本記事では「首を長くして待つ」の詳しい意味や正しい使い方と例文、由来や具体例を紹介。目上の人に使えるのかや類語、対義語、英語表現もまとめました。

慣用句「首を長くして待つ」の意味や語源、具体例などを紹介します

「首を長くして待つ」の意味や語源、読み方とは

早速、「首を長くして待つ」という言葉の意味や語源などについて見ていきましょう。

○「首を長くして待つ」の意味とは

「首を長くして待つ」とは、期待が実現することを待ち焦がれている、という意味の慣用句です。

「期待して」という部分から分かるように、本人にとって良いことや望ましい結果を待っている、という意味になります。

肯定的な表現なので、例えば「まったくできなかった数学の試験の結果を、首を長くして待っている」などという使い方はそぐわないでしょう。

久しぶりに親友に会える日を楽しみにしている、彼女からの手紙を待つなど、本人にとってうれしい事柄に対して使う言い回しです。

○「首を長くして待つ」の語源・由来

「首を長くして待つ」の語源は、待っている人の様子から来ているといわれています。

待ち人が現れるのを期待しながら待っているとき、その人が来るはずの方角を、つい何度も見てしまうでしょう。そのときに、首を懸命に伸ばしたり背伸びしたりして、遠くにいる人を見つけようとする様子が、「首を長くして待つ」の語源とされています。

○「首を長くして待つ」の読み方

「首を長くして待つ」の読み方は、「くびをながくしてまつ」で、常用外の漢字や特殊な読み方は含まれていません。

なお「くび」と読む漢字には、ほかに「頸」があり、これも「くび」という意味です。「首を長くして待つ」と同じ意味の四字熟語である「延頸鶴望」という言葉にも使われています。

「延頸鶴望」は「えんけいかくぼう」と読み、首を鶴のように伸ばして相手を待ち望む様子を表す言葉です。出典は『三国志』の蜀志・張飛伝と言われています。

「首を長くして待つ」の正しい使い方・例文



首を長くして待つ」は、自分や第三者が何かを期待して、楽しみに待っている様子を表現する際に使う言葉です。

以下で、例文と共に具体的な使い方を見ていきましょう。

三カ月ぶりに会うことができるため、僕は彼女を首を長くして待っていた。

「首を長くして」とは、待ち人を見つけるために、遠くを見ようとしている様子から来ているとされています。そのため、「人が来るのを、今か今かと待っている」というシチュエーションは、「首を長くして待つ」を使用するのに最も適した状況といえます。

この例文のように、久しぶりに会う恋人や友人に対して使うと、その人への思いを表現できるでしょう。

発表会の準備を万端に整えて、彼は当日を首を長くして待っていた。

「首を長くして待つ」という表現の対象は、人間だけに限定されているというわけではありません。そのため、楽しみにしている予定や、休日などに使用してもいいでしょう。

この場合の「首を長くする」は、待ち人を探すように、その日が来るのを今か今かと待ちわびている、という意味で使われます。

「首を長くして待つ」は、その人の様子を表す言葉のため、心の底から楽しみにしていることであれば、人や物など、何が対象でも利用できます。

プレゼンの感触がかなり良かったので、彼はクライアントからの結果連絡を首を長くして待っていた。

「首を長くして待つ」は、吉報、良い知らせを待つ様子に対しても使用可能です。

この例文では、「連絡」の内容が良いものとは確定していないものの、良い結果になるのではないかと期待して待ちわびている様子が表現されています。

「首を長くして待つ」は、特に目上の人に使用すると失礼になる可能性も

「首を長くして待つ」は基本的にポジティブな表現として使われる言葉ですが、待ちきれない様子を表すため、使う相手やタイミング次第では、急かされていると解釈される可能性もあります。使用する際にはある程度の配慮が必要です。

