パレスチナ自治区ガザ市内で、死者の名前を示す札が立てられた仮設の墓地の中を歩くパレスチナ人の少年(2024年1月9日撮影)。(c)AFP

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【AFP=時事】イスラエルとイスラム組織ハマス(Hamas)の紛争が激化しているパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)では、死者も安らかに眠ることを許されない。遺体はイスラエル軍によって掘り起こされ、病院や学校の敷地内に取り急ぎ埋葬されるケースも後を絶たない。

 ガザ市(Gaza City)アルトゥファ(Al-Tuffah)地区では、布に包まれたパレスチナ人の遺体が墓から引きずり出され、地面に放置されていた。

 今月、同地区を訪れたAFPカメラマンによれば、イスラエル軍はブルドーザーを使って墓地から遺体を掘り起こしていた。

 ハマスが実効支配するガザの宗教当局は、イスラエル軍によって荒らされるか破壊された墓はガザ全域で2000基以上に上るとしている。

 イスラエル軍はAFPに対し、「決して墓地を標的にしているわけではない」と主張。ただし、「他の民間施設と同様、紛争中に墓地や霊園が結果的に損傷を受ける可能性はある」と説明した。

 兵士が墓から遺体を強奪しているという疑惑については、「人質の遺体があるかもしれないという情報を受けた特定の場所」での行為だとし、「人質ではないと判断された遺体は、尊厳をもって返還している」と回答した。

■「死者の尊厳を踏みにじるなんて」

 一方、ガザ中部デイルアルバラ(Deir al-Balah)で、避難してきたパレスチナ人で混み合う学校で取材に応じた女性は、北部にあるジャバリア(Jabalia)難民キャンプで墓地が荒らされている動画をソーシャルメディアで見たと話した。

 この墓地には父親と祖父母、親族が埋葬されているため、「心臓が止まるかと思った」と言う。

「墓を掘り起こし、死者の尊厳を踏みにじるなんて、よくもあんなまねができるものだ」と憤った。

 戦闘は依然として続いており、墓地を訪れることができずにいる市民も多い。そのため、身内を亡くしても、取りあえず近場で埋葬せざるを得ない状況だ。

 マガジ(Al-Maghazi)難民キャンプの中心部で避難所代わりになっている学校にいた女性は、校庭の砂地に触れた。ここに娘を埋葬したのだという。

 学校の敷地がロケット弾で攻撃され、ガスボンベが爆発。「娘は私の腕の中で亡くなった」と話した。

◼️戦争が終わったら、きちんと葬りたい

 AFP記者は、ガザ全域で集団墓地を目にしてきた。

 ガザ最大のシファ(Al-Shifa)病院の敷地内には、石や枝で区切られた墓がずらりと並んでいる。

 敷地内に設置されたテントで家族と生活している男性(46)は、「墓地に(埋葬に)行けば、(イスラエル軍に)爆撃され、私たちも死んでしまうかもしれない」と話した。

 22歳の息子は、この病院に戻って来る途中でイスラエル兵に射殺された。

「息子の墓に目印を付けたが、病院の敷地が墓でいっぱいになり、どれが息子の墓か見分けが付きにくくなった」と話した。

 ガザの人々は、戦争が終結すれば、亡くなった家族をきちんと埋葬できるのではないかと期待している。

 カタールの衛星テレビ局アルジャジーラ(Al Jazeera)のガザ支局長を務めるワエル・ダハドゥ(Wael al-Dahdouh)氏は、同局で記者として働いていた息子のハムザ・ダハドゥ(Hamza Wael Dahdouh)氏をイスラエル軍の空爆で失った。その時は、南部ラファ(Rafah)の集団墓地に埋葬する以外に「選択の余地がなかった」と話す。

「この戦争が終わったら、息子をガザ(市)の墓地に移すつもりだ。私たち家族の近くに埋葬し、息子の元を訪ねて祈りをささげられるようにしたい」と語った。

【翻訳編集】AFPBB News

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