゴンザレスさん

 コラムと言えば東海林さだおさん「晩年を生きる」は「男の分別学」史上に残る傑作です! 小説からコラムに至るまで、とにかく楽しい1冊になった「オール讀物」5月号をどうぞよろしくお願いいたします!


東海林さだおさん「晩年を生きる」より


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