ご連絡を頂けるのを、首を長くしてお待ちしております。

例えば、上記の例文には敬語が使われているので、取引先の人など目上の人に対して送付したメールだと推測できます。

相手と自分の立場をおもんぱかり、丁寧な表現を使ったメールですが、捉え方次第では「早く連絡してほしい」という意図に捉えられてしまう可能性があります。

そのため、特に目上の人の場合は「ご連絡をお待ちしております」など、無難な表現を使用した方がいいでしょう。

恋愛で使う「首を長くして待つ」の具体例とは



相手を待ち焦がれたり、期待に胸を膨らませる思いを抱いたりする代表的な状況は、恋愛ですね。

「首を長くして待つ」は、待っている側の期待の高まりを感じさせる表現のため、恋愛にまつわる文章との相性は抜群です。

恋愛シーンで「首を長くして待つ」状況と言えば、例えば以下のようなものが考えられるでしょう。

彼女の到着を、待ち合わせ場所で首を長くして待っていた。

私の友人は、留学に行った彼氏の帰国を首を長くして待っている。

僕は彼女からの返信を、首を長くして待っている。

久しぶりに恋人に会える日を、首を長くして待っている。

「首を長くして待つ」の類語・言い換え表現



誰かと会うことや、特定の日付やイベントが来るタイミングについて待ち焦がれているという様子を表す表現には、さまざまなものがあります。

この章では「首を長くして待つ」という言葉の類語、言い換え表現を紹介します。

○心待ちにする

「心待ちにする」は、心の中で待ち望むことを意味する言葉です。「首を長くして待つ」も「心待ちにする」も、現在はまだだが、時が来れば実現する事柄への期待を表現できる言葉です。

またのご来店を心待ちにしております。

この例文のように、「心待ちにする」はビジネスや公的な場での発言に使用しても違和感がありません。

○切望する

「切望する」は、心から強く希望すること、願うことを意味します。

彼は、その著名な作家に会う機会を切望していた。

「切望する」は上記のように使用しますが、「首を長くして待つ」が「期待して待つこと」であるのに対して「切望する」には願うニュアンスがあるため、その機会があるのかは比較的不確かだという印象があります。

○待望する

「待望する」は、文字通り「物事の実現を『待ち望む』」という意味の言葉です。

その映画は、早くも続編が待望されている。

上記の例文のように、多くの人が期待しているという意味を持たせられます。ただし、「待望する」という言葉は確定した予定や約束というよりも、多くの方がそうなることを望んでいるということを表します。そのため、あくまで実現の可能性があるという程度の表現だということには気を付けましょう。

○一日千秋の思いで待つ

「一日千秋」は、待ち遠しさのあまり一日が千年、つまりあまりにも長い期間のように感じてしまう、という意味の四字熟語です。「いちにちせんしゅう」「いちじつせんしゅう」と読みます。

彼がアメリカから帰国する日を、一日千秋の思いで待っていた。

この例文では、パートナーと離れ離れになりながら、再会できる日を待ち焦がれている人の姿が想像されます。

未来への期待と待つ時間のもどかしさを含め、「首を長くして待つ」の類義語と言えるでしょう。

○手ぐすね引いて待つ

「手ぐすね引いて待つ」は、「手薬練引いて待つ」とも書きます。

元々は、弓を引く際に、弓手に滑り止めとして薬を塗ることを指す言葉で、そこから転じて準備を整えて待ち構えることを表すようになりました。

以下は例文です。

母は弟の帰宅を手ぐすね引いて待っている。

ただ相手を待っている「首を長くして待つ」という言葉よりも、相手を迎え入れる準備を整えているということで、用意周到さが強調できるでしょう。

○待ち焦がれる

「待ち焦がれる」とは、今か今かと切に望んで、一心に待っている様子を表します。

「焦がれる」は、望みをかなえたいという気持ちが強まり、居ても立ってもいられない、我慢できない気持ちになること、などの意味を持ちます。

彼女は、彼からの連絡を待ち焦がれていた。

例文のように、待ち望んでいるものを早く早くと思いながら待っている気持ちを表現する言葉です。

肯定的な事象を待ち望んで待ちきれない気持ちを表している点で、「首を長くして待つ」の類義語にふさわしいと言えます。

○待ち遠しい

「待ち遠しい」とは、何かを待つ時間が長く感じられ、早く訪れてほしいと思っている様子を表す言葉です。

弟は、いつか大学生になって上京する日を待ち遠しく感じているようだった。

例文のように、実現するかもしれない事柄を、早く早くと願っている様子を表します。

逆に、「待ち遠しい」という言葉には、「すぐには達成されない」「まだ実現していない」というニュアンスも含まれているため、達成までの時間を想起させる言葉でもあります。

「首を長くして待つ」の対義語



この章では、「首を長くして待つ」の対義語について紹介します。

○失望する

「失望」には、期待が外れてがっかりすること、それにより将来に対する希望を失うこと、という意味があります。

いくら待っても作品が完成しないので、編集部は彼にすっかり失望していた。

例文のように、期待していた何かが実現しないと分かり、将来的な望みを失っている状況を表します。

「首を長くして待つ」が、実現しそうな何かを期待して待ちきれない気持ちを表すのに対し、将来的な望みを失うという意味で「失望する」は対義語であると言えるでしょう。

○落胆する

「落胆する」とは、望みがかなわず、がっかりして気力を失うこと、という意味です。

「胆」という字には精神力や気力、勇気が湧くところなどの意味があります。

昇進する望みを絶たれ、彼はすっかり落胆していた。

例文のように、期待が外れたことで気持ちが落ち込んでいるという様子を表す際に使われます。

「首を長くして待つ」の、将来的な期待に焦がれている点と反対の意味合いが強いと言えます。

○期待せずに待つ

「首を長くして待つ」という言葉には、将来への期待のニュアンスがあるため、「期待しないで待つ」という言葉も、対義語になり得ます。

「期待しない」と言うと冷たい言い方にも感じますが、相手への重圧をやわらげ、緊張や圧迫を避けるためにも使われる言葉です。

期待せずに待っているので、気楽に、自由に取り組んでください。

例文のように、重圧感を和らげる意図で使われることが多いと言えるでしょう。

ただし、文字通り否定的な側面もあるため、ビジネスシーンでは誤解を招かないように、使用する際には最大限の配慮を持つことが重要です。

「首を長くして待つ」の英語表現



この章では「首を長くして待つ」の英語表現を紹介します。

○really look forward to〜

「really」は「本当に、実際に」、「look forward to」は「楽しみに待っている」という意味を表します。合わせると「本当に心待ちにしています」となります。

以下のように使用します。

I'm really looking forward to seeing her.

(私は彼女と会うのを首を長くして待っています)

○eagerly look forward to〜

「eagerly」は「しきりに、熱望して」という意味です。「look forward to」と合わせて、心から望んでいるということを表現できます。

以下のように使用します。

He is eagerly looking forward to playing the new game.

(彼はその新しいゲームで遊ぶことを首を長くして待っている)

○wait for 〜 eagerly

「wait for 〜」で「〜を待つ」という意味であり、前述のeagerlyを添えて、「切に待っている」の意味となります。

以下のように使用します。

I'll wait for you eagerly.

(あなたを首を長くして待っています)

○日常生活やビジネスシーンで「首を長くして待つ」を適切に活用しよう

「首を長くして待つ」は、期待して待っている気持ちを表す言葉で、日常生活からビジネスシーンまで、さまざまな状況で利用できる言葉です。

ただし、相手次第では急かされていると思ってしまうこともあるため、相手がどのように感じるかを考えながら、慎重に使用することが求められます。

言い換え表現も多数存在するため、シーンごとに最適な伝え方をするよう意識しましょう。