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前後のライトを一新 空気抵抗を低減

売れ筋の主力車種だとテスラが認める、モデル3。発表が2016年、発売が2017年だったことを考えると、フェイスリフトを受けても良い時間が過ぎている。

【画像】主力車種の競争力を強化 テスラ・モデル3 同等サイズのEVサルーンと比較 モデルYも 全131枚

エントリーモデルとして成功といえる結果を残すが、その内容を確認すれば疑問は抱かないだろう。航続距離はライバルと同等以上で、急速充電能力も秀でている。身のこなしは敏捷で、テスラの中では最も自然な操縦性を備えている。


テスラ・モデル3(欧州仕様)

2023年には販売価格が大幅に見直され、お手頃になった。シングルモーターで良ければ、ひと回り小さいハッチバック、新しいヴォグゾール(オペル)・アストラ・エレクトリックと殆ど違わない予算で選べる。

そんな実力派のフェイスリフト版を確認していこう。テスラは、ユーザーの要望を受け、主要部品の50%以上へ改良を加えたと説明している。そのかわり2024年以降、1000ポンド(約18万円)から2000ポンド(約36万円)ほど値上がりするらしい。

最もわかりやすい変化は、フロントマスク。ヘッドライトは造形が一新されただけでなく、光量も増強され、フォグライトが不要になったそうだ。それによりフロントバンパーの形状を改め、空気抵抗の低減にも繋げたという。

テールライトは、点灯パターンがCの形に変更。エイのようなTのロゴは、TESLAという文字の並びに置き換えられている。ボディカラーはレッドとグレーに新色が加わり、ホイールも空力特性を改善させている。

ボンネットは、形状を改め気流を調整。フロントに加えてリアもダブルガラスになり、車内の静寂性も良くなったという。

高級感が増した車内 ウインカーレバーは消滅

インテリアも新しくなった。高級感が増したうえに、素材を見直すことでロードノイズを小さくしている。とはいえ、その変化度は限定的ではある。

シンプルなダッシュボードは、グレーのファブリックやカラーの違う化粧トリムを組み合わせることで、カスタマイズが可能になった。カップホルダーには蓋が付き、アンビエントライトがドアパネルからダッシュボードへ続いている。


テスラ・モデル3(欧州仕様)

存在感を放つ15.4インチのタッチモニターは、フレームが僅かに細くなっている。オーディオは、上級のロングレンジの場合、スピーカーの数が14本から17本へ増やされた。アンプも一新され、音質が磨かれている。

音声操作システム用にマイクが追加されており、電話での会話も滑らかに。車載WiFiの性能もアップし、自宅のルーターへ接続した状態でのソフトウエア・アップデートが、高速で処理されるようになった。

運転の操作系にも手が加えられている。特に、ステアリングコラムから一般的なウインカーレバーが省かれた点は大きい。

ステアリングホイールが3スポークの新デザインとなり、スポーク上にライトとウインカー、ワイパー、クルーズコントロールの操作スイッチが配されている。イメージするより機能的だが、レバーの方が扱いやすいと感じたのは、筆者だけだろうか。

エネルギー効率は向上 標準で航続553km

リアシート側には、センターコンソールの後端部分に、8.0インチのタッチモニターが追加された。エアコンの送風口も備わり、個別に温度を調整できるほか、ビデオ鑑賞なども楽しめる。

ドアの構造も強化され、側面衝突時の安全性が高められたという。実際ドアを閉めてみると、これまでより重厚感のある音が鳴る。


テスラ・モデル3(欧州仕様)

インテリアの洗練性や高級感は、モデル3の弱点の1つといえた。フェイスリフトに伴い、全般的にレベルが上ったことは間違いない。BMW i4に並んだとはいえないけれど。

他方、電動パワートレインは従来どおり。急速充電能力も変わらず、スタンダードレンジで最大170kWまで、ロングレンジで250kWまで対応する。

ボディへ変更を受けたことで、Cd値0.219と空気抵抗が小さくなり、走行時のエネルギー効率は向上。航続距離も伸びたとうたわれ、18インチ・ホイールのスタンダードレンジで最長553km走れる。従来は、490kmだった。

ツインモーターのロングレンジでは、これまでの634kmから677kmへ改善。19インチホイールを履くと627kmへ短くなる。テスラは以前からエネルギー効率に長けていたが、一層ランニングコストを抑えられるようになった。

駆動用モーターの最高出力は、シングルモーター版で248ps。ツインモーターのロングレンジで356psとなる。0-100km/h加速は前者が6.1秒、後者が4.4秒でこなす。

価格も魅力的 競争力は一層強化された 

ちなみに今回の変更に伴い、18インチ・タイヤを履くモデル3の最高速度が199km/hへ僅かに下げられている。高性能なパフォーマンス仕様も、追って登場する見込みだ。

タイヤも、ロードノイズを小さくし乗り心地を意識した、新アイテムに更新された。ブッシュとフロント・サスペンションも改良されたが、全般的に乗り心地は硬めなことに変わりない。それでも、隆起部分などで生じる衝撃の角は、丸められた印象だった。


テスラ・モデル3(欧州仕様)

英国価格は未定だが、現状を踏まえると、通常のシングルモーター版で4万4000ポンド(約796万円)程度が予想される。これは、ヒョンデ・アイオニック6を下回る、魅力的な設定といえるだろう。

質感を高めたインテリアや、向上したエネルギー効率など、モデル3の競争力は一層強化されたといっていい。もう一方の人気車種、モデルYにも同様のフェイスリフトが待っていると考えても、不思議ではない。

テスラ・モデル3(欧州仕様)のスペック

英国価格:約4万4000ポンド(約796万円/予想)
全長:4720mm
全幅:1933mm
全高:1441mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:6.1秒
航続距離:553km
電費:7.5km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1765kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:57.5kWh
最高出力:248ps
最大トルク:41.1kg-m
ギアボックス:シングルスピード(後輪駆動)