肝臓が出す「7つのSOSサイン」とは…(写真:Eddows/PIXTA)

「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓。しかし、ひたすら沈黙している訳ではなく、ダメージがあれば肝臓なりの「SOS」を私達に伝えています。ただし皮膚や足など意外なところに出る症状も多いため肝臓が原因と気づかないことも。
症状が強くなってから病院に行くと、残念ながらすでに「肝臓がん」の状態に移行している場合もあります。
登録者数48万人超の人気YouTube「予防医学ch」を運営する現役医師でもある森勇磨氏。このたび『怖いけど面白い予防医学』を上梓した同氏がみなさんに知っておいてほしい「肝臓が教えてくれる7つの危険サイン」を本記事でお伝えします。

肝臓が出す7つの危険サイン

肝臓は多種多様な仕事をしている臓器です。アルコールをはじめとした体に不要な「毒素」を分解したり、胆汁を生成したりする「工場」としての役割があります。私たちが酒を大量に摂取したり脂っこい食べ物を頻繁に摂取したときなど、肝臓は黙々と仕事をしています。


(イラスト:『怖いけど面白い予防医学』より)

しかし肝臓の機能が落ちると、徐々に不要な老廃物が体に溜まってしまいます。そしてこれらの溜まった物質が、さまざまな症状(サイン)を引き起こすのです。

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これは「アンモニア」によるものです。本来なら肝臓で分解され、尿として体の外に排出されるこの物質は、公衆トイレのツンとしたにおいの元です。

アンモニアがうまく肝臓で分解されなくなると、口からこのアンモニアの悪臭が漂ってくることがあります。ですので、急激なツンとした口臭の変化は要注意です。

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女性ホルモンである「エストロゲン」という物質によって表れる症状です。エストロゲンの分解も肝臓の仕事ですが、不必要な分量が体に溜まると、てのひらが真っ赤に見えてしまうことがあります。これはエストロゲンに血管を広げる作用があるために起こる症状です。

医学用語で「手掌紅斑(しゅしょうこうはん)」というもので、中心以外のてのひらの部分がドーナツ型に赤くなります。つまりてのひらを観察することで、肝臓からの「SOS」を見つけられる場合があるのです。

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肝臓が悪化すると「かゆみ」の症状も引き起こされます。

通常、かゆみをおさえる物質と引き起こす物質がまるでシーソーのように体内でバランスをとっていますが、肝臓病の人はこのバランスが崩れてかゆみを引き起こす物質のほうが多くなってしまうのです。

このとき、蕁麻疹のような皮膚の盛り上がりなどの見た目の異常はなく、ただただかゆくなってしまうことが多いです。

これは「原発性胆汁性肝硬変」と呼ばれる肝臓の病気で、「ビリルビン」という物質が肝臓から胆汁として排泄されず、血液中へと逆流することが原因です。中年の女性に多く見られます。

と乕罎黄色くなる

ビリルビンの血液中への逆流の影響で起きる皮膚の異常がもう1つあります。皮膚が黄色くなってしまう「黄疸」という現象です。

ビリルビンが含まれる胆汁は肝臓で作られ、胆嚢(たんのう)という袋に貯められ、胆管という管を通って、胃の下の十二指腸という管に排出されます。

この通り道(胆管)が塞がれてしまうと起こるのが黄疸です。すい臓のがんや胆管に石が詰まってしまったときにも黄疸は起こりますが、肝臓の状態が悪くなると、この胆汁を排出する流れが肝臓でスムーズに行われなくなるので、胆汁が血液中に逆流し、ビリルビンによるかゆみと黄疸が引き起こされる、という現象が生まれます。

首や腕、胸に出やすい症状

ト乕罎縫モのような模様ができる

「クモ」のような模様が皮膚に表れることもあります。医学用語で「クモ状血管腫」と呼び、これはてのひらが赤くなる現象と同様、エストロゲンが体に溜まって、皮膚の血管を部分的に広げることで起きるサインです。首、腕、胸あたりに出やすいです。

妊婦さんやピルを飲んでいる人に出ることもありますが、もしこのクモのサインを見つけたら、肝臓を心配しましょう。

このように肝臓が悪いときに皮膚でわかるサインは、かなり多くあります。言いかえれば、皮膚は我々が目にしやすいところなので、早めに症状に気づきやすいということ。病院に行って早期治療につなげられる可能性も上がります。

自分の全身を鏡で見るときに、今回紹介した皮膚のサインがないかどうか、ぜひチェックしてほしいと思います。

βのむくみ

足にも肝臓が悪い時のサインが出現することがあります。

「最近靴下がスムーズに入らない」「今まで履けていたズボンが履けない」……これらは要注意の現象です。

肝臓の仕事に、「アルブミン」と呼ばれるタンパク質の生産工場としての役割があります。通常、血液中に浮いたこのアルブミンが血管の小さな穴から水分を引っ張ってくることで、血液の水分バランスを維持しているのですが、肝臓の調子が悪くなるとうまくアルブミンを作れなくなります。

そうなると血管の中に水分を引き留めておくことができず、外にもれていってしまいます。もれていった水分はどこに行くのかといえば、重力にしたがって足のほうに溜まり、「むくみ」の症状を呈します。

Г腹まわり、体重の増加

足だけではなく、お腹にもこの水分が溜まってしまうことがあります。この水は医学用語で「腹水」と呼ぶものです。当然この腹水が溜まったぶん、体重も増加します。何も知らないと太ってきたと勘違いしやすいサインです。

腹水と脂肪の見分け方は見た目だけでは非常に難しいのですが、「なんだかお腹がたぷたぷしてきた」と感じる場合は脂肪以外の可能性もある、ということは知っておくとよいでしょう。

肝臓は何故痛むのか

このような肝臓からの悲鳴は、ぜひ知っておいてほしいです。さらに理想をいえば、このような症状が出てしまう前段階で肝臓を守りたいところです。

そもそも、なぜ人間の肝臓はこのように痛んでしまうのでしょうか? 肝臓の仕組みと一緒に学んでおきましょう。

肝臓のメインの仕事は、なんと言っても「エネルギーの工場」です。肝臓に貯められるエネルギーは大きく2種類に分けられます。

1つは「グリコーゲン」。グリコーゲンは寝ているときや激しい運動でエネルギーが足りていないときなど、比較的すぐに使うためにストックしておくエネルギーです。

もう1つは「中性脂肪」。中性脂肪はグリコーゲンとは違い、食事が摂れなくなったり、飢えの状態になってしまったときにに使うものです。長い目で見て起こりうる危機に備えるため、脂肪を貯めておくように人間の遺伝子にプログラムされています。

現代ではほぼ飢餓になることがないので、不要といえば不要なはたらきかもしれません。とはいえ、何が起こるかわかりませんし、人間の遺伝子にプログラムされているため、私たちが変えられることではありません。

しかしグリコーゲンに割り当てられた貯蔵庫のスペースは、長く貯めておくものではないためそれほど広くありません。そのため余分なエネルギーはどんどん中性脂肪となって、肝臓に貯められてしまいます。

この中性脂肪がコツコツコツコツ蓄積されて、肝臓の細胞の30%以上溜まった状態=フォアグラ状態が、いわゆる「脂肪肝」です。


(イラスト:『怖いけど面白い予防医学』より)

肝臓に脂肪が溜まること、一見するとこれは地震などの災害に備えて非常食や飲み物を備えておくように、よい側面だけ切り取れば人間の体の中でも不測の事態に備えた、大変まっとうな機能のように思えます。

しかし、災害時の非常食と違い、「脂肪肝」には大きなデメリットが存在します。それは放置しておくとボヤのような「炎症」が引き起こされることです。この炎症を医学用語で「脂肪肝炎」と呼びます。


(イラスト:『怖いけど面白い予防医学』より)

脂肪肝は肝臓の「ボヤ騒ぎ」


残念ながら、この炎症段階ではとくに知覚できる症状は起きません。そして炎症が肝臓の上で何度も引き起こされると、マルチタスクをこなしてくれていた有能な肝臓の細胞が死滅し、最終的に何度もかきむしった後、硬化した皮膚のような状態になり、肝細胞としての機能を失ってしまいます。これを肝臓の「線維化」と呼びます。

この線維化が進んだ状態が「肝硬変」です。さらに進行すると「肝臓がん」の状態になり、前半で説明した危険な症状が引き起こされるようになります。

つまり脂肪肝の段階のうちに肝臓の「ボヤ騒ぎ」を食い止めてあげることが最も重要となります。

実は、脂肪肝の改善には「減量」が第一です。例えば、自分の体重の10%の減量によって、ほぼすべての脂肪肝、線維化が改善したという論文があります。人間ドックなどで「脂肪肝」と指摘された方は、まずこの「10%ダイエット」を実施するとよいでしょう。

(森 勇磨 : 産業医・内科医/ Preventive Room代表)