2023年上半期「売れた商品トップ30」中国・四国版

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(写真:kazukiatuko/PIXTA)

2023年上半期「売れた商品ランキング」全国版、関東版、近畿版、中部版、北海道・東北版、九州版に続いて、最後に中国・四国版のランキングを紹介する。全国のスーパー、コンビニ、ドラッグストアなど、約6000店舗の販売動向を追っている「インテージSRI+」のデータを基に作成した。

ここでは、鳥取、島根、岡山、広島、山口の中国に徳島、香川、愛媛、高知の四国を加えた9県を「中国・四国」とした。全国との違いを確認するため、「全国差」として中国・四国版の値から全国版の値を差し引いた値も出している。

中国・四国で「売り上げが伸びた」商品の顔ぶれ

売り上げが伸びた商品ランキング1位の検査薬が前年比251.2%(全国差+12.8ポイント)、2019年比445.6%(全国差+56.5ポイント)と大きく伸長。一部の県でコロナの感染拡大による医療逼迫の宣言が出されるなど、抗原検査キットで感染有無を確認する需要が高まったためだろう。

一方、3位の口紅や10位のほほべに(チーク)の前年比・2019年比は全国と比べて伸び悩んだ。人口の密集する都市部と比べて人に会う機会も限られ、需要の回復が鈍かったものと推察される。

強心剤やビタミンB1剤など全国版ではインバウンド需要で伸長した商品が、中国・四国版のランキングに見られなかった。中国・四国の前年比で、強心剤95.1%(全国差−81.0ポイント)、ビタミンB1剤102.5%(全国差−49.3ポイント)とほぼ横ばいだ。インバウンド需要が限られる地域であることがうかがえる。

12位の煮干しは、前年比120.7%(全国差16.2ポイント)と大きく伸長した。ただし、2019年比では81.5%と落ち込んでおり、とりわけ2022年に落ち込みが大きかったことから、前年に減少した反動もあり今年の前年比が伸びたものと見られる。

2022年に減少が目立ったのが、地域で有名な伊吹島産のいりこ。漁獲量が減少傾向にあったが、その傾向が2022年に顕著だったようだ。2023年の販売金額の伸びには、値上げの影響が見て取れた。背景として、不漁による品薄に加えて燃料費の高騰も挙げられる。

また、6位の液体だしは他の地域では北海道産の昆布だしに牽引され伸長していたが、中国・四国では2019年比105.1%(全国差−60.2ポイント)と伸び悩んだ。煮干し文化の強い地域性から、昆布だしが定着しにくかったのだろうか。

中国・四国で「売り上げが落ちた」商品の顔ぶれ

続いて、販売金額が落ちたもののランキングを確認したい。

3位のしわ取り剤は、前年比が77.7%(全国差−5.1ポイント)と全国よりも大きく落ち込んだ。ただし、2019年比では104.6%(全国差+32.4ポイント)とコロナ禍に市場が成長していることが見て取れる。市場成長の起爆剤となったのが、2021年春に発売されたスプレータイプの新商品。しわ取りだけではなくウイルス除去の効果などもあると訴求したもので、中国・四国で特に販売が伸びたようだ。

そのほか2019年比で全国よりも伸びが目立ったのが、5位のオートミール1986.7%(全国差+844.2ポイント)と26位のダイエット食品131.7%(全国差+39.4ポイント)だ。

オートミールにいたっては、2019年と比べて20倍近くにまで市場が成長しており、驚異的な伸びと言える。オートミールは、食物繊維が豊富で健康・ダイエットへの効果が期待されるだけではなく、電子レンジで温めるだけで主食の代わりに食べられる簡便さも人気となった。関東版ランキングで紹介したとおり、成長前の市場が関東中心であったため、中国・四国で伸びる余地が大きかったのだろう。

ダイエット食品でコロナ前に人気だったのは、インバウンド需要に支えられていたサプリメントタイプ。市場は関東や近畿が中心だった。コロナ禍にインバウンド需要が縮小する中で伸びが見られたのが、プロテインやコーヒーなど食生活に取り入れるタイプのダイエット食品だ。コロナ前にインバウンド需要関連のダイエット食品の市場が限られていたため、中国・四国では市場が伸長しやすかったものと見られる。



(木地 利光 : 市場アナリスト)