フリマアプリで「詐欺被害」が増えているという(写真: loveshiba/getty)

フリマアプリで「すり替え詐欺」が行われていることをご存知だろうか。

偽物にすり替えて返品し本物を騙し取ったり、中身が違うものを偽って販売する詐欺だ。

すり替え詐欺の実態と対策までを解説したい。

本物なのに「偽物だから返品を」のワケ

中古販売店では、不用品を販売しても大した値がつかないことも多い。それに比べて高額で売れることが多いため、フリマアプリを利用する人は多いだろう。ところがこれを悪用し、すり替え詐欺が行われている。

ある20代女性は、4年前に購入したブランドバッグをフリマアプリで出品。無事購入されたが、その後、「中古品買取店で偽物と鑑定されたので返品したい」との連絡がきて驚いた。さらに、「警察に通報後に着払いで返品」または「取引キャンセル後にこちらで廃棄」を求められてしまったのだ。

「正規店で買ったレシートもあるし、間違いなく本物」というその女性は、周囲に相談したところ、「返品詐欺では」と指摘されてしまった。「返品に同意すると偽物が送られてくるらしい。それでは自分のバッグも戻ってこないし、お金も入ってこない」と頭を抱えたそうだ。

運営会社に相談したところ、売れた金額分の入金は保証された。しかしバッグは戻ってこなかったうえ、相手には特に処分などもなかったそうだ。

「そのユーザーとやり取りしていた他のユーザーと連絡を取ったところ、まったく同じやり取りで騙されていた。履歴を見ると相手は大量にそのブランド品を売っており、仕入れ目的で騙されたのではないか」と悔しがる。

運営会社に相談すれば、返金、返品対応などはしてもらえる。しかし、相手が意図的にすり替えたことが証明できない以上、相手を罰するとか自分の商品を取り返すなどは正直難しいだろう。

空き容器を購入し高級化粧品として販売も

中身をすり替えて売るタイプの詐欺も行われている。「美容液をフリマアプリで買ったら、いつもと匂いが違うし水っぽくて、すぐに偽物とわかった」とある30代女性は眉をひそめる。「しつこくやり取りして返金はしてもらったけれど、納得がいかない」。

「そのユーザーはその美容液の空き瓶を大量に購入していたので、安いものを詰め替えて売っていると思う。他のユーザーは気づいていないようだったが、最近も空き瓶を買っていたので、これからも出品されるのでは。運営会社に連絡したけれど対応してもらえない」

中身のすり替え詐欺とも言うべきこのような事件は、過去にも何度も起きている。2020年には、高級化粧品SK-IIの空き瓶に100円ショップの化粧水を入れてフリマアプリで販売し、18歳の少年が逮捕されている。少年は70件くらい行っていた。2022年にも、「メラノCC薬用しみ集中対策プレミアム美容液」の偽物をフリマアプリで販売した女が逮捕された。女の自宅からは、同商品の偽物が1600個押収されたそうだ。

フリマアプリでは、「肌に合わなかった」「色が好みと違った」などの理由で使いかけの化粧品を出品するユーザーがおり、そのようなものを安いからと気にせず買うユーザーもいる。そのような実態を悪用されたというわけだ。

30代の女性は、「高い化粧品でも安く手に入るし、気軽に試せるので(フリマアプリでの入手は)気に入っていた。使いかけでも抵抗がなかったけれど、開封済みのものが怖くなった」という。

筆者も過去に類似の事件を取材したことがある。空き容器を大量に購入し同時に同ブランドの化粧品を大量に出品していたあるユーザーは、「新品未使用だが箱はない。ボトルに傷があるため格安で出品」としていた。かなり疑わしいが、メルカリの利用規約でも、「転売等の営利を目的とした商品の購入」が禁止事項から削除されており、売れるものなら何でも売ることが許されている。

少なくとも、肌につける化粧品や口に入れる食品などは、健康被害などにつながるリスクもある。開封済みの信頼できないものは購入せず、多少割高になっても正規店で買うのが安心だろう。

空箱を偽って高額で売る例も

このようなトラブルは、高級洋酒などでも起きている。未開封のもらいものの洋酒をフリマアプリで販売したところ、「開封済みで半分しか入っていなかった」と難癖をつけられたユーザーがいる。驚いて取引キャンセルに応じてしまい、商品を失いお金も入ってこなかったそうで、詐欺だった可能性が高い。不慣れだったとは言え、運営事業者に相談してみるべきだっただろう。

中身のすり替えという意味では、こんな事件も起きている。2023年10月、メルカリにポケモンのトレーディングカード2箱を出品した23歳の男が詐欺の疑いで逮捕されている。高額で希少なカードが入っていないのに封入されているかのように装い、購入した男性から代金約14万あまりを騙し取っていたのだ。男は開封済みの箱にフィルムを張って出品しており、「相手も開封しないからわからないと思った」という。

フリマアプリでは、相手の説明を信じて取引をするしかない。相手が偽っていたり、意図的に誤解を招くようにしていれば、騙されてしまいかねないのだ。

なお、2017年には、誤って購入されることを期待して、家庭用ゲーム機や電子機器の「箱のみ」「写真のみ」を高額で出品しているユーザーがいることをメルカリが警告している。これも、商品説明をよく確認し、相手の信頼性を確認して取引するべきということになる。


「箱のみ」「写真のみ」を高額で出品しているユーザーがいることを警告するメルカリの投稿(画像:メルカリ公式X)

「すり替え防止対策済み」うたいタグ活用も

すり替え防止には、どのような対策をすればいいのか。まず基本として、取引履歴やレビューなどで確認し、取引相手が信頼できるかどうか確認しておく必要がある。また、製造番号などを控えたうえで、細部まで撮影し、購入時のレシートなども保管してすり替えを証明できる証拠を保存しておくことも大切だ。

フリマアプリ「楽天ラクマ」は、すり替え防止対策としてプロテクションタグの利用を勧めている。プロテクションタグとは、切断以外に外すことができないタグであり、一本50円ほどで入手できる。あらかじめつけて配送することで、すり替え対策となるというわけだ。ブランド品などの高級品を出品する場合は、うまく利用するといいのではないか。


「すり替え対策済み」記載出品例(筆者撮影)

最近は、「すり替え対策実施済み」などとうたうアカウントも増えてきた。タイトルにうたうものもあるが、タイトルには文字数制限があるため、商品説明文内に入れている場合も多い。

「すり替え防止対策のため、製造番号を控え、商品写真を数十枚撮影している」「正規品のみ販売しているが、万一偽物とお問い合わせがあった場合は、事実確認のうえ対応する。鑑定店舗、店舗電話番号、担当者名もご連絡を」などの記載をすることで、すり替えの抑止につながるかもしれない。

不用品を売ってお小遣い稼ぎができることで人気のフリマアプリだが、販売する側も購入する側も、詐欺やトラブルに巻き込まれるリスクがある。普段からどのようなトラブルが多いかを知ることで、対策できることも多いはずだ。個人間取引はそもそもトラブルが多い傾向にあるので、普段から注意して利用してほしい。

(高橋 暁子 : 成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト)