掲載:THE FIRST TIMES

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■「『Spicy Sessions』って感覚としてはテレビ収録っていうより、ライブに近い。歌は生き物だから」(ゴスペラーズ黒沢薫)
CS放送TBSチャンネル1で2023年12月にスタートした、黒沢薫(ゴスペラーズ)と中西アルノ(乃木坂46)がMCを務める音楽番組『Spicy Sessions』。1月末に行われた、2月、3月放送回の収録を、ゴスペラーズをデビュー当時からよく知り、数々のアーティストのオフィシャルライターを務める音楽ライター・伊藤亜希が取材。収録後のMCインタビューと合わせて、始まったばかりの『Spicy Sessions』が放つ“刺激”とは何かを伝える。

■収録レポート
2023年12月にTBSチャンネル1でスタートした音楽番組『Spicy Sessions』。黒沢いわく「番組収録というよりライブに近い感覚」というこの番組では、観客を前にボーカリストとバンドメンバーによる“刺激的なセッション”が繰り広げられる。

1月末に行われた2回目、3回目放送の収録には、それぞれ1,000通を超す観覧応募があったそうだ。音楽好きの中で注目を集めるこの番組について、収録現場の様子やその裏側、黒沢薫と中西アルノ、両MCの同番組に対する思いなども含め、この番組の“刺激”とは何かを紹介していきたい。

メインMCである黒沢薫は、同番組のホストアーティストとしての役割も担う。ゲストとのミーティングにも参加し、相手の意向を尊重しながら歌唱の候補曲を決めている。毎回ソロ歌唱がある中西アルノは、自分自身で楽曲をセレクト。楽曲が決まった時点でバンドマスターを務める佐藤雄大が楽曲のアレンジを制作。黒沢は佐藤に、アレンジのイメージや大枠を伝え、細かい調整は本番の収録中、バンドメンバーやゲストと相談しながら仕上げていく。さらに黒沢は本番中、譜面を見ながら歌のパート割り、ハーモニーの振り分け、中西アルノへのボーカリゼーション(発声法)や歌へのアプローチに対するアドバイスなど、会話と音でセッションしながら、歌を作りあげていく。

この様子を観客が間近で観られるのが『Spicy Sessions』という音楽番組の最大の刺激だ。曲の制作過程から、1曲を歌い終えるまでのドキュメントが、観客の目の前で繰り広げられ、そのまま放送もされる。

ゲストミュージシャンの音楽的ルーツに、トークで切り込んでいくのも『Spicy Sessions』ならではの刺激と言えるだろう。黒沢は、自らはR&B(特に90年代のアーバンなR&B)がルーツにあると言っているが、音楽リスナーとしてはかなりの雑食で、時代を問わずに様々な音楽を聴いている。いいと思ったらディグるマニアぶりもある。

2回目の放送で、中西のソロ歌唱曲「思い出が止まらなくなる」(乃木坂46)を、テンポを落とし、70年代後半のニューミュージック・シティポップスにリアレンジしたのは黒沢のアイデアだ。その理由を彼は「曲調はとてもアイドルっぽいけど、歌詞の内容は切なさもあり哀しさもある。そう考えるとシティポップだなと解釈して、番組オリジナルのアレンジを施してみました」と語っていた。この黒沢の解釈を理解し、本番収録中の「サビの部分は“はい、サビ来た!”って感じで変えるんじゃなくて、その前とつながるように歌ってみて」という、黒沢からの突然のアドバイスにも見事に応えた中西の歌声にも注目してもらいたい。

加えて、中西はクリス・ハート(2回目ゲスト)とKiroro「未来へ」、Penthouseの大島真帆(3回目ゲスト)とDREAMS COME TRUE「やさしいキスをして」をセッション。それぞれのセッションについて、中西は「クリス・ハートさんには、最初に引っ張っていただいて。それで落ち着いて歌うことができました。(声の)重なりが綺麗に感じられて気持ち良かったです。Penthouseの大島さんと歌わせていただいたときには、ユニゾンの最後の一音の消えるところまでぴったり一緒で、気持ちが同じ方向に向いていると肌で感じられて、すごくうれしかったです」と感想を述べた。