フルモデルチェンジにより、3代目に進化したホンダの軽自動車「N-BOX」(写真:本田技研工業)

2023年10月に3代目となる新型が発売となった、ホンダ「N-BOX」。軽自動車の枠にとらわれず、今や日本一売れている車種となったN-BOXだが、新型はキープコンセプトながら細かな部分でブラッシュアップが図られ、旧型ユーザーが乗り換えても満足できる仕上がりとなっている。

ただし、エントリー価格は先代の146万8500円から164万8900円になり、一見すると値上がりしてしまったようにも思える。では実際のところはどうなのか? オススメグレードとともにチェックしていこう。

実際のところ、価格はアップしているのか?


ホンダN-BOXのインテリア(写真:本田技研工業)

旧型のエントリーグレードと新型のエントリーグレードとの価格差はおよそ18万円アップとなっている。ただ新型は、旧型に対して助手席側パワースライドドア、前席用i-サイドエアバッグシステム+サイドカーテンエアバッグシステム(前席/後席対応)、充電用USBジャック、運転席ハイトアジャスター、ロールサンシェードなど、N-BOXユーザーであれば欲しいと思えるアイテムが標準装備となっているため、単に値上がりとは言えないというのが事実だ。

実際、旧型と装備内容に差のない新型N-BOXカスタムのエントリーグレードでは、値上がりが2.5万円ほどと、機能拡充が図られているにもかかわらずほぼ据え置き価格と言ってもいいような内容に収まっているのだ。


ホンダN-BOXのフロントシート(写真:本田技研工業)

従来型は通常のベンチシート仕様とスーパースライドシート仕様、そしてスロープ仕様と3つのシートタイプがあり、それに標準モデルとカスタム、ターボと自然給気のエンジンなど、組み合わせが豊富となっており、やや選びにくい状態とも言えるグレード構成だった。

一方、新型は、スーパースライドシート仕様が消滅し、ベンチシートとスロープ仕様の2種類となり、ターボはカスタムのみのラインナップとなった。


ファッションスタイルの外観(写真:本田技研工業)

グレード体系もシンプルで、標準モデルとカスタムにはベースグレードがあり、ちょっと個性をプラスしたい人向けに標準モデルには「ファッションスタイル」、カスタムには「コーディネートスタイル」を用意。

カスタムに用意されるターボモデルも自然給気エンジンと同じく、ベースグレードとコーディネートスタイルが用意され、スロープ仕様は標準モデルとカスタムに自然給気エンジンを搭載した1グレードのみが設定される。


カスタムのコーディネイトスタイル(写真:本田技研工業)

つまり、ターボモデルが欲しければカスタム一択となり、ちょっと華やかさが欲しいという人は標準モデルのファッションスタイルかカスタムのコーディネートスタイルを選ぶという形で、スロープ仕様は標準モデルとカスタム、好みのスタイルを選ぶということになる。

なお、全グレードに2WDと4WDが用意されているので、必要に応じて選ぶことができる。価格差は13万3100円だ(スロープは非課税となるため12万1000円)。

N-BOXにターボは必要?


新型N-BOXに搭載されている自然吸気エンジン(写真:本田技研工業)

新型ではカスタムのみの設定となったターボエンジンモデル。カタログ上の出力の数値では、自然給気モデルが43kW/65N・mなのに対し、ターボモデルは47kW/104N・mとなっている。

一方の燃費は、自然給気モデルが21.5km/L(カスタムのベースグレード)なのに対し、ターボモデルは20.3km/Lと、そこまで違いはないというのが正直なところだ。

カスタムとカスタムターボでは、ターボ以外にも装備差があるため、装備差のないコーディネートスタイルで比較すると11万円高となるわけだが、果たしてN-BOXにターボは必要なのだろうか?


新型N-BOXに搭載されているCVT(写真:本田技研工業)

新型となったN-BOXはエンジンこそ据え置きだが、制御の見直しやCVTの改良などが施されたため、自然給気エンジンでも1〜2名乗車で街乗りをしている限り、大きな不満が出ることはないだろう。

しかし、多人数乗車をする機会が多い、または山坂道が多い地域で乗る場合、高速道路での移動が多いというユーザーにとっては、やはりターボモデルの余裕の出力は大きな魅力になる。燃費が気になるユーザーも多いかもしれないが、ターボ車はパワーがあるぶん、アクセルを踏み込む量も抑えられ、実燃費は大きな差とはならないハズで、余裕があればターボモデルがオススメということになる。

ただし、新型N-BOXの標準モデルには、ファッションスタイルという魅力的な組み合わせの仕様が存在しているため、標準モデルにもターボモデルが復活することを希望しているユーザーも少なくないのではないだろうか。

メーカーオプションはどうする?


新型N-BOXのサイドビュー(写真:本田技研工業)

新型N-BOXはメーカーオプションがグッとミニマムとなり、標準モデルに設定される「コンフォートパッケージ(10万100円)と、カスタムとカスタムターボに設定される「マルチビューカメラシステム(7万2600円)」、そしてカスタムに設定される「右側パワースライドドア(6万6000円)」の3種類のみとなった(スロープには設定なし)。

この中でコンフォートパッケージは前席シートヒーター、右側パワースライドドア、左右独立式リアセンターアームレスト、コンビニフック付シートバックテーブル、オートリトラミラーがセットで装着される。そのため、標準モデルを買うのであれば、コンフォートパッケージは積極的に選びたいオプション装備になる。


N-BOXのスロープ仕様車(写真:本田技研工業)

一方、マルチビューカメラシステムは、真上から見下ろしたような「グラウンドビュー」という映像など、状況に応じた映像が映し出されるもので、こちらは必要に応じて選べばよいだろう。


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新型となってグレード体系もシンプルとなり、メーカーオプションも厳選された結果、より標準状態で装備が充実した新型N-BOX。このぶんだとまだまだ王座は安泰と言えそうだ。

(小鮒 康一 : フリー(ライ)ター)