災害時に停電などがあった場合は、スマホのバッテリーを温存しておくようにしたい。写真はスーパーバッテリーセーバーを設定したPixel 8と、省電力モードにしたGalaxy Z Fold5(筆者撮影)

1月1日に発生した能登半島地震では、モバイル通信のネットワークも寸断された。基地局をネットワークにつなげるための光回線が切断されたり、停電で基地局を駆動できなくなったりしたのが、その一因。基地局そのものが倒壊してしまったケースもある。各社とも、移動基地局車や船上基地局、衛星回線を活用し、徐々にエリアは復旧しているが、本稿執筆時点の1月10日時点でも、震災前の水準には戻っていない。

災害時に使える「バッテリー節約方法」

一方で、地震発生直後は非常用バッテリーで基地局を駆動させ、エリアが維持されるケースも多いため、停電時でも通信できることがある。この場合、スマホは情報収集のための有力なツールになりうる。安否情報などを家族や友人に伝えるためのコミュニケーション手段としても活躍する。とは言え、災害時には停電が発生してしまうおそれもある。その意味では、できる限りスマホのバッテリーは温存しておきたい。

このようなときに役立つのが、設定の変更や省電力モードなどの機能だ。Androidスマホには、震災時を想定して、バッテリーの消費を極力抑えるような機能が用意されている。また、基地局のトラブルで圏外になってしまったときには、フライトモードへの変更もバッテリー消費を減らす一助になる。今回の震災に限らず、日本は地震や台風による水害などの災害が多い国なだけに、スマホのバッテリー温存術は頭の片隅に入れておいたほうがいいだろう。ここでは、その方法を紹介していく。

手っ取り早くバッテリーを節約したいときには、電力消費の大きい部分を対策するといい。スマホの中で、節約できる余地が大きいのはディスプレイだ。元々、ディスプレイはバッテリーの消費量が大きいうえに、明るさを下げても表示することは可能。屋内で使用するのであれば、普段より明るさのレベルを下げることで視認性をある程度保ちながらバッテリーを節約できる。また、使い終わったらなるべく早めに画面を消灯しておきたい。

ディスプレイ設定の変更でバッテリーを節約

このような設定は、「ディスプレイ」や「画面」などの項目で変更することが可能だ。グーグル純正スマホの「Pixel 8」の場合、「設定」アプリの中に「ディスプレイ」という項目があるので、ここを開く。明るさの変更をしたいときには、「明るさのレベル」をタップしよう。ここをタップすると、画面上部にスライダーが現れる。これを左方向にドラッグすると、画面が暗くなる。

また、同じ画面に「明るさの自動調節」という項目もある。これは、環境光の強さに応じて、ディスプレイの明るさを変える機能。この機能がオンになった状態でスライダーを動かすと、最適な明るさとして学習してしまう。また、明るい場所に行くと、画面が見やすくなるよう、自動でディスプレイの照度を上げてしまう。緊急時にバッテリーを節約したいときには、この設定も合わせてオフにしておくといい。


ディスプレイ設定で、利用に支障のない限界まで明るさを下げておく。点灯時間を短くするのも有効な設定だ(筆者撮影)

使い終わったあと、すぐにディスプレイを消灯することもバッテリーの節約につながる。基本的には、スマホを使い終わったら電源キーを押すだけでいいが、そのまま放置してしまった場合のことを考え、消灯までの時間は短くしておくといいだろう。Pixel 8では、「設定」の「ディスプレイ」にある「画面消灯」で、その時間を変更することができる。最短の時間は15秒なので、これに変更しておくといい。同時に「スクリーンアテンション」を有効にすると、ユーザーが画面を見ている間は自動で消灯されなくなる。

一部端末は、常時表示ディスプレイも搭載されているが、これもバッテリーを消費してしまう。例えば、Pixel 8は常時表示ディスプレイに対応しており、時間や通知などの各種情報を常に画面に表示することが可能だ。有機ELで点灯する部分を最小限に抑えているため、消費電力は少なくなっているものの、いざというときに必要のない情報であればオフにしておいたほうがいい。Pixel 8の場合、「設定」の「ディスプレイ」にある「ロック画面」で、常時表示の設定を変更できる。他の端末にも似たような機能があるため、あらかじめ設定を見直しておくことをお勧めしたい。

ほとんどのAndroidスマホには、災害時など、バッテリーの消費を最小限に抑えたいときのために、必要最小限の機能だけに設定を一括で変更する機能が搭載されている。端末によって設定できる機能や名称は異なるが、これを活用するのも手だ。例えば、Pixel 8などのPixelシリーズには強力にバッテリーを節約する「スーパーバッテリーセーバー」と呼ばれる機能がある。Galaxyシリーズにも、多くの端末に「省電力モード」があり、設定を変更するとホーム画面を緊急用のものに差し替えることが可能だ。

アプリの使用も抑えて電池を長持ちさせる

Pixel 8の場合、設定は「設定」アプリの「バッテリー」にある「バッテリーセーバー」で行う。バッテリーセーバーには2つの仕様がある。1つが通常のバッテリーセーバー、もう1つが災害時などに活用するスーパーバッテリーセーバーだ。後者はより強力な制限がかかる。視覚効果を抑えたり、バックグラウンドでのアプリを制限したりする通常のバッテリーセーバーに加え、必須アプリ以外の動作や通知を停止する機能が備わっている。


Pixel 8にはアプリの機能も停止するスーパーバッテリーセーバーが搭載されている。オンにしておくと、節電効果が高まる(筆者撮影)

ただし、LINEやMessengerなど、連絡を取るためのアプリまで制限をかけてしまっては本末転倒だ。このようなときには、必須アプリを追加することで制限を外すことができる。「スーパーバッテリーセーバー」の横にある歯車マークをタップしたあと、画面で追加したいアプリの横の「+」をタップすると、必須アプリとして追加が可能。災害時に設定するのは難しいため、あらかじめ設定を見直しておくといいだろう。

また、Galaxyシリーズは、省電力モードを細かく設定することが可能だ。先に挙げたような常時表示の「Always On Display」を自動でオフにできたり、画面の明るさを10%下げたりと、細かな設定メニューが用意されている。省電力モードで、5Gをオフにすることも可能だ。さらに、「アプリとホーム画面を制限」という項目をオンにすると、バッテリーの消耗を最大限抑えることができる。

この項目をオンにすると、ホーム画面が切り替わり、画面には電話やブラウザ、SMSを扱う「+メッセージ」など、一部のアプリしか表示されなくなる。壁紙やウィジェットも消え、バッテリーの消費を最小限にする仕組みだ。この画面上で「+」をタップすれば、アプリを追加できるため、連絡で使うようなアプリは追加しておいたほうがいいだろう。端末によって機能には差があるが、バッテリー節約効果は高いので、いざというときのために覚えておきたい。

能登半島地震では徐々に復旧している携帯電話の基地局だが、災害時には、通信が途絶してしまうことがある。電源喪失や光回線の切断など、理由はさまざま。災害の直後は通信できたとしても、基地局が搭載していたバッテリーが切れてしまい、後から圏外になるケースもある。もしスマホが圏外になってしまい、充電もできないという状況であれば、バッテリーを節約するため、フライトモードに切り替えておいたほうがいい。

通信不能になったときはフライトモードに

圏外になったとき、スマホは利用できるネットワークがあるかどうかをサーチするからだ。これが、バッテリーの消費量を増やしてしまう。また、Wi-Fi接続時も、電話やSMSを着信できるよう、ネットワークサーチを繰り返している。アンテナマークが圏外表示になっていたら、ひとまず設定をフライトモードに切り替え、その後Wi-Fiを再度有効にするといいだろう。フライトモードは無線関連の機能を完全にオフにするため、有効な方法と言える。

Pixel 8の場合、フライトモードは通知の上部にあるクイック設定で呼び出すことができる。また、設定アプリから「ネットワークとインターネット」を開き、「機内モード」をオンにしても有効になる。フライトモード中もWi-Fiは有効になるため、固定回線が生きているようなときには、再度オンにしておこう。また、いったんフライトモード中にWi-Fiをオンにすると、再度設定した際に、Wi-Fiがオフにならない。これは、航空機内などでの利用を想定した仕様だ。


フライトモードにしながらでも、Wi-Fiは利用できる。基地局につながらない場合に役立つ設定だ(筆者撮影)

ただし、フライトモードのままだと、基地局が復旧したかどうかがわからないため、定期的に解除して状況は確認したほうがいい。また、デュアルSIMを設定していたとき、片方だけが圏外になってしまったような場合は、そちらをオフにしておくといい。これも、ネットワークサーチの回数を減らせるため、節電につながる。Pixel 8の場合、「設定」の「ネットワークとインターネット」を開き、「SIM」でオフにしたいほうの回線を選択。「SIMを使用」のスイッチをオフにすると、その回線が無効になる。

カメラのフラッシュライトを懐中電灯代わりに使えたり、キャッシュしてあるマップを見ることができたりと、通信がつながっていない状況でもスマホは役に立つことがある。電源をオフにしてしまうと、起動までに時間がかかるうえに、バッテリーも消費するため、まずはフライトモードで様子を見つつ、スマホを温存するようにしたい。


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(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)