令和6年能登半島地震は北陸を中心に広い範囲に大きな揺れをもたらした(写真:共同通信社)

新年を迎えて早々、石川県能登地方を中心に最大震度7をはじめとする地震が断続的に北陸を襲った。世界各国のメディアも速報。被害が拡大する中、被災地への心配や無事を祈る声が広がっている。

北陸は電子機器産業の重要地

経済や産業面でも、「電子機器のサプライチェーンへの大きな影響を懸念している」(台湾の電子機器受託製造企業幹部)との指摘がある。北陸には液晶パネルを生産するジャパンディスプレイ(JDI)の石川工場、東芝の半導体製造拠点やKOKUSAI ELECTRICの半導体製造装置の生産工場がある。電源大手のサンケン電気も石川県に国内最大のパワー半導体製造拠点がある。

ほぼすべての電子機器に使われるのが積層セラミックコンデンサー(MLCC)という電子部品だ。世界シェア約4割を持つ電子部品大手の村田製作所ではMLCCの主力工場のひとつが福井県に所在している。同社では、ほかにも電子部品の生産拠点が石川県や富山県にあり、影響の大きさが懸念される。

村田製作所広報は「工場は正月休みだったため、稼働はしていなかった。設備への被害状況は従業員の安全確保を優先しながら、確認中である」と回答した。実際、多くの企業では正月休みで従業員もほとんどいなかったことから、1月1日時点では生産設備への被害状況や事業への影響はまだ不明である。

JDI広報は「石川工場、鳥取工場とも生産現場は稼働していなかった。従業員の8割から影響なしとの連絡がある。一部従業員が避難しており予断を許さない状況」と説明。東芝も「状況を確認中」だ。

石川県にモーターの生産拠点などを持つパナソニックホールディングスは地震発生から1時間半後の状況として、石川県、福井県、富山県、新潟県で勤務・居住する従業員の94%の安全確認が完了したと回答。物的被害についても「現時点では当社拠点の被害情報の報告はない」とした。KOKUSAI ELECTRICは「社内で確認してもらっている最中だが、今のところ現場から(大きな混乱があるなどの)情報は入ってきていない」と答えた。

生産設備への影響を心配する声も

ある電子部品企業の首脳は「揺れの規模を考えれば、生産設備への影響は大きいだろう。社内には危機対応チームの編成を指示し、従業員の安全を十分に確保してから影響を精査し、顧客へ速やかに説明していきたい」と明かした。

地震はなお相次いでいる。気象庁も、今後1週間程度は大きな地震が続く恐れがあり、特に今後2〜3日は最大震度7程度の地震に注意するよう呼びかけている。

企業としては従業員の安全確保が最優先である。事業やサプライチェーンへの影響が判明するまで時間がかかるだろう。エレクトロニクス産業の関係者からは注目が集まる地域のひとつでもあり、懸念の声が相次ぎそうだ。

(劉 彦甫 : 東洋経済 記者)
(石阪 友貴 : 東洋経済 記者)
(梅垣 勇人 : 東洋経済 記者)