上汽VWはドイツ本国で開発されたEVを現地生産しているが、販売実績は思うように伸びていない(写真は同社ウェブサイトより)

ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)と中国の国有自動車最大手、上海汽車集団(上汽集団)の合弁会社である上汽VWが、独自のプラグインハイブリッド車(PHV)の開発に乗り出すことがわかった。7月21日、同社の関係者が財新記者の取材に対して明らかにした。

この決定は、外資系合弁メーカーの老舗である上汽VWが、中国自動車市場の構造変化に対応すべく本格的に動き始めたことを意味する。なお同社は、独自開発するPHVの詳細や発売時期などは公表していない。

1984年に合弁契約に調印した上汽VWは、中国の自動車業界で最も早く発足した外資系合弁メーカーの1社だ。外資系合弁メーカーの間では、外資側が本国で開発した既存車種に仕様変更を施し、中国で現地生産して販売するというビジネスモデルが長年維持されてきた。

外資系合弁メーカーの凋落

ところが近年、中国市場で「新エネルギー車」の販売が急拡大するなか、外資系合弁メーカーの多くが市場の変化に迅速に対応できず、凋落ぶりがあらわになっている。

(訳注:新エネルギー車は中国独自の定義で、電気自動車[EV]、燃料電池車[FCV]、PHVの3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)

業界団体のデータによれば、2023年6月に中国市場で販売された乗用車の新車のうち、新エネルギー車が占める比率は35.1%に達した。だが、同月の主要合弁メーカーの販売台数に占める新エネルギー車の比率は、わずか3.7%だった。

2022年までの中国市場では、上汽VW、一汽VW(中国第一汽車集団とVWの合弁会社)、上汽GM(上海汽車集団とアメリカのゼネラル・モーターズの合弁会社)などの外資系合弁メーカーが、メーカー別の販売台数ランキングで常に上位を争っていた。


BYDは価格性能比の高さを売り物に、販売台数を急増させている。写真は同社のベストセラーPHV「秦PLUS DM-i」(同社ウェブサイトより)

ところが2023年に入ると、中国のEV最大手の比亜迪(BYD)が急速に順位を上げ、ついに首位の座を奪取した。

VWにとって、中国はドイツ本国を上回る世界最大の市場だ。それだけに、合弁会社の競争力回復に向けたプレッシャーは大きい。上汽VWによるPHVの独自開発は、新エネルギー車分野での出遅れを挽回するための戦略の一環と見られている。

PHVの利便性を消費者が支持

PHVは搭載する電池の量が(EVに比べて)少なく、車両の販売価格を抑えられる。さらに、充電設備がなくてもガソリンを給油すれば走行できるため、電池切れの心配がない。その利便性の高さが中国の消費者に支持され、PHVの販売台数の伸び率はEVを上回っている。

中国汽車工業協会のデータによれば、2023年上半期(1〜6月)のEVの販売台数は前年同期比32%増の271万9000台だった。これに対し、PHVの販売台数は102万5000台と、前年同期比91%も増加した。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は7月22日

(財新 Biz&Tech